四十七服目 怪氣学園S(23)
小さい頃、TVに映る、変身して戦うヒロインに憧れていた。
可愛い見た目の、異世界からやってきた存在と契約をして、変身アイテムを手に入れて、可愛い服を身に纏って……自分が大切に思う世界を、侵略したり壊そうとしたりする、同じく異世界からやってきた悪者と戦うヒロインに。
時には親友と喧嘩したり。
またある時は大切なモノを失う事もあるけれど。
中盤と、最終決戦前、さらに言えば劇場版で強化フォームになって。
そして最終的には、悪者全てを倒すけれど、それと同時に相棒たる存在との別れが待っていたりして……でも、最後の最後には希望があって。
とにかくそんな王道な話に、そしてそのヒロインに……私は憧れていた。
将来は、そんなヒロインみたいに、悪者をカッコ良くやっつけられるような存在になりたい、と思うほどに。だけど成長する内に、私は世界の理不尽さ、そして私自身の能力を知って……失望した。
世界は、私が思っていたよりも単純じゃなくて。
正義とか悪とかで簡単に割り切れず、それぞれにはそれぞれの価値観があって。そのどれもがそれぞれにとっては正しくて。だからこそ戦争が起こって。そして、そんな世界で……私はとても平凡で。無力で。世界なんか、全然変えられなくて。
いつしか、自分は、かつて憧れたヒロインみたいにはなれないんだと気付いて。
そしてそんな話を、ただのフィクションとして楽しむ事にして……そんな時に、私は彼女に出会った。
『おおっ!! 貴様も家が同じ方向なのかのォ!!』
彼女の存在は、とても眩しかった。
世界の理不尽な側面に失望していた私にとっては……まるで太陽みたいで。
『実はのォ、チハル……ワシは、清雲高校に潜んでいる悪者を捕まえに来た、秘密捜査官なのじゃッ』
そして、驚くべき事に……普通だったらフィクションの世界だと思うような世界を駆け回るヒロインで。……いや、私がなりたかった、変身して戦うヒロインとは似ても似つかない世界のヒロインだけど。
そしてどういう因果か。
彼女は私が『言っちゃった』言葉をキッカケに……私を協力者にした。
最初は、私で良いのかと思った。
だけど彼女は……カノアちゃんは良いと言った。
あまり多くの人に知られたくない、というのもあったかもしれない。
先祖の霊を通じて、も、ちょっとはあるかもしれないけれど。
とにかく私という存在を……信用に足る存在だと、どうしてか確信しているように感じた。
そして私は、カノアちゃんに、世界の新たな側面を教えられて……。
最初は怖かったりしたけど……さすがに、主人公のようにはなれないと感じてはいたけど、それでもヒロインを助ける、いわゆる準主役にはなれた事に、ちょっとだけ興奮して。
いつしか自分から、カノアちゃんに意見を言ったりもして……。
※
わた、しは……自分の意、志で踏み込んだ……ハズ、だったのに……。
私は、カノアちゃんを……殺したい、ワケじゃないのに……なんで、なの……? 今は……カノア、ちゃんへの……怒りが……私を、巻き込んだ事への、怒りが……湧いて、湧い、て……しょうがない!!!!
怒り、のままに、包丁を……振るう。カ、ノアちゃん……は、そ、れを……躱す……。でも、躱し……きれて、いない……。交差、する、たびに……傷が、増えてい、く……。この、ままなら……出血、多りょ、うで……。
………………な、にを……考え、てるの……?
わ、たしは……わた、しは……カノア、ちゃんを……恨ん、でなんか……でも、頭の、中……熱……い、かりで……沸騰する……ッ。…………な、んで……なんで……私、は……わたっ、私は……危険……を、承知で……カ、ノアちゃ、んに……協、力し……たのに……ッ。お、しえて……もらわ、なくても……っ。き、けん、だって……気付、いて……て……それ、で……協力……を…………したのにッ!!
「や、やめてくれ……やめてくれ!! チハル!!」
泣い、てる……カノア、ちゃんが……見、える……。ご、めんな……さい……私に、は……止め、られな……い……。じご、う……じ、とくだ……って、分かって……る、のに…………カノア、ちゃんは……せん……たくしを……くれた……だけ……だったの、に……。ああ、だめ…………い、やだよ……もう、やめて、よ……あたまが、あつい……ッ……あ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあt――。
――………………そのとき、わたしのなかで……なにかが……はじけた……。




