二十一服目 夜中決戦の前に
「だったらもう、夜の学校も調べてみたら?」
登校中の事だった。
カノアは隣を歩く女生徒・木下千桜からそう助言された。
「昼間に調べて何も出ないなら、もう夜の学校の調査も始めたらどうかな?」
「むぅ。もうそれしか……道はないかッ」
彼女の言葉があまりにも正論だったため、カノアには返す言葉がなかった。
ちなみになぜ、朝っぱらから二人が……カノアの家の事情的な話をしているかといえば、カノアが千桜に、A組に関する話題をさり気なく、事件後にしたからだ。
※
当時のカノアは、清雲高校に敵意を向ける悪霊に取り憑かれていた少女こと美堂聖麗奈がいったいどんな人物だったのか、なぜ悪霊に取り憑かれねばならなかったのかを知らなかった。だから試しに、帰る方向が同じ千桜に訊ねてみたのだが……なんと驚いた事に千桜は、聖麗奈の詳細を教えてくれた。
その事に、カノアは驚愕した。
一方で千桜は『やっちゃった』と言いたげに、口を噤んだ。下手をすれば聖麗奈のストーカーだと言われかねないと思ったのだ。
別のクラスにも友人が普通にいて、そしていろんな人の情報を普通に聞く機会があるというだけの……ごくごく普通の人間であるにも拘わらず。
なんでもは知らないにも拘わらず。
知っている事しか知らないにも拘わらず。
だが次の瞬間。
カノアの口から放たれた言葉は、彼女の想定の斜め上を行っていた。
『ま、まさかチハル……貴様、情報屋というヤツか!?』
『…………へ? あぁ、うん』
まさかそのような勘違いをされるとは思わず、千桜は驚きのあまり頭が真っ白になりながら、反射的にそう答えてしまった。
後になってエラい事を言ったと気付いたがもう遅い。彼女はこれを機にカノアが清雲高校に転校してきた予想外の経緯を知り、そしてこれから先……と言っても、事件が解決するまでだが、カノア専属の情報屋として生きていく事になったのだ。
※
「情報のみならず、相談まで感謝するのじゃチハル!! これは礼じゃ!!」
千桜とのこれからの相談を終えるや否や、カノアは千桜の鞄の中に紙の束を捻じ込んだ。どこからどう見ても諭吉サマ数枚だった。
「え、な、何入れ……ってこんなに貰えないよ!?」
すかさず千桜はその正体を確認し……目を丸くした。
流れでこうして情報屋として生きる事になった千桜だが、だからと言って大金を貰うほどの覚悟は今の彼女にはない。
「安心するのじゃ!! 資金洗浄などに使われた汚いお金じゃないのじゃ!!」
「いやそういう心配をしてるんじゃなくて!!」
相変わらず斜め上なカノアの発言を聞き、千桜は涙目になった。
※
その様子を、遠くから眺めている存在がいた。
彼女達と同じく、清雲高校の制服を身に纏った存在――学生だった。
その存在は、隣を歩く友人と会話しながらも……視線だけはカノア達から離さなかった。
――危険だ。
――このままでは、我らの理想郷は……壊される。
――あんなガキ共によって。
――許せない。
――ゆる、せない……。
その存在の胸だけでなく、目にも憎しみの炎が宿る。
しかしそれに、その存在の隣を歩く者は気付かない。
なぜならばその存在は、今まで……胸の内に秘める炎の如き憎しみが、隣を歩く者にさえバレないよう、注意しながら生きてきたのだ。これからも憎しみを隠す事など、その存在にとっては雑作もなかった。
書き溜めた分はこれで終わりです。
さぁて、また書くの頑張らないとなぁ。




