鑑定!
「鑑定!」
男の体から大量の魔力を使う時に起きる青い魔力光が発生するほどの力の込められた鑑定魔法が発動された。
ブラックキメラの素材
レア度 ★★★★★▲○◆不明
名称 ブラックキメラの血液
効果 魔力のない魔物から取れる特殊な素材。毒はない。体へ取り込む事で▲○◆不明
空になったMPによる虚脱感に襲われて鑑定士の男は膝を付いてその場に崩れる。MP容量の大きいものほど空になった時の虚脱感は大きいと言われているため、彼のMP容量は大きい事が伺えた。
体を支えようと机に手を出したために机上の束になった紙や筆が床に散らばって激しい音がなる。
レア度すら確認不可。効果も一部のみ。
こんなことは彼が鑑定士になって初めての出来事だった。
「ど、どうしまし……!」
外で控えている鑑定士の補助が部屋の大きな音に慌てて入ってくるが、散乱した部屋と這いつくばった男を見て息を飲んだ。
直ぐに落ち着きを取り戻すと鑑定士に駆け寄り抱え起こす。
「大丈夫ですか!」
「いや、大丈夫ではない。私の負けだ。私は……負けたのだ」
「はい? ……まさか侵入者ですか!?」
補助の男は鑑定士を支えたまま辺りを見渡すが、散乱した部屋というだけでなにもない。
そもそも鑑定士は戦闘力を持たないために侵入者に襲われれば勝ち負けどうこうより生きてはいられない。
「わかったのはこれだけだ。私は疲れた。部屋で休む。どうするかの判断は国へ投げてくれ」
呆けている補助へ確認できた詳細の書かれた紙と現物を手渡すと部屋を片付けもせずに出ていった。
「…………あ、はい」
誰もいない部屋に返事をして補助の男は渡された素材と鑑定用紙を置くと部屋を片付け始めた。