漫才【じゃんけん必勝法】
ボケ=A(エー/小太り)
ツッコミ=B(ビー/細身)
A/B「よろしくお願いしますー」
A「ふぁああああ……」 B「なによ眠そうじゃない」
A「そうなのよ、昨日ちょっと考え事してたら眠れなくなっちゃって」
B「エーくんが!? 珍しいね、何か悩むようなことあった?」
A「じゃんけんの必勝法をね――」
B「ねえよ」
A「えっとビーくんはじゃんけんの全てのパターンを網羅して――?」
B「してるよ。その上でねえっつってんだよ」
A「ウッソだあ! じゃあ俺がこれから何出すか当ててみろよな!」
B「ごめんな、お前の思考パターンは網羅してねえんだわ」
A「とにかくね、俺はじゃんけんに勝ちたいの! 勝ち組になりたいんだよ!」
B「勝ち組じゃんけん気にしねぇと思うよ」
A「だからちょっと相手して。まず俺がグーを出すからビーくんはチョキ、ここからグーチョキパーの順番でお互いに出し合っていく。つまりビーくんは絶対に俺に負けること、いいね?」
B「脳トレかよ」
A「なら何かないですかね? 勝てる方法」
B「ちょっといい? そんなにじゃんけんする機会ある?」
A「あるよぉ! 余った牛乳とかドロケーのときとか」
B「過去はいいよ。つかドロケーのじゃんけん勝ち負けねぇだろ」
A「あと友だちん家でゲームするときコントローラーが4に対して5人とかだと、もう……」
B「それ分かる! 負けると『あれ、俺なにしに来たんだろう』ってなるやつね」
A「あ、そうすか……」 B「のってこいよ」
A「ちょっと一回マジで勝負しよ。『いいか、俺はグーを出すぜ……?』」
B「うわ出たー。でもそれ意外と効果的かもしんないね」
A「寝ずに考えた結果よ。結局裏をかくかそのまま行くかで悩んで寝たけど」
B「寝てんじゃねえか」
A/B「じゃんけんぽん!」
A(✂) B(✊)
A「ちょっと!? 今の俺がそのまま出さないと踏んで、裏かいてグーを出したんだよね?(怒)」
B「まぁ、そうだね」
A「性格が悪すぎるよ!」
B「うーんブーメラン」
A「やっぱダメじゃん! 寝ずに考えた奇策ダメじゃん!」
B「寝て考えた凡策ですね」
A「くっそぉ~、じゃ逆に『お前はパーを出す』的なのは?」
B「暗示? でもそれ人数多いと無理じゃない?」
A「もう一回いい? 『ビー、お前はチョキを出したくなる……!』」
B「はいはい(呆)」
A「じゃんけんぽん!」
A(✋) B(✂)
A「あのさぁ!(怒)」 B「いや怒る意味が分からない」
A「何普通にチョキ出してんの? 言ったよね? 『ビー、お前はチョキをだしたくなる……』って!」
B「今の俺がそのまま出さないと踏んで、裏かいてパー出したの?」
A「そうだよ!」 B「なんと」
A「あーもう暗示もダメじゃん! 全然効いてないじゃん!」
B「まぁ、うん、結果的にね」
A「……待てよ、ビーくんは暗示に掛かってない? だってそうだろ、暗示に掛けます~って言ってるんだもんな。そんなのビーくんからしたら『暗示が来る……ッ!』って構えられるんだし。いやでもビーくんチョキ出したよな。ってことはやはり暗示に……、掛かっていたんですか?」
B「うるせえな」
A「やっぱりじゃんけんって読み合いだと思うんです」
B「そうね。相手が何を出すか分かれば勝てますから」
A「だからそこを鍛えようと」
B「鍛える? 鍛えようがないでしょそんなの」
A「……そう、思いますよね?」
B「うん、思うよ。どうやって相手の手を読むのを鍛えるのよ。無理でしょ」
A「考えましたよ。寝ながらも」
B「それ夢だね。期待していいのかな」
A「ずばり、じゃんけんの手を一つ、少なくする!」
B「グーとパーだけでじゃんけんするとか、そういうこと?」
