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魔剣聖者 ~異世界で、魔剣拾って、世直し旅路~  作者: 赤月草原
第一章 戦いの始まり
14/20

第五豊国「ホミタミア」

 ラガルスという世界は11の国から成り立っている。


 中央王都「アルルテルム」

 第一豪国「グレンブール」

 第二頂国「ジースライダム」

 第三灯国「トキスフィア」

 第四創国「ナリス」

 第五豊国「ホミタミア」

 第六導国「バーンペール」

 第七甲国「メイセン」

 第八瞭国「ユートラス」

 第九商国「リクト」

 第十洋国「ワイドラ」

 

 地理を簡単に説明するなら、アルルテルムを中心に北へ行くと第一豪国、あとは中央王都を囲むように時計回で順番通りに配置されている。元はアルルテルム王国という1つの国だったのが前の大戦の後に魔剣を別々に分けて保管するという名目で当時の有力都市に預けたのが各国家の始まりだと言われている。

 その際アルルテルムは国土を各国に譲渡し、その名残としてアルルテルムは主要都市をそのまま国家としているのである。ゆえに中央王都だけ肩書きが異なり、他の国より小さいが人々が集中する国となった。

 さて、才雅達はアルルテルムで行われた聖者召喚の儀式でこの世界に喚ばれたわけであるが、無事にアルルテルム城内へ呼ぶことに成功したのは5人、失敗した他の者はアルルテルム以外の国に降りてしまう結果となった。才雅とティルアは第五豊国「ホミタミア」の領地であるアウォールの森へ降り立った。

 ホミタミアは他の国と比べて緑地や高山といった自然のままの場所が多く田舎という雰囲気が強い。そんな広大な自然を活かした農林業や酪農業が主な産業となっている。アウォール村も村人の多くが田畑を有していたり牛や羊を飼っていたりしていたが、魔物の襲撃を受けたために国の首都である「ホミタミア新都」まで移民してきた。

 急な移民であったにも関わらずアウォール村の人々は、居住地を提供されただけでなく、農業や酪農のための土地を分け与えてもらったり、別の仕事を斡旋して貰えたり、その待遇は厚いものであった。こんな魔物がいつ攻めてくるか分からない世界だからこそ国家はその対応を前もって決めていたとのことだ。個人や国家といったものも損得勘定も関係なくお互いに助け合う精神が求められていると、村長は語ってくれた。

 村人達が手に職付けている中で才雅とティルアはどうしたものか悩んでいた。二人は村長に相談したところ、オーガを倒した戦闘能力を見込まれ、薦められるがままにホミタミア傭兵団へ入っていた。傭兵団といっても仕事内容は戦闘だけでなく警備や護衛、時には雑務まで請け負う何でも屋といったところだ。ちなみにティルアは元の世界では冒険者をしていて、最初はそれを希望していたのだが、この世界には冒険者業が無いらしくティルアはひどくガッカリしていた。


「まぁ、無いものは仕方無いよ。魔王に世界が狙われているのに冒険なんてしていられないし。」


「それは、そうなんでしょうけど……」


 入団して間もない2人は、今のところ任せられる仕事が無く町の見回りをしていた。ただ、そう易々と事件が起こるわけではないのでその様子はまるで散歩のようだった。


「でも、こうやって簡単な仕事をしていると冒険者なりたての頃を思い出します。地道な作業ばかりの任務をこなしていって、たまに募集がくる合同任務に参加して、頑張りが認められてランクが上がった時は回りの方が軽くお祝いしてくださって……少し前の話なのに、もう懐かしい感じがします。」


「あれ?ひとりでやっていたの?仲間とか組まなかったの?」


「ランクアップしたときに誘われたんです。サポート役がほしいって。でも、パーティーを組んで初めての任務の最中、強いモンスターに出会って、あっという間に皆やられてしまって、私は一人で逃げ出して、それからは……」


 才雅は何気無い質問をしたつもりだが、どうやらティルアの入ってはいけない領域に入ってしまったようだ。みるみるティルアが暗くなっていった。才雅が口を挟みにくくしているのを感じてティルアはハッと調子を元に戻す。


「ごめんなさい、重い話しちゃいましたね。あっ、サイガさんのそれ、持てるようになって良かったですよね、黒い剣!」


「え?あぁ!そう、本当に助かっているよ。」


 ティルアが話題を変えようと指差したのは才雅が帯刀していた黒い刀。そう、あの魔力を吸いとる黒刀だ。実はこの刀、納刀している間は魔力を吸い取らないのだ。おかげで今も才雅の父の刀の鞘を使うことで何も異常無く持つことが出来ている。因みに折れてしまった父の刀なのだが、大事なものであるがゆえに手放すことも出来ないので、村長のツテで有り余りの短剣の鞘を譲ってもらい、取り敢えずしまって今も持っている。


「ん?向こうが騒がしいな。」


「広場の方ですね。何かあったのでしょうか。」


 二人は足早に広場へ向かっていく。

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