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 二百五十服目 決戦前(19)


 展開された包囲網たる中毒者(ジャンキー)の内、己の主たる夏目玲――アルラが指定した方向に向かっている中毒者(ジャンキー)達の視界を、ソグムは不完全なる煙草を介し確認していた。


 地図によれば、清雲高校から見て……アルラが指定した方向には、住宅地が存在する。清雲高校を始めとする、この地域の教育機関に(かよ)う子供がいる家庭が数多くある場所だ。


 ちなみにそこも……中毒者(ジャンキー)達の視界を確認した限りでは、清雲高校の他の学区と同様に、暴徒達による被害を受け、凄惨(せいさん)な状況となっている。


 その光景を目にして、ソグムは少々良心が痛んだ。

 だがすぐに『必要な犠牲だ』と考え直し、アルラからの指令を遂行(すいこう)した。


 ――片手間、か。アルラ様も無茶をおっしゃる。


 中毒者(ジャンキー)達の視界を確認しつつ、彼は先ほどの指令を思い出し……嘆息する。


 ――〝彼〟の(あと)()けながら、()()()煙術師達を捜せだなんて……確かに〝彼〟は不確定要素ですが、それでも〝例の彼〟ほどの脅威じゃないでしょう。優先順位が逆じゃないですかね? 〝彼〟に()いた人間の質からして。


 現在彼は、アルラからある指令を受けている。

 それは、下手をすれば彼女が(おこな)っている儀式が()(たん)しかねない可能性があるが(ゆえ)の……他の幹部や中毒者(ジャンキー)には極秘の指令。


 万が一にも儀式が()(たん)してしまわないよう……その不確定要素を、場合によっては排除せよ、という指令だ。


 ――しかし、指令には従わなければ……ね。


 だが、主たる存在からの。

 ()()()()()()()()存在からの。


 ()()()()()()()()()()()存在からの指令である。


 独断で何かをやらかせば、どうなるのかを身を(もっ)て知っているがために……彼は素直に、その指令に従う。


 するとその直後、彼が差し向けた中毒者(ジャンキー)達が、住宅地へと到着した。

 アルラの霊的直感の通りであれば、カノア達がいるであろう……住宅地へと。


     ※


 カノアとビリーは次に、繋いだ手を介して共有している、ビリーの知識――清雲高校で起きた事件の(あと)に調べた、事件関係者の家族の情報を頼りに、上條グループと繋がりのある、様々な建物を巡った。


 清雲高校で起きた事件の終盤で、味方だと思っていた美彩――メイサが、事件の黒幕であると発覚したために、再び、同じ事が起きる可能性もあるかもしれないと考え、飛崎組があらゆるツテを頼りに念のために調べ上げた情報だ。


 一軒、二軒、三軒……多くの建物を、精神体の状態で。


 普段、自分達を見守っている先祖の霊がいるのと()()()()位相から調べる。


 途中で、彼女達は違和感を覚えた。

 確認していた場所に対する違和感ではない。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()


 動きが(にぶ)くなり。

 不快な気分になる。


 と同時に、自分達の精神体の(はし)が……()()()()()()()()()()()


 精神を(むしば)む、不完全なる煙草の煙が充満している地域に精神だけの状態でやってきたのだ。自分達が不完全なる煙草の煙に汚染されてしまってもおかしくはない。


 ――このままでは、いけないッ!!


 心の片隅で、カノアとビリーは思う。

 しかし覘覧(てんらん)の儀という、世界そのものに干渉する儀式を(おこな)っている関係上、儀式の執行を密売組織が察知した可能性は高く、そしてその密売組織が、儀式の再執行を許してくれるとは思えない。


 なので、今ここで璃奈と千桜を見つけ出さないといけないのだが――。











 ――…………見つけ、た……。











 不完全なる煙草の煙が生み出す(けが)れが、さらに深く……自分達の精神体を汚染し始めたところで、彼女達は察知する。











 璃奈と千桜が遊んでいた街の、最寄(もよ)りの駅の近くにある建物。











 数年前、上條グループに買収されたのを機に大幅にリフォームされた……とある休眠会社のあったビルの中にいた、璃奈と千桜の気配を。











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― 新着の感想 ―
[一言] 役者は揃いましたね( ˘ω˘ )
[良い点] これで、ついに個々に分かれていた舞台が一つの大きなものとなった――ってなところでしょうか。
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