《閑話》魔王軍の状況分析と聖者の休息
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~~~~~アウォール村跡地~~~~~
『ここが件の村ですか、ギルエドラ様。』
『ああ。すっかり人も魔物もいなくなっているがな。』
『こんなちっぽけな村でオーガが倒されたなんて信じられませんが、強い人間でも居たとでも言うのですかね。』
『まぁ、はぐれものだった魔物達だ。魔界で魔力の補充が出来なくなり弱っていたのかもしれんな。』
『情けない。自力で何も出来ないやつらが人間界にのさばっているなんて。しかも強靭な肉体と馬鹿力を持ったオーガすらこんなところでポックリ逝ってしまうくらい弱くなるとは……』
『いや、ただ単にやられたわけではないかもしれん。』
『……まさか“勇者が現れた”なんて言いませんよね。』
『そんなことは言わん。』
『こんな辺鄙な田舎村で、最強の人間がポツンと過ごしてたなんて、魔王軍(オレ達)に襲われて慌てふためくこの世界が黙っちゃいないです。』
『言わないが、厄介なことが起きているのは間違いない。』
『厄介なこと?』
『魔王様を倒せる存在が現れたということだ。』
『ギルエドラ様はジョークが苦手なようですね。先程勇者は現れていないと仰ったばかりなのに……』
『何も“人間が”とは行ってないぞ。魔を討つのは勇者という単純な存在ではない。』
『では何が出たというのでしょう。』
『……魔剣だよ。』
『魔剣?』
『その昔、当時の魔王を倒すために人間どもが作ったとされる十の武器。そのひとつひとつが魔力を介する能力を宿す、魔王に対抗するための必殺武器だ。』
『必殺武器ですか。』
『先代の魔王はその魔剣の力で倒されたと聞いている。』
『そんな代物があるなら何故今まで使われなかったのでしょう。』
『魔剣と呼ばれる程だ。当然使い手を選ぶものだ。武器自身がな。』
『つまりギルエドラ様は、この村を襲ったオーガは魔剣の使い手によって倒されて、そいつはいずれ魔王様も倒しに来るだろうと言いたいのですね。』
『ああ、そうだ。』
『その話をまとめると“勇者が現れた”とも言えるのでは?』
『……我が弟子バゾルスタン。』
『はい。』
『口の聞き方に気を付けないと身を滅ぼすぞ。』
『失礼しました。』
『ともかく、小さな事件だが見逃す訳にはいかない。準備が出来次第彼の者が向かったとされるところへ進軍しよう。』
『襲撃から3日は経っています。さほど遠くへは行ってないと思われますが、近くの村をしらみ潰しに当たってみますか?』
『そんな小さなせずとも、魔剣の使い手という宿命を背負う者なら、大進軍を起こせば寄ってくるだろう。』
『大進軍……ついこの間ベルグモンド卿が決行し敗れたばかりですが、オレ達も死の行軍をしろと言いたいのでしょうか。』
『……魔王様の御心に答えるためその身を犠牲にすることもあるだろう。』
『…………』
『だが私はそんなことは言わん。お前は魔王候補の一人だ。自分の安否を一番に考えて動きなさい。』
『はい。ギルエドラ様。』
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~~~~~中央王都 アルルテムル城~~~~~~
『……ヒマだなぁ。』
『あら“勇者様”、まだ寝てなくて大丈夫なの?』
『おう“お嬢様”、丸1日寝ていたせいで逆に体が疼いて仕方がねえ。』
『はあぁ、とても前の戦いで体力消耗と魔力切れで丸一日気を失ってた人の言葉とは思えないわね。』
『この世界に来る前は毎日のように戦ってきたからな。この体が血沸き肉踊る戦闘を求めてるのさ。』
『私達、平和をもたらすためにやってきたのよね?こんな思想持った男が仲間にいて大丈夫かしら。』
『心配すんなって。なんたって俺は勇者で世界を救った男だからな。どんな魔物が来ようと振り払ってやるよ。』
『考え無しに突っ走って無茶苦茶に暴れた結果、死ぬ間際まで至るなんて、勇者というよりまるであの魔物じゃない。』
『ベルグモンドって言ったか。あの魔物はかなり強い部類なのに狂化の魔法でさらに力を上乗せしていたからな。言われてみればやってることは大差無いな。』
『分かってるならキチンと反省しないと今度は死ぬかもよ。』
『それぐらいの反省なんて何回も元の世界でやってるし、向こうじゃ俺は死んだも同然だろうよ。』
『いや、そういう話じゃ……』
『だからこの世界では、俺の出来ること最大限を出し惜しみしないって決めたんだ。』
『……その熱意、あいつに見習わせたいわ。ずっと帰りたいって喚いてるもの。』
『ナントカっていう乗り物的なモノに乗りたいんだったか?あいつの言ってること難しすぎて分からねえんだよなあ。』
『まあ、今日は「骨休めだ!」とか言って笑顔で城下町に行ったけど。』
『そう言えば他の奴等は?』
『“猫ちゃん”はあいつと一緒に城下町。“神様”は森林浴しに近くの森へ行きましたわ。』
『みんな自由だな。俺もどっか行こうかな?』
『どっかってどこに?』
『まだ見ぬ世界が広がってるんだ。溢れるほどの面白いモン見つかるよ。』
『カッコ良さそうなお言葉ですけど、完全に行き当たりバッタリね。』
『頭で考えるより先に体が動いちまうんだ。昔っからな。』
『完全にバカの発想ですわね。今日くらいゆっくり休めば良いものを……』
『じゃあ外に出られて休めそうなところに案内してくれよ。』
『はぁ?なんで私が!?』
『旅は道連れってよく言うだろ。同じ聖者のよしみでさ。』
『悪い予感しかしませんわ。それに私も未だにこの世界をよく知らないので、そういうのは他の人にお頼みくださいませ!』
『それもそうか。なら……ほら行くぞ。』
『えっ、何故手を取っているのでしょう?……ちょっと私は行きませんわよ!』
『どうせヒマだろ。楽しいことは分けあわなくちゃな。』
『ええい、勇者であろうと、貴族と平民では身分の差があることを理解してほしいと以前から言ってますわ。』
『お前、この世界の貴族じゃないだろ?それにそんなこと言ったら俺の世界じゃ命あるもの皆平等だぜ。』
『ここはあなたの世界でもなくってよおおおぉ!』




