五十四服目 怪氣学園S(30)
「…………み、さ……?」
「い、いったい……どういう事なんだ?」
助け出すハズだった同級生の、予想外の再登場により……璃奈と霧彦の頭の中はさらなる混乱を極めた。
美彩は味方だったハズだ。
探偵部、などいう非公式の部活の結成を進言するくらいだ。校内にばら撒かれていた不完全なる煙草の存在を、許していなかったハズだ。
にも拘わらず、なぜその彼女が……校内の売人を一掃する側である璃奈達と相対するように登場したのか。
「ゴメンね? でも……二人と出会った時から、こうしたいなぁって思ってたの」
だが、混乱する璃奈達とは反対に、美彩は清々しいくらいの笑みを見せながら、二人に告げる。
「二人は……たぶん覚えていないかもしれないけど。私達、小さい頃に会ってるんだよ? それも……アメリカで」
二人にとっては、寝耳に水な事実を。
「あ、アメリカ?」
「み、美彩……お前、ホント、何言ってんだ?」
しかし、味方だと思っていた相手が敵として登場した時点で混乱の極みに達していた二人には、その言葉をすぐに、深く理解する事はできなかった。
「フフフッ♪ だいじょぉぶだよ、二人共♡」
しかし美彩は、理解が追い付かない二人に対して幻滅したりするどころか、教え甲斐があると言いたげに笑みを作り――。
「私が、ちゃぁんと……思い出させてあげるから♡」
――懐から出した不完全なる煙草の煙を吸い込み……その煙を二人に浴びせた。
※
「証人、保護プログラム」
須藤に抱えられつつ、カノアは彼に問うた。
「番長、殿は……それを、知っておるかのォ……?」
「だから喋んなって! ……いや、聞いた事すらねぇよ」
無理をするカノアを怒鳴り付ける須藤。だが問われた以上は答えなきゃいけないだろうと思い、すぐに言葉を返した。
「ア、メリカの……制度で……犯罪者を……有罪にする、証言と……引き換えに、新たな、身分を貰い……他所の、土地で暮らす……それを、保証する制度……迂闊じゃった……。白ギャル二号……ミ、サとは……アメリカで、出会っておったのに……かつて、ぶちのめした事が……あるのに……その、制度を使って……名前や、顔を、ちょっと……変えられ、ただけで……すぐに、思い出せんかった……いや、違う。同一、人物だと……認めたく、なかったのじゃ」
かつて、彼女に対し既視感を覚えたハズだ。
体育館倉庫に閉じ込められ、共にドアを蹴破ろうとしたその時に。
なのにカノアは、それは勘違いであると自分を騙し続け。
その結果、こうして敗北し、さらには璃奈達が危機に晒されている。
煙術師として、最もしてはいけない致命的なミス――相手を疑う事を、まったくしなかったせいで、カノアはさらなる危機を呼び込んでしまったのだ。
「…………あの女との間に、何があったんだよ?」
美彩とは、特に仲が良いワケではない須藤は、彼女をあの女呼ばわりしながら、カノアに問うた。さすがにもう、ここまで聞いてしまえば、全貌が気になるというのもあるが……それ以上に、カノアが、今こそ誰かに知ってほしいと。話す事で、懺悔したいと思っているのではないかと思ったからだ。
「…………ミサ、は……いい、や、違う……彼女の、本名は……メイサ・ヤガミ。日系の、メキシコ人……。そして、ワシが……煙術師の、弟子になる前……祖父に騙され、とある麻薬組織の……開催、する……地下、闘技場の……大会に、出た、際に出会った、麻薬、組織の……ボスの、ボディーガード候補……じゃった……」
メキシコは、貧富の差が激しい国の一つである。
そのワケの一つは、国内に根差す、世界的に大変有名な一大宗教の教義により、避妊や堕胎を一切行わない事だったりするのだが、とにかくそれを始めとする要因により人口が増加した影響で、貧富の差が激しい。中には成功者も、いるのはいるのだが……だからと言って国内全域を救えるワケではない。
そして貧しい家の子は、国内外問わず、時に犯罪組織に勧誘される。
金銭をチラつかせれば、富裕層へのコンプレックスを持った子供を容易く仲間に引き込めるのだ。美彩も、そんな子供の一人だったのだろうか。そうでなければ、親が犯罪組織と繋がっているのか。
「地下闘技場? 総合格闘技の試合みたいなモンか?」
「いい、や……違う。アレは、格闘技の……大会では……ない……」
激痛だけでなく、大会に対しても忌々しく思い……カノアは顔を歪めた。
「無手……武器……あらゆる、手段で……如何に、勝利する、か……それを、問われる大会で……優、勝者は、組織の、ボスの……ボディー、ガードに……なれる、らしい。しか、も……賭け、事にも、利用して……いて、さらに……飛び入りOKの、健全で……非公式な、大会として、アメリカで……表向きは運営しておった」
次回から過去篇!!