A「その通り。それなら二択だから手を読む練習になるってわけ」
B「何かあったよね? グーとパーでグループ作るやつ」
A「あったあった。必ずいるのがチョキ出してくるやつね」
B「分かるわ~、ってかごめん僕だそれ。みんなが真剣にグループ分けしようとしてる時ほど、チョキ出しちゃった後の『なんだよコイツ』感すごかったなぁ」
A「あ、そうですか……」 B「もっと何かあるだろ」
A「じゃあいい? グーパーじゃんけんするよ」
B「いいけど、エーくん弱いんだからちゃんと僕の手考えなよ」
A「わかってるって。そうだ3回勝負にしようよ。2回勝てば勝ちね」
B「いいよ、あいこは?」
A「俺の勝ちで。はいじゃーんけーん!」
B「『じゃーんけーん!』じゃねえよ、おい」
A「……分かった。あいこはあいこのままでいい。君はそのままのあいこで」
B「はいじゃーんけーん」
A「くっ不意打ちか! 卑怯な!」 B「楽しそうだなお前」
A/B「ぽん!」
A (✊) B(✋)
A「一旦やめよう!」 B「なに負けたからって」
A「いやこの後また『じゃんけんぽん!』で始めるか、『ぽん! ぽん!』の連打で行くかとか決めてなかったから」
B「いいよそんなの、ぽんぽんで。はい僕1勝からじゃーんけーん」
A「ビー、それはおかしいと思う」 B「んっ、何がですか?」
A「言ったじゃん、大事なことはちゃんと二人で相談してから決めるって」
B「奥さんかお前。言っとくけどこれどーでもいいことだからな」
A「っていうかダメこれ。二択なのに何出すか全然分かんないもん」
B「早いな諦めるの。あのさ、今のじゃんけんで僕思ったんですけど」
A「ああ、ビーくん急かしたヤツ? 佐々木小次郎かよ」
B「何が? えっとだから、急いで出したでしょ、手を。だからこう、手がギュっとなってグーを出したんじゃないかと」
A「確かに……そう、俺が会心のあいこボケを披露したって言うのにビーくんがそれを無視してじゃーんけーんって始めるから慌てて……そうだよ、俺が慌てて出した手はグーに間違いありませんっ!」
B「うん? いやそうだよね。僕が言ってるのはさ、慌ててギュってなってグーになったんじゃないの、ってとこなんだけど」
A「つまり『早く早く!』みたいな感じで急かして勝負すればいい――と?」
B「そ。そこでパーを出せばちょっと勝つ確率が上がるかも、って話」
A「そっかぁ! じゃほらほら早くじゃんけんしよじゃんけん! ほらいくよ!」
B「もう学べよ。僕相手にやっても意味ないんだってば」
A「お母さん危篤だってほら! 早くじゃんけんしないと間に合わないよ!」
B「縁起でもねえな! じゃんけんする時間惜しいわ」
A「っていうか、それ『さいしょはグー』使い来たらキツイよね」
B「そっか割とメジャーだもんね。2回連続でグー出さないってことでしょ?」
A「そうよ。それ考えたらまたグーはないとか、いや裏をかいてとかなるじゃん」
B「そんなの別に『僕はじゃんけんぽんで始めたいんです』って言えばいいんじゃないの?」
A「おまッ! ビーくんさぁそんなこと言ったら『じゃんけんぽい』派や『じゃんけんほい』派の抵抗勢力が幅利かせようとしてくるに決まってるって!」
B「何と闘ってんだよお前」
A「それに流派は色々デリケートな問題だから……」
B「ならいっそのこと初手は必ずグーで行く、とか決めたら? それなら負けても『俺は俺のルールに従って負けた』ってなるじゃん」
A「何それ、かっけぇ……! じゃあ俺の生涯初手は『パー』にする」
B「おおー、よかったじゃん(棒)」
A「じゃあじゃんけんしよ! 最後に悔いのない勝負ができそうな気がする!」
B「もう勘弁して!」
A/B「ありがとうございました」
✌✂✊✋チョキが出ない_(._.)_