冒険者ギルド
冒険者ギルドのくたびれた木の扉が少し強めに開かれる。
荒々しい人も多く在籍する冒険者ギルドではよくある行動のため、気にする人は誰もいない。
足早に入ってきた二人組は依頼の書かれた依頼板へと一目散に向かった。
「無駄に多いな」
「この当たりは国じゃないから地図も少ないし冒険者が多いのね」
一通り目を通した二人は目当ての物が無かったよう、次に受付の立つカウンターへと向かった。
二人は何も言わず、ギルドコインをカウンターへと置いた。
口を開かない方がスムーズに話が進むことを知っているのだ。
「はっ…4級のグレム様とポロネ様ですね。ポテ帝国で受けられた依頼の報告でしょうか」
強い魔物が出現しないグレストルでは7級以上の冒険者が来るのが珍しく、受付の人間族の男は緊張した様子でグレムとポロネに向き直っている。
「それもあるが、重要度が全然違う情報を持ってきた」
「一応、ここの依頼板を見たのだけれど、それらしいものがなかったので確認してほしいの」
ベテラン冒険者の、かなり緊迫した様子に受付の男の顔色が悪くなる。
「高さが俺の体2つ分、巨体で真っ黒、目や口は確認できなかった」
「二本の手らしきものと、4本の足、体毛は無く、光を反射しているように光沢があったわ」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
あまりの早口な二人に受付か焦ったように、手元の紙に書きなぐる。
受付のレベルが他の国のギルドより低くイラつきを隠そうともしないグレムは舌打ちをする。
「み、未確認の魔物、ということでよろしいですか?」
「それ以外に何があるんだ!」
「ちょっとグレムやめましょう」
グレムがカウンターを強く叩いたためにザワついていたギルド内が静まり返る。
グレムを押しやったポロネが前に出た。
「攻撃的ではない、もしくは私達に気づいてなかったかわからないけれど、動きはなかったわ。それにこの辺りの魔物であるプチプチが大量に殺されていた」
「は、はい」
「それがこの街の近くの森で発見。その他の情報は不明。目撃情報を確認して」
「は、はい!」
慌てたように受付の男がギルドの中へと消えていく。
消えていく男の姿を見ながらポロネがため息をついた。
「この平和な空気から察して、あの魔物は未確認で間違いないな」
「ええ、あんなのが街の近くに現れてこんな平和に過ごせるわけがないもの」
「よそからハンターを呼ばないといけないだろうな」
グレムが腕を組みながら嫌そうな顔で受付の男が去っていった方を見た。