陰気な読書家の羞恥と記録
何が、「天の上から祈っておくよ」だ。あまりの非常識な出来事に興奮して、気が高ぶってしまったらしい。まあ、これを読むのは僕一人なので別に問題ないのだが。
まあこれを書いている時点でわかりきっているし、もはや誰かに伝える形で書く必要もないのだけれども、この体験を記録しておくのはそれなりに価値のあることだと思うので、手帳を書き終わって歩き始めた僕のことも含めて、これからも奇妙な現象や出来事があれば、順次この手帳に書き足していきたいと思う。
僕があの得体の知れない所へ飛ばされた後に目を開けた時、そこには鬱蒼とした森が広がっていた。大分奥地のようで、日があまり差し込まずジメジメしている、いかにもといったような場所だった。おまけに四方八方から獣の唸り声や鳴き声が聞こえてきて、いつ襲われても不思議はない状態だった。僕が悲劇の英雄を気取って、遺書のような内容の手帳を書いたのもその為だ。
気の大きくなった僕は、遠野の昔話にでてくる乱暴な山男にでもなったつもりで、森の中を我が物顔で歩き回ったがけれども、その一方で前述した自己犠牲的な精神も同時に抱えていた為、その森に居た特徴的な生物を見つけ、それらについての考察も欠かすことはなかった。”特徴的な生物”というのは、ある地域特有の、というような意味合いではなく、現実にいない、確実にいるはずのない特徴を持った、要するに「ここが地球ではないことを自身で証明している」生物のことである。ここからは、あの世界から帰ってきた僕が頭を整理するために書いたレポートをここに書き写していこうと思う。これから先、僕がまた何かしらの異常事態に巻き込まれた時に備えて、この手帳は常に僕の持ちうる全ての情報を記録しておかなければならない。