四十服目 怪氣学園S(16)
「…………は?」
正体不明の幻を見て、霧彦は一瞬困惑し、目を擦ろうとした……が、敵の襲撃を現在受けている事を思い出し、すんでのところで意識を周囲に向けた。
――今は謎の幻を気にしている場合じゃない。
――とにかく今は向かってきた敵を全員制圧せねば。
そう自分に言い聞かせ、霧彦はここに集ったみんなと連携して次々と敵を無力化していく。
本当は風紀委員として、暴力で訴えたくはなかった。
だが、相手が自分達をいきなり襲撃しようとする犯罪者の類であれば話は別だ。まず相手を無力化せねばこちらが殺される。
そして、戦いを始めて五分くらい経った頃だろうか。
霧彦は、美彩の顔色が悪い事にふと気が付いた。
もしかして戦いっぱなしなせいで、バテ始めたのだろうか。
とにかく霧彦は、そんな彼女を援護するために近付こうとした……その時。
煙でよく見えない美彩の背後から、突如ハンカチを持った両腕が伸びてきた。
今まで武器を持った手ばかり見てきため、霧彦は一瞬、予想外の物の出現に呆気に取られ――。
「ッ!? むぐっ!」
――その手によってハンカチが、美彩の口に押し当てられたのを、見ていたのに止められなかった。
「ッ!? 白ギャル二号!?」
霧彦とほぼ同時に、カノアも事態の異常に気付く。
「ッ!? 美彩!?」
「ッ!? ちょ、待ちなさ――」
陽と璃奈も、遅れて気付く。
すぐに璃奈が動き、親友へと手を伸ばす。
しかしその手は、空振りした。
伸ばそうとした瞬間に美彩の全身が煙に巻かれ、次の瞬間には……そこに、誰もいなかったのだ。
「み、美彩ァァァァ――――――――ッッッッ!!!!!!」
璃奈が、親友の名を叫ぶ。
しかしその声は、戦いが続く北校舎の廊下に響くばかりで……返事はなかった。
そしてその瞬間を。
ついに璃奈が隙を見せた瞬間を……狙わない襲撃者はいなかった。
襲撃者の一人の金属バットが璃奈に振るわれる。
璃奈はそれに、遅れて気付き、咄嗟に腕で受け止めようとする……だが間に合わな――。
「白ギャル一号!!」
――い、と思った次の瞬間。
璃奈を襲おうとした者を、カノアが蹴り飛ばす。
襲撃者は一撃で意識を失い、廊下に倒れ込む。それを確認すると、カノアは背後にいる璃奈に向けて「馬鹿者!!」と怒鳴り付けた。
「白ギャル二号を捜すためにも、まずはここにいる敵を早く全滅させるのが先なのじゃ!! 油断するな!!」
「…………チッ!! 分かってるよそんな事!!」
正論を言われて、璃奈はカチンときたが……すぐに戦闘を再開した。
――美彩……お前も絶対、すぐに助けるからな!!
その心に、新たな決意を刻み付けながら。




