二十二服目 秘密の、つ♡ど♡い?
「エル・フマドール様、尊いぞォ~~!!」
「え、エル・フマドール様、尊いぞぉ~~!!」
「エル・フマドール様、尊いぞォ~~!!!」
「エル・フマドール様、尊いぞぉ~~!!!」
「エル・フマドール様、尊いぞォ~~!!!!」
「エル・フマドール様、尊いぞぉ~~!!!」
「もっと大きな声を出すのじゃ伝説のシロギャル!! その程度の肺活量で、一撃で浄化できると思っておるのかァ!!!?」
「なんでこんなスポコンみてぇな特訓を毎日しなくちゃいけねぇんだよテメェ!! 河原で全力疾走しながらの掛け声なんてイマドキ古ぃんだよ!! ていうかアタシを白ギャルって呼ぶんじゃねぇ!!!!」
「馬鹿者ォ!!!! 初日も言ったが、ワシがいつも現場に来れるとは限らないのじゃ!!!! というか事件はいつも現場だけで起きるとは限らん!!!! 時には会議室でも起こるのじゃァ!!!!」
「そいつぁドラマの中だけの話だよこの日本オタクがぁ!!!!」
休日の朝の河原に、少女二人の絶叫が響き渡る。
同じくジョギングをしている者や、犬の散歩をしている者が、なんだなんだと、二人に注目する。
「ほォ。やればできるではないか伝説のシロギャルよッ」
しかしカノアはそんな周りの視線など気にしていないのか、何気に璃奈が大声を出していた事実を、不敵に笑いながら指摘した。その瞬間、璃奈の陶器の如く白い肌に赤みが差し始めた。
「やはりワシの目に狂いはなかったのじゃ!! 貴様には素質がある!! ワシにはまだまだ遠く及ばんが、数年後には背中を任せられるやもしれないのじゃ!!」
「ば、馬鹿野郎!! テメェが煽ったからだろうがこの!!! このぉ!!!!」
「うむ!! その根性や良し!! そのままの勢いでワシを走って捕まえてみるのじゃ!! 無論、大声を出しながらのォ!!!!」
カノアは残像が見えるほど速い璃奈の手を、ヒラリヒラリと余裕で躱す。
どれほど長く、人知れず浄霊業をしていたかは分からないが、伊達に人ならざる存在と戦い続けてきたワケではないらしい。
※
「あ、ホントだ。特訓してる」
そんな二人の様子を、遠くから目撃した者がいた。
カノア専属の情報屋的ポジションについてしまった千桜だ。
「…………私は真似したくない、無茶な特訓だなぁ。なんで璃奈さんは余裕であれができるのかな?」
カノアに一応、特訓の事を教えられていたが故に、せっかくなので見学しに来た千桜から見れば、もはや二人は常人の域を超えかけているように感じた。
カノアについては、今まで人外と戦い続けてきたおかげだと言われればある程度納得だが、璃奈はなぜそんなカノアに食らい付いていけるのであろうか。
まさか彼女が今まで起こしてきたと噂されている、数々の武勇伝こと、他校の不良との喧嘩が、彼女に常人以上の身体能力を身に付けさせたのだろうか。
「…………ま、いいか。考えてもしょうがない。しょせん私は、物語で言うところのサポートキャラ。RPGの勇者にセーブ・ロードポイントや魔物に関する情報を与えるサブキャラなんだ。あんな二人のような主人公にはなれない」
ふぅ、と一度溜め息を吐いてから、彼女は本来の目的地である本屋へと急いだ。
今日は千桜が好きな、二度もアニメ化された少女漫画の最新刊が出る日だ。人気であるが故に早く行かないと売り切れてしまうかもしれない。
すると、その時だった。
彼女は後ろから肩を掴まれ……思わず振り向いたその瞬間、顔に灰色の煙を吹き付けられた。




