第一章 第六話『冒険者とステータス』
『冒険者』の説明回です
ジョンが冒険者ギルドに入ると、この前よりロビーは騒がしかった。
十人以上の冒険者が集まっていて、依頼の書かれた板を取り合って言い合いをしていたり、報酬受け取りで職員とやり合っていたりと喧騒の中にあった。ジョンには苦手な喧騒だったが、活気があって見ている分には楽しい場所だった。
そんなロビーを確認するように周囲に視線を走らせると、掲示板の横の壁に寄りかかっている男がいた。何故その男が目に付いたのかよくわからない。ただ、二十歳ほどと思われるその男がジョンの視線に気がつき、顔を上げてジョンに向かってニコッと笑って手を振った瞬間、全身にぞわっと悪寒が走り鳥肌が立つ。気持ち悪い感覚にすぐに男から視線を外して、早足でカウンターに向かってしまう。
カウンターには、この前と同じ女性が座っていた。ジョンに気が付くと立ち上がり、お辞儀する。
「お待ちしておりましたぁ。さあ、あちらの通路から奥にお進みください」
「どこに行けばいいんですか?」
割符を渡しながら、女性に質問する。
「通路の奥に階段があるからぁ、そこから二階に上がってすぐ左の部屋よぉ。今日の定員はもういっぱいだから、君が最後の一人。部屋に行ったらすぐに始まると思うわぁ」
女性が先を促し、言われた通りに進んでいく。
たどり着いた部屋は広い部屋だった。幾つもの机が並び、既に集まっていた冒険者志望者の視線が一斉にジョンを向く。そこには、歴戦の戦士といったふうの屈強な男や逆にひ弱そうなひょろ長い男、男顔負けのガタイのいい女や踊り子のようにひらひらした服装を着た女など様々な人がいた。
「なんだ! またガキじゃねえかっ! 冒険者はいつからガキの遊び場になったんだ!?」
屈強な男がジョンを見るなり罵ってくる。顔には侮蔑の色が浮かび、明らかにジョンを見下していた。だが、ジョンも冒険者然とした風貌の集まった部屋に入った瞬間、場違い感を受けたので、特に反論はぜず、空いていた席を見つけてはそこに腰を下ろす。
「あっ、無視か? いい度胸じゃねえか!」
屈強な男がいきり立ってジョンの方へ向かおうとするが、それより早く一人の女性が入ってきた。鋭い視線を屈強な男に投げかける。
「なんですか。ギルド内は私闘は禁止ですよ。席に戻りなさい!」
責めるような視線に気を削がれた男は素直に従い、席に戻っていく。
戻ったのを確認してから、女性は部屋の前方中央に立って自己紹介を始める。
「これより、冒険者登録を始めたいと思います。私は本日の監督を務めますフリーダ=オトマイヤーと申します。以後お見知りおきを」
フリーダと名乗った女性は二十代後半くらい、濃い青を基調としたドレスを着込んでいて、メガネをかけた、触れば切れそうな鋭い印象を受ける女性だった。その衣装を見た時、ジョンはそういえば受付の女性も同じようなドレスを着ていたことを思い出す。緊張していたせいか、あまりはっきりとは見ていなかったなと改めて思う。
「ではまず、こちらの紙をご確認の後、署名をしていただきます」
そう言ってフリーダ嬢が取り出したのは一枚の紙。それを机の上に乗せ、横にペンを置く。
「こちらは誓約書になります。内容をお読みになって、了承いただけたのならその下の空白にご自身の名前をお書きください。字が書けない場合は、私が代筆いたしますので御遠慮なくお申し出ください」
その言葉で、ジョンを含めた皆が紙の乗せられた机に集まっていく。近い者から紙を確認して、署名していった。
ジョンも紙を覗き込んで、書かれた内容を確認する。そこには、『冒険者として命を懸ける覚悟がある』ことを確認する文言がいくつか箇条書きで列挙されていた。一つ一つ確認していき、まあこういうのは必要だよね、と納得して署名する。
だが、そんな中……
「俺は力自慢のバルドフ!」
