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命(後悔しないで…させないで…)

作者: ユジン

2008年 9月平穏な日…毎日、毎日、 過ぎていく。 今日が来て明日が来る。 当たり前の事と思っていた。 あの日、あの時…

「死」という宣告を受けるまでは… 私の名前は新山かなめ35才 夫 36才 長男 15才 次男 11才 の4人家族。 〜第1章〜 「受験生」 長男の翔太は今年受験生。 三年生にもなると、そろそろ進路が決まって来ます。 親も子もピリピリすることがあるのではないでしょうか。 うちの家族は何でも話し合います。 翔太はあまり勉強が得意ではなく、浮き沈みが激しい性格でもあり、つい、私の方が、ガミガミ言うと、お互い、行き違い、聞き違いがあり、喧嘩になります。 5月頃にも、 喧嘩になった時に… 「高校へ行かずに働きたい」と、 手紙にして伝えて来た事がありました。 親として、せめて高校へは…と思うだけに、すごくショックな事でした。 そんな話し合いの中、どんなに忙しくしてても、 私を支えてくれるのが、主人の存在でした。 父親というのは、偉大であり、頼りになるものです。 たかが16才の子供が就職するという事が、どれだけ大変か… 。 と、いう事実。 同級生が楽しく学校に通ったり、バイトしたり、 遊んだりする…普通の生活。 働く事は、高校卒業後で充分。 高校へ行かなければ…必ず後悔する。 必ず… 。 それを分かってくれた翔太は、その日から、やる気を出して頑張るようになりました。 〜 第2章〜 「いじめ 」 2008年 7月 あの子が命を経ったのは、蝉がミンミン泣く、暑い季節。

夏休みに入ってすぐの出来事でした。

私の親友の紗枝は中学1年の娘、貴枝ちゃんと二人暮らしでした。

7月23日 午後 7時過ぎ。

紗枝から自宅へ電話が入る。

「か…かなめ〜どうしよう〜 き…き…き…貴枝がね〜 死んだ… 。

」 受話器向こうで震えて話す、紗枝… 私も何が何だか分かりませんでした。

貴枝が死んだって…おとつい一緒にご飯食べたじゃん。

私には、 元気に笑う貴枝の姿… しか…思い浮かばない。

そうだ。

おとついご飯を一緒に食べた時、 トイレに立った紗枝を見届けると、貴枝がこう言った。

「 かなちゃん… あんね〜 うちね〜 」 真剣な顔をした半面、何か言いにくそうに… 「貴枝、どしたの? なんかあったん? なんかあるなら、何でも話しぃや」 と私は言う。

「ううん。

何でもないんよ」と貴枝は笑った。

そこに紗枝が戻って来た。

もしかして、あの時が最後のS0S だったのか… そう。

貴枝は自殺した。

その時は何が理由かも分からなかったけど、あの日の夜、私に何か伝えたかったのは事実。 私は自分を責めた。 あの時、 何で気付く事が出来なかったんだろう。 その日の夜、貴枝の部屋から一冊のNOTEを見つけた。 紗枝宛てに綴った手紙もあった。 NOTEには、 一日の出来事がびっしり書いてあった。 貴枝を死に追いやった犯人は

「いじめ」だった。 陰険な陰険ないじめだった… ??が川まで私を連れて行き、汚い泥水を口に流し込む。 学校に行けば、上履きは隠され… クラス全員に無視され… 給食の時間が終わる頃、残り物を集めた残飯を、食べろと言われ… しぶしぶ食べた。 気持ち悪い。 助けて… その日に勇気を出して先生に話したらしい。 先生が放った言葉は

「??さんは、そんな事するような子では、ないわよ〜 一応、声をかけとくけど、 クラスメイトを頭ごなしに悪く言うのは先生はどうかと思うなぁ」と言ったらしい。 ??さんのお母さんはPTA会長だから、先生は何も言えないんだ… 先生なんて大嫌い。 信用出来ない。こんな学校に私の居場所なんてない…。 「お母さんへ」

