作られた異世界
短編集です。
執筆は初めたばかりなので、文章などおぼつかないところがありますが、許してください。
土砂が舞うような激しい雷雨の中、ブレーキが効かないオンボロ自転車を必死に走らせる男子高生がいた。
彼はとにかく取り柄がない。
運動も勉強も普通、良くもなく、不可もなくと言った顔立ち。喋りはうまくなく、笑顔も武器にはならない。ひとつだけ言えるのは、彼女ができないからといって二次元に逃げたことだけだ。
だから、オタク系の文化に関してはとても詳しく、二次元大好きな男だった。アニメの話を振られると永遠に語り出してしまうような人間でもある。
そんな彼が、今とても必死に自転車を漕いでいる。もちろんクラスメイトは部活中。彼だけが帰宅部だった。
「家が聖地であります。学校は僕の才能を理解してもらえないであります。ゲームの女の子だけが僕の才能を分かってもらえるであります。」
そんなことをボソボソと永遠に呟きながら急いで帰る日々。
彼にとっては、今日も日常の中だった。
そして、懸命に自転車と足を動かせた結果、家の目前にある下り坂が見えてきた。
「やっと家の坂であります!やっとママに会えるであります!嬉しいであります!」
高揚して独り言を言いながらハイスピードで坂を降りていく。
自転車は彼の重みでキシキシと言いながら加速していく。
と、その時だった。
自転車が雨に取られ、スリップしてしまった。ブレーキは当然効かない。
は止まることを知らず、そのまま突き進む。いきなり目の前にはトラックが真正面を通ってくる。
「助けてであります!拷問であります!天誅であります!」
悲痛の叫びをあげる。彼の命はもって数分だろう。その数分を彼は生きるために使う。
最も、その叫びは雷雨によって搔き消された。
そして数分後、坂には鈍い音が響いた。
彼は死んだ。即死だった。頭の中ではゲームのキャラを考えている彼が死んでしまった。
彼は死んだ。それは周囲の「真実」だった。しかし、彼からみた「真実」ではなかった。
彼は奇妙な感覚に陥っていた。轢かれたあと、死んだ、そう思うといきなり身体が浮き出した。三メートルくらい浮き上がったあと、急に身体が回りだした。
「急に回るな!であります!目が回るであります!このままじゃ丸焼きであります!」
彼は何者か、よく分からない何かに夢中になって訴えかけた。
しかし、その訴えがうるさいと思ったのか、彼はさらに追い討ちをかけられる。
数分後には彼は完全に気絶していた。
目が醒めるとそこには独特な遊園地のような世界が広がっていた。
雲一つない青空。世界を照らす太陽。魔法で物を浮かせている人間。人間とは思えない顔立ちのゴブリン。目が大きい女の子。性格が天使な女の子が腐るほどいる。
彼は興奮しきっていた。
「こ、これは、異世界というやつでありますか!?」
半ば答えが出ているような質問を自分にする。それほどテンションが高いのだ。
「はい。ここはあなた様から見ると異世界、でございますわ。」
後ろから声がしたので彼は振り返った。
「誰でありますか?」
「私は、エミリアと呼びますわ。」
金髪でメイド姿の彼女はこう言った。
「そうでありますか!」
そう言いながら彼は胸の高鳴りを感じていた。
「どうですか?この世界のいろはを教えましょうか?」
「ありがとうであります!」
そう言って彼は飛び跳ねた。
やっと拙者のターン、と思いながら前を向いた。
「では、行きましょうか。」
そうエミリアが言った。表情はあまり見ることができなかった。
そして、彼は歩きはじめる。一歩目、足が地面についた瞬間、世界が眩しくなった。彼の世界に光が差し込んでくる。
そして、彼の世界は終わりを告げた。
起きると学校の席に座っていた。授業は終わっていて、休み時間になっていた。
マジか、と落胆し、もう一度夢のつづきが見たいために寝る。
彼の周りに一人、想いを寄せていることを知らずに。
解説の前に、私は異世界転生などは見たことのないので「偏見」になりますが、どうしても「妄想作品」の域を抜けない感じがします。
そして、読者の方も大多数が「妄想作品」を通して、「自分がこの作品の中に入ったとしたら」ということを考えているように思えます。まぁ、偏見ですが。
(自分も小さい頃そんなことばかり考えてましたしね......)
これを投稿したら、少し異世界系統も挑戦してみたいな、なんて思ったり思ってなかったりしてます。
そして、この話のオチは「居心地が良い妄想に浸りすぎて、現実がおろそかになっている」というオチのつもりでした。
面白くなさそうですが、もし面白かったりしたらブクマや、評価などお願いします。
手厳しい評価も待っています。
最後に、私は同族嫌悪する時があると、自覚しています。