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回復薬の効果

「……特に変化はないな」


「うー……うー……」



包帯で体中を巻かれた重症の兵士に回復薬を吹きかけたが、目に見える変化はなかった。


焼かれた跡や深い切り傷で苦しそうに声を上げるばかりだ。



「軽微な傷にのみ効くと書かれてますので……」


「それはわかっているが、一応だ」



モルキオートは傷を負ったものの比較的軽症の者がいる部屋へと足を踏み入れた。


扉に近い兵士へ問答無用で吹きかけた。


左腕を失っている以外は怪我の無い兵士だ。



「あ、あの?」



突然液体を吹きかけられた兵士は戸惑ったように声を上げる。


モルキオートは無表情で答える。



「何か変わったことは?」


「変わった……こと?」



兵士は真っ先に失った左腕を確認するが、特に変化はない。


足を動かしたり残る右手を握ったり開いたりしている。



「そう、ですね。なんといいますか、多少動きやすくなった気がします」


「それだけか?」


「はい……あ、なんか小手でれた手首の傷が無くなってる気がします。あれ、最初からなかったっけ?」


「……なるほど」



右手の手首を見ながらそういった。


モルキオートは回復薬をしばらく眺めると、突然左腕を失った兵士に何度も吹きかけ始める。



「ちょ! なにを……!」


「どうだ?」


「どうって……え? あ、痛みが、無くなりました」


「どこの痛みだ」


「この、左腕です」


「見せてみろ!」



まだ痛々しい包帯を巻かれた左腕を荒々しく掴んだかと思うと、包帯を乱暴に外す。


衛生兵だろう清潔そうな白い服装の女が急いで入ってきた。



「ちょ、ちょっとまだこの方は治療中で……!」



腕の断面の傷がしっかりとではないが確実に塞がっている。


出血もしていない。



「これは……すごいぞ。教会のクソ共が逃げてヒーラーがいなくなったが、なんとかなる。おい! 確か広範囲に影響があると書いてあったな!?」


「は、はい!」


「よし、怪我人をできるだけ一箇所に集めろ! ……なにしてる急げ!!」



モルキオートの声で近くにいた動ける兵士が一斉に動き出した。


戦闘に参加できないまでも、足が動けば自分で移動ができるし痛みが無くなれば荷物運びのサポーターとして動かせる。


彼ら怪我人は何もできない食糧と医療品を消費するだけの存在だったのだから、劇的に変化する。


モルキオートの頭の中でわずかに希望が芽生えた。

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