七十五服目 Play Back(21)
メイサ・ヤガミ。
親父とクロードさんが俺のそばからいなくなる前に解説してくれた、残った選手の中でも、特に強敵だと思われる者達の中に、その子は……今、俺と相対している子はいた。
犯罪者になってしまった格闘家ボギー・ホーガン。
ブラジリアン柔術の原型となる柔道を伝えた日本人武術家以外に、南米に渡り、日本の武術……おそらくはブラジリアン柔術の原型の柔道とは異なる武術を伝えた日本人の弟子と思われる格闘家の、弟子である少女が。
名前を聞く限り、彼女は……まだこの世界の常識を細かく理解できていないけど……日系、という人達の一人かもしれない。
なぜその子が、犯罪者の弟子となったのか。
そしてどうして、この狂った格闘技大会に出場しているのか。
同じく東洋人の血を引く者として、どうしても気になってしまう。
彼女が激高した事で、言い方が悪かったかもしれないとは思ったけど、それでも俺は彼女を、親父から教わった合気の技を以てして寝転がし……再び声をかけた。
「ゴメン。でもどうしても俺は……君達を知りたいんだ」
そして、誤解がないように。
俺の今の気持ちを素直に告げた。
「もしも可能であるならば、君と……君の師匠を救いたいんだ」
※
いったい何が起こったのか。
相手に突っ込んだと思ったら、いつの間にやら天井部分の金網を見ていた。投げられたのか。でも頭に痛みはない。まさか手加減された? フザけるな。師を侮辱した上で私まで侮辱する気か。
私の中で、さらなる怒りが湧き上がる。
「ゴメン。でもどうしても俺は……君達を知りたいんだ」
「もしも可能であるならば、君と……君の師匠を救いたいんだ」
だけど、その声を聞き。
そしてその声の主の、真剣な眼差しを見て……怒りが少し萎んだ。それだけ相手の眼差しは覚悟した者のそれだった。
分からない。
私には相手が何を考えているのか分からない。
侮辱したと思ったら、救いたいだって……?
ナメているのか。
私の過去を知りもしないで。
私がどんな地獄を生きてきたかを知らないで。
どんな覚悟をしてこの場に立っているかを知りもしないで!!
「……ざ、けるな……こ、の……偽善者ッッッッ!!!!!!!!!!」
そして、すぐに立ち上がって攻撃をするも。
またしても私の認識する天地はひっくり返り。
私は天井部分の金網を見る羽目になった。




