三十八服目 怪氣学園S(14)
同時刻。
カノアが居候している柳瀬家に、一人の男が訪問した。
青い上着と帽子、そして薄黄色のズボンという出で立ちの、二十歳前後くらいの青年だった。
彼は手で抱えた段ボールを持ち直すと、柳瀬家のインターホンを押した。すぐに家の中から「はいはいです~~!」と、聞いたこちらも元気になるような快活な声が聞こえ……そしてドアは開かれた。
何かあった時のために、現在お留守番中な夕月がドアから顔を見せる。
すると訪問した青年は、夕月の顔を見るなり少し困った顔をし「すみません、お届け物です……えーと、ここはカノア・クロードさんのお宅で間違いないでしょうか?」と訊ねた。
どうやら青年は宅配業者で、運んだ荷物の受取人であるカノアは、名前からして明らかに外国人であるハズなのに、実際に出てきたのは、黒ギャルな日本人にしか見えない(実際に日本人)夕月であったために困惑したらしい。
「ああ、カノアちゃん宛ですか! えーと、サインはここです?」
「あ、はい。ここにサインをお願いします」
けれどどうやら、配送先は合っていたようだ。
その事に内心ホッとしながら、青年は受領証と、会社から持参したボールペンを夕月に渡した。そして書かれたサインを受け取るなり夕月に段ボールを渡し、彼はすぐに去っていった。
※
「え~と、品名は……おおっ! 新作の煙草の葉なのです!」
段ボールをカノアの部屋に運び込み、品名を確認した夕月は笑みを見せた。
「ほぅほぅ! より強力になっているだけでなく一枚一枚のさらなる小型化に成功したから嵩張らない! これなら前より少なく所持していても長く浄化の紫煙の力を使えますね! カノアちゃんのご両親が勤めている煙草会社、恐るべしです!」
そしてそこまで煙草の葉を称賛したところで……夕月は「あ」と気付く。
「でも、そのカノアちゃんが事件の現場に行っている時に届くとは……タイミング悪過ぎですよ」
※
一方、そのカノア達はといえば。
「ッ!? こ、これは……!」
北校舎へと入った瞬間に起こった異変――廊下や教室から漏れ出した灰色の煙を見るなり、霧彦は顔をしかめた。
「ッ! この煙……ヤツらめ、出し惜しみをやめたのかのォ?」
表情を硬くしつつ、カノアは周囲を警戒した。
「みんな! この煙はできる限り吸わないようにするのじゃ! ワシの煙で少しは耐性が出来ておるとは思うが、吸い過ぎると連中のように、自力で後戻りできなくなるの――」
「危ねぇ!!」
カノアがみんなに指示を飛ばしている最中だった。
彼女の後ろの、煙によって見通しが悪くなった空間から、ナイフを持った女性が飛び出してきた。気付いた璃奈が、すぐにその女性を殴り飛ばす。
すると、それを合図にしたかのように。
全方位から、それぞれナイフやら金属バットやらチェーンやらを手にした暴漢達が襲い掛かってきた。
敵は総力戦がお望みなのか。
それともそれだけ追い詰められているのか。
カノア達に、それは分からない。
しかしどちらにしても、彼女達が取るべき道は一つ――。
「ワシの親友を……とっとと返してもらうぞ売人共ォ!!」
――ただただ前進あるのみ!!




