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不運な少年の手記
スポーツ、勉強、芸術、人によって好きなものは様々だけれども、僕にとってのそれは、本を読むことだ。といっても、知識本や新書を読み漁って、見分を広めようとしたり、自分の生活に活かそうと思ったり、何かの目的があって本を読んでいるわけじゃない。ただ単に、本を読むことを楽しんでいる。それだけのことなんだ。
いや、こんなことを書いている場合じゃないのは百も承知なのだけれど、これを書いている僕という人間を、どうしてもあなたに知ってもらいたかったんだ。あなたも今緊急の状況に置かれているのだろうけど、寂しいじゃないか。誰にも知られずに死んでいくなんて。
僕はあなたの前例になるのだろうけど、ここに来るまでのプロセスはもしかしたら違うかもしれないし、同じだったならだったらで、この現象に法則性を見出すことができるのだから、僕の身に起こったことを書き留めておくのは、少なくとも僕の頭では、理にかなったことだと思われる。しっかりと思い出すことにしよう、この支離滅裂で、奇妙奇天烈な現象が起こる前、何食わぬ顔で暮らしていた、つい数分前の僕のことを。