毟った。そう、ただそれが言いたいだけ。
フルプレートアーマーを全損し、ほぼ全裸になったので同じアーマーを取り出して装備した。
いくら防御力が高かろうと装備品まで耐久力が上がるわけではないことがこれでわかった。
本当に楽しい世界だ。
体力を確認するためにほぼ全力で走っているのだが、疲れる事がない。
……楽しい。
運動を楽しいと感じたことなど、この世界に来るまでなかった。
気温的には暑いので汗でヘルムの中はビショビショだが。
「予定より早く着いたな……」
独り言をつぶやく。
時々発声していないと声の出し方を忘れそうだからな。
ゴモムの草とカカカの実を探さなくては。
サーチを使うと要らない情報が沢山でてきてうんざりするので地道に探すか。
実は実だろうから実のようなものがあれば都度確認すればいいだろうが、問題は草だ。
近くを見ただけでそれはもう色んな草が見える。
都合よく誰かが通りかかって、とか魔物に襲われている所を助けて、とか……そんなことは起こらない。これが現実なのだ。
仕方なく一つ草を毟る。
○ サカサ草 ✕ 1
インベントリに入れてみた。
名前が表示される。
適当にガバっと掴んで毟ってインベントリに入れる。
○ サカサ草 ✕ 4
○ キグツの草 ✕ 2
○ メ草 ✕ 2
○ マクナラ草 ✕ 1
○ ケムムン草 ✕ 1
なんかいっぱい取れたが、目当てのものはない。
そして新しいものでインベントリが埋まっていくのが楽しくなってきたぞ!
これはもう……毟るしかないだろ!
―――――――
――――
――
……気が付いたら日が暮れてしまっていた。
馬鹿なのか俺は、と言いたい。
毟りに毟った。一心不乱に毟れるだけ毟った。
直径で大体10mは毟った。モンスターに攻撃されなければまだ毟っていたかもしれない。
ハゲ上がった跡地を前に、なんか申し訳ない気持ちになってくる。
インベントリが埋まっていく様が気持ちを高揚させたのだ。仕方がない。
コレクターの血が騒ぐというのか……まあ、過ぎてしまったものは諦めよう。
日が沈むので今日は街にも入れない。
目的のゴモムの草はすでに要らないほど手に入れた。
カカカの実がまだだからこれからはそれを探して、野宿で一夜を明かしてから帰るか。まだまだ拾えるものは多そうだし。
ヘルムの中でニヤニヤしながら採集作業を再開させた。