お母さん、この世に私を産んでくれて、一生懸命私を育ててくれたのに、先に逝く事を許してね。

貴枝は学校もいじめも勉強も、何もかも嫌になりました。

せめてお母さんやお母さんの友達が居て、楽しい事もあったけど、それ以上に学校でのいじめはひどく、辛かった。

苦しかった。

いつも、いつも死にたかった。

きっと死んだら天国には行けないね… でも今は生き地獄なんだよ… だから、私は死を選びます。

お母さん…お母さん…ごめんなさい… 。

涙の落ちた後で綴られた手紙を見て、私と紗枝は泣き崩れ、取り返しのつかない事の事実に、怒りと悲しみで体を震わせた。 いじめ… 絶対に辞めて。 何にもならない… 人を傷つけるだけ。 いじめられる子にも、問題はあるのかもしれないけれど… いじめで簡単に人の命を奪えると言う事… 考えて下さい。

〜第3章〜 「告知」 2008年 8月 子供達も夏休み真っ最中。

いろんな事がバタバタと過ぎた日々。

私は、近頃… 下腹部にチクりと痛むのが気にはなっていた。

1週間が過ぎた頃、まだ痛む。 夫にも進められ病院へ行く。 いろんなと検査をして、その日は帰宅し、2日後に検査結果の一本の電話。 「お話がありますので、ご主人とご一緒にいらして下さい」 … 。 えっ何で…何か悪い病気なの?と悪い予感がした。 次の日、夫と病院へ… 先生が言いにくそうに、口を開く。 「子宮癌です。 それもかなり悪い状態なので、すぐに入院を」 私は

「それって死ぬって事ですか? どれくらい何年生きられますか?」 先生は

「… 長くて半年…です。」 私は目の前が真っ暗になりました。 隣にいた夫が何やら先生に、訴えてる言葉すら、その時は何も聞こえない。 一人真っ暗闇に閉じ込められた感じでした。 病院から出た先の、静かな公園のベンチ。二人で腰かけました。 私は事実を受け止める事など出来ずに、 「 死にたくない…死にたくない…なんで?どうしてよ? 怖いよ…怖いよ… 」かなり取り乱しました。 まだまだ、やりたい事がたくさんある。 子供達に教えたい事たくさんある。 まだ母親が側にいないといけない年頃なの…二人とも… 。 これからどうすれば… 泣きじゃくるしかありませんでした。 そんな私を夫はしっかりと抱きしめて… 「 俺も一緒に逝こうか… 逝くよ…」と号泣していました。 二人で目が腫れ上がるまで泣きました。 夫の言葉を聞いた時、 本音は一人で死ぬより一緒がいいと… 本心はそう思った。 そんな事はさせられない。 子供達がいる。夫も子供達にも、未来がある。 残り少ない時間を精一杯生きていくと、胸に誓った一瞬だった。 一緒に死ぬと言った夫の愛の形に、私は心からありがとうと呟いた。

〜第4章〜 「愛する子供達」

2008年 8月10日 入院 子供達にも事実を告げた。 二人とも泣き崩れた。 夫が言った言葉と同じ

「一緒に死ぬ」と翔太も言った。 次男の亮太は私にぴたりとくっついて、離さなかった。 こんなに早くに逝ってしまう私より、こんなに早くに母親を亡くしてしまうこの子達の事を考えると、 胸が締め付けられるように苦しくて…痛かった。

翔太へ

こんなにも早くに逝ってしまうお母さんを許してね。 人並みで良いから勉強頑張って。 志望高合格すると良いね。 高校行ったら新しい友達たくさん作ってね。 楽しい高校生活送ってね。 今のまま、優しい人でいてね。 たった一人の兄弟だから仲良くしてね。 まだまだ伝えたい事はいっぱいあるけど… ごめんね。

亮太へ

甘えん坊の亮太はお母さんッコだったから、お母さんは心配です。

真っ直ぐ生きてね。

勉強もこつこつで良いから頑張って。

友達とも仲良くね。

お母さんは天国で見てるからね。

〜愛する子供達へ〜 〜お母さんより〜 生きたくても生きられない人もたくさんいる。 命を経つ人、 思い留まって下さい。 生きていれば、生きてさえいれば、時間が時代が過ぎ、変わるから。 命こそ、この世で1番の贅沢な宝物です。 だから… 今を生きてる人。 〜後悔しないで…させないで…

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― 新着の感想 ―
[一言] 同じ子を持つ親として、自分に置き換えて読ませていただきました。 命の大切さや子供、夫の大切さが伝わってきました。
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