三十七服目 怪氣学園S(13)
「そういえばさ、お前の先祖の霊とやらで捜せないのか?」
中通路を進む最中、璃奈がカノアに訊いた。
「さっきはアタシ達の同級生が攫われた事を教えてくれたんだ。今こそ、その情報収集能力を使うべきじゃね?」
「……う~~む……そうしてもらいたいのは、ワシも同じじゃよ」
するとカノアは、眉間に皺を寄せながら答えた。
「じゃが、万が一の事もあるのじゃ。ワシの祖父を始めとする先祖の霊は、ワシらの使う煙草の影響で、ある程度は不完全なる煙草の煙への耐性もある……が、それでも不完全なる煙草の煙の影響を受けて、悪霊化しないとは限らんッ。もしもその万が一な事態が起きたら……今までの幽霊よりも、数倍は厄介じゃぞ? こっちのやり口を知っている側じゃからのォ。おいそれと、同行すらお願いできん」
「ああ、なるほどな」
璃奈は冷や汗をかきつつ納得した。
某地獄先生作中では『サイコゴースト』なる厄介な存在が出たが、あれは基本的にはフィクションであり、現実にはそんな反則気味な幽霊は存在しない。しかし霊媒師側のやり口を知っているという意味では、元霊媒師の幽霊が厄介な存在である事に変わりはないだろう。
「ん? どうしたんだい二人共?」
するとその時、陽が後ろを振り向き訊ねた。
他のみんなも、同時に後ろを見た。
するとそこには、なぜか鏡の前でぼーっとしている佐護と宇摩がいた。
「……ん? あれ?」
「どうかしたか、お前ら?」
だが当の二人は、逆になんでみんなが自分達を見ているのか疑問に思った。
「まぁ、無事ならいいけどさ」
霧彦は安堵した。
「というか、早くしないと置いてくよぉ?」
美彩は二人をせかした。
「?? わ、分かったよ」
「つうか、なんでこんなにあいつらとの距離あんだ?」
ぼーっとしていた二人は、ワケが解らないままにみんなの後を追った。
二人が見ていた鏡が、わずかな振動を起こしている事にも気付かずに……。
※
須藤政宗が入院している部屋に、一人の男が訪れた。
どこかの会社の社員なのか、ビシッとしたスーツに身を包んだ男だ。
彼は未だに目を覚まさない須藤に近寄った。
しかし須藤は、それでも目を覚まさなかった。
「…………いい加減、起きた方がいいぞ」
そしてそんな彼に、男は、淡々と告げた。
まるでその言葉が、必ず届くと確信しているかのように。
「カノア・クロード達に危機が迫っている。そして彼女達を救えるのは……もしかするとお前だけかもしれない」
告げながら男は、その懐から一本のパイプ煙草を取り出した。
「気付け特化の、試作品の葉だが……やらないよりはマシ、か」
そして誰に言うでもなく男は呟くと、パイプ煙草に点火し……口内に溜めた紫煙を部屋中に充満させた。
途端に、室内の氣が……変わった。
古き氣から、新しき爽快な氣へと。
それはまるで、悪霊の攻撃を受けたカノアが復活したあの時の再現だった。
「俺には俺のやるべき事がある。俺が関われるのはここまでだ。あとは……お前とカノア・クロード、そして彼女が集めた仲間達次第だ」
それを見届け、男は最後にそう告げると……すぐに部屋を出ていった。
再び部屋に静寂が訪れる。
しかしその静寂は、すぐに破られた。
「…………………………ブハァ!? くっさぁ!? な、なんだこの臭いは!?」
なんとも締まらない、須藤政宗の復活直後の文句によって。




