十九服目 第一回捜査会議!!
「あら。カノアちゃんのお友達?」
「うむ!! ワシの潜入捜査に協力してくれる仲間じゃ!!」
意気揚々と、霧彦達と帰宅したカノアは、ひと足先に隣県での仕事から帰る事ができた一美の質問に答えた。
一美はそんなカノアと、その後に続いた四人の男女を微笑ましく見守り……途中で「男女比率的に、あの男の子大丈夫かしら」と心配になった。
※
カノアが居候している柳瀬家は、清雲高校から自転車で三十分も掛からない場所にある…………ボロアパートの一室にあった。
その様相に霧彦達は一瞬言葉を失ったが、カノアが意気揚々と入っていくので、とりあえず彼らは一緒に笑顔で入る事にした。
「ではまず、これまでの事件について整理しておくのじゃ!!」
布団と机、箪笥しか置かれていない、あまりにも女子らしいとは言えない質素な自室に、全員が入るのを確認すると、カノアは部屋の中心に、円卓と座布団を移動させ、そこにみんなが座ると……雰囲気を出しながら改めて言った。
すると、それのどこがウケたのか。美彩は座布団に座ってから笑顔で「パチパチパチパチーー!!!!」と、実際に手を叩きつつ擬音を口にした。
「最初の……A組で起きた事件!! 先日、クラスメイトのチハルに聞いて知ったが、ワシが目撃した事件の中心人物はいわゆるゴス系と分類される存在……ようはワシの故郷であるアメリカ大陸にはごまんといるタイプの人間じゃなッ!!」
「ごまんもいるのか」
実際にそうかは分からないが、そう言い切るカノアの勢いに押されて、陽は苦笑した。
「そして彼女を、ワシの知り合いの〝そっち方面〟に詳しい学者に調べてもらったところ……彼女が例の煙草を使っていたと判明した!!」
「卑猥だ。言い方の変更を要求するッ」
「いや霧彦、お前の頭ン中が卑猥だよ」
思わず霧彦は、風紀委員としてツッコミを入れたが、ハタから聞けばボケだったため、璃奈が率先してツッコんだ。
「そして例の煙草を吸ったそのゴス系女子は、その煙草の影響で霊媒体質となり、波長が合う浮遊霊に一方的に憑依され……あのような事件が起きた。そしてこれはワシが実際にその霊と対峙し、その後に判明した事じゃが……どうやらその浮遊霊は、清雲高校に怨みを持つ存在のようじゃった」
カノアは急に、テンションを下げながら説明した。
「う、怨みって……イジメに遭った、とか?」
美彩が首を傾げながら訊いた。
「そうかもしれぬ」
カノアは静かな声で即答した。
「そして第二の事件!! 廊下を走る幽霊!!」
しかしすぐに、またテンションを上げながら話題を変えた。
「最初にヤツを見た時は、まだワシにしか見えんほど……時間が経てば、自然消滅するほど存在が希薄じゃった……が、しかし!! ワシが階段から落ち、みんなに迷惑を掛けた今日は、なぜかヤツはみんなにも視認できるほど、この世界で存在を確立しておった!! さらに言えばワシの煙を受けて浄化されつつも、ワシに対し呪いをかけるという反撃をした事実からして、ヤツが何者かによるバックアップを受けた可能性は非常に高い!!」
「バックアップって……まさかその、密売人の仕業?」
陽は訊いた。
「おそらくそうじゃ!」カノアは即答した。「というかこのタイミングで、ワシに害を与えようなどと考えるのは、密売人くらいしかおらん!! ワシが心霊関係の事件を解決してみせたが故に、邪魔なワシを清雲高校から排除したいのじゃ!!」
「いったい売人は、何が目的でそんな危険な物をばら撒くんだ?」
霧彦は単純な疑問を口にした。
「金銭が目的なのか。それとも、混乱を招く事が目的なのか……まったく理解できない。下手をすれば買い手の予想外の暴走も起こるだろうに」
「そこは……ワシも疑問なんじゃ」
カノアは再びテンションを落とした。
「その目的さえ掴めれば、事件はより早く解決できそうなんじゃが」
「なるほど。とにかく今は情報集めが大事か」
霧彦は、己の顎に手を当て考え込んだ。
そしてすぐに、難しい顔でありつつも結論を出した。
「じゃあ当分は、心霊絡みの事件とやらを解決しつつ、そういう怪しい動きをする売人らしき人物を捜し出す……って事で、いいか?」
「うむ!! 当分はそれで頼む!!」
カノアは再び、元気を取り戻した。
「あと伝説のシロギャルの煙術――エル・フマドール様の使徒が使う、オリジナルの浄霊術の特訓も活動内容に組み込ませてほしいのじゃ!!」
「はぁぁ!? なんでまたアタシ!?」
いきなり話の中心にされた璃奈は、再び目を見開いた。
「ワシに何かあった時、代わりに浄霊できねば清雲高校が危機に陥るからじゃ!! いうワケで伝説のシロギャルよ――」
カノアは太陽のような笑顔で言った。
「――エル・フマドール様の使徒の一人として、貴様には期待しておるぞ!!」
――……女子四人、男子一人のハーレム状態なのにあの子……何も感じないんでしょうか?
※隣の部屋でご飯の支度をしながら捜査会議の内容を壁越しに聞いてしまった一美の心中。




