二十五服目 怪氣学園S(1)
とりあえず、不定期ですがまた執筆再開します。
カノア達が清雲高校の警備員に話を(主に霧彦が説得して)通し、校内へと潜入したのを……遠くから眺めている者がいた。
「……あの子ったら」
その存在は、怒っているとも笑っているとも、悲しんでいるとも取れる表情で、カノア達を見つめ呟いた。まるで、危険地帯へと足を踏み入れる子供を咎める母親にも似た感情を抱きながら。
「まぁ、これで誰かがリタイアすればそれでよし。もし彼女達が無事に脱出できたのであれば……少なくともここでの出来事は時間稼ぎにはなるかもしれませんね」
しかしその口から告げられたのは、子供の無事を願う母親のそれとは、まったくの真逆。子供を犠牲にしてでも何かを成し遂げんとするヒトデナシの言葉だった。
※
「風紀委員が警備員に信頼されていてラッキーだったのじゃ!!」
警備員に借りた昇降口の鍵を使って昇降口から入り、いつも通りに上履きに履き替えながらカノアは言った。
「アタシが言うのも、なんだけど……このメンツのほとんどは問題児だしな」
璃奈は思わず苦笑した。
「自覚があるんなら、明日からはまずスカート丈を元に戻せ」
「それとこれとは話が別だッ」
すかさず霧彦からツッコミが来るが、璃奈は目を合わせずに言い返した。
確かに問題児である事を自覚しているか否かと、自覚しているからといってそれを直すか否かは別問題である。しかし霧彦は怯まない。一瞬、確かに別問題だとは思ったものの「だが何にせよ直すべきだ。確かにスカート丈が短いというのは、人によってはカッコ良さを覚えるかもしれないが、同時にあらぬ相手に余計な劣情を抱かせる諸刃の剣だ。ただでさえ璃奈達は容姿が整っているのにさらにスカート丈まであれじゃ、いつか予想外の相手に純k――」
だがその話は、途中で途切れた。
聞く者によってはとても恥ずかしい霧彦の意見のせいで、顔を真っ赤にした璃奈によって顔を殴られる……その直前。璃奈達の次の動きを察知したカノアが、彼の頭を咄嗟に、昇降口の床に伏せさせたからだ。
「危ないのじゃ!!」
アクションから数瞬遅れて、カノアの声が響く。
と同時に、霧彦に当たるハズだった璃奈の鉄拳は空を切り……そのまま、霧彦の背後に忍び寄っていたローブ姿の存在の顔にぶち当たった。
「…………は?」
殴った璃奈が、まず声を上げた。
あまりにも予想外な展開だったため一瞬呆ける。
その間に、相手は床に沈んだ。相手が手に持っていた金属バットが、甲高い音を立てて床に落ちる。これで霧彦の頭を殴ろうとしたのか。もしそんな展開になっていたら……そう考えるだけで恐ろしい。
相手の存在に気付いたカノアと、偶然相手を殴った璃奈以外全員が、さらに一瞬遅れてその出来事を認識し……ギョッとした。
「お、おい……なんだこいつ」
「ぜ、全然気配感じなかったぞ」
そんな中、すぐに動いたのは須藤の取り巻きの二人だった。
相手の脅威をあまり感じていないのか。それとも、女子の前で格好つけたいのかは不明だが、ローブ姿の人物をツンツン爪先で突く。
しかしローブ姿の相手はピクリともしない。
どうやら璃奈のワンパンで、完全に伸びているようだ。
「もしかすると、相手の煙草――不完全なる煙草の煙のせいで、気配遮断系の能力に目覚めた者なのかもしれんのじゃッ」
霧彦を襲撃しようとした相手を観察しながら、カノアは推測を口にした。
「ここに来るまでにワシのパイプ煙草を吸っておいて正解じゃったな、伝説のシロギャル!! おかげでワシとほぼ同時に……かろうじて、じゃが、相手の存在に気付けたのじゃ!!」
「え、いや……そのぉ」
さらに言われた言葉に、璃奈は困惑した。
相手の存在など、悔しい事に璃奈は微塵も気付いていなかった。
あれはただ偶然当たったに過ぎない……のだが、カノアの笑みを前にそれを言うのは憚られた。
「一応、縛り上げとく? こいつ」
そんな微妙な感情を抱く璃奈を余所に、陽が口を挟んだ。
「おお、そうじゃなッ」
カノアはすぐに賛成し、懐からガラパゴスな携帯電話を出した。
「縛り上げて、昇降口の外にでも置いておくのじゃ!! 知り合いの学者にこいつを回収してくれるよう頼んでおこう!!」