屈強な男バルドフが腕組み仁王立ちで、フリーダ嬢に直接食ってかかっていた。
「俺はこれまで幾つもの戦場を戦ってきたんだっ。今更、冒険者なんぞの適正を調べなきゃならんほど弱くねえんだよ! さっさと冒険者にしっ……!!」
勝手に喋っているバルドフをフリーダ嬢がキッと睨みつけた瞬間、バルドフの言葉が止まった。そして、今までの勢いは何処へやら、そのままバルドフは気圧され、ちらっと周囲に視線を向けてからこのままでは分が悪いと感じたのか、渋々紙に名前を書き込んだ。
バルドフが書き込んだ後、フリーダ嬢が全員の名前があるのか確認していく。もし、名前が書かれていない者がいた場合、その人はその時点で冒険者になる気はないと判断され、部屋から追い出される。
全員の名前があることを確認できると、その紙を丸めて用意していた筒に仕舞い込んだ。
「皆様に覚悟が有ることが証明されましたので、これより適性検査を実施いたします。もし、適性がないと判断された場合、申し訳ございませんが冒険者にすることはできません。その点、ご容赦を。では、お一人ずつ隣の部屋へ」
そう言ってフリーダ嬢は一人の名前を呼び、連れ立って隣の部屋へ移動していった。ただ、待っている間に何をしていればいいのかは言わなかったので、残された者達は思い思いに時間を過ごし始める。
ジョンも手持ち無沙汰になった。
知り合いもおらず、することもない。いつ名前を呼ばれるのかも言われなかったので、無為に時間を過ごしているような感覚になり、なかなか時間が進まない。なので、他の志望者を観察しようかな、と思った矢先。
「なあ、お前も冒険者になるのか?」
ジョンと同じくらいの少年に声を掛けられた。
その子を見た時、ジョンが入ってきた時のバルドフの反応の理由を理解した。
少年の身なりがそこまで悪くないのだ。食うに困った浮浪少年がとりあえずの食い扶持を求めて冒険者ギルドを訪ねてきたようにも見えない。この少年の後に自分が入ってきたら、そりゃああんな風に感じても仕方がないのかもしれない。
「そうだよ。君もそんなんだろ?」
年が近そうなので、ジョンも砕けた口調になって話す。
まあな、と少年も返事して、改めて自己紹介を始めた。
「俺はバンってんだ、よろしく。いやー、お前が来るまでおっかなかったぜ。周り全員やばい雰囲気撒き散らしててさぁ」
「俺はジョンだ。こちらこそよろしく。見てたと思うけど、俺も入った時絡まれそうになったからなぁ。ところで、これから何するかバンは知ってるか? 冒険者になれるかもしれないって聞いて来たんだけど、よくは知らなくて」
「いや、俺もあんまり知らないんだ。ほんと、これから何するんだろな」
「バンも知らないのか。じゃあ、名前を呼ばれるまでおとなしく待ってるしかないのか」
「わかんないものはしかたねえよ。それよりさ、冒険者ってかっこいいよな!?」
それから二人は情報交換とは名ばかりの世間話を始める。
周囲を怖い大人に囲まれて緊張していた反動か、バンは饒舌だった。この歳で冒険者になろうとするなんてよほどの事のはずなので、互いに冒険者になろうとしたきっかけやどんなことがしたいかを話していくのだが、バンはただ冒険者がかっこいいという理由で冒険者ギルドの門を叩いたという。その理由はどうなのかと思いつつも、ジョンの方もバンと話すことでだいぶ緊張がほぐれてきたので、まあいいかと流すことにする。
そのうち、バンの名前が呼ばれ、バンが戻ってくると続いてジョンの名前も呼ばれた。
バンと入れ違いに部屋を出て、隣の部屋へ入る。
そこには、フリーダ嬢と何か物々しい物体が鎮座していた。"それ"は、部屋の半分を占領していて、入口正面から奥に縦長い空間を作っていた。そんな物々しい物の横にフリーダ嬢が座っており、その前に丸椅子が置いてある。
「どうぞ、こっちに座ってね」
ジョンが丸椅子に座ると、じゃあ、始めるわね、と物々しい物を触り始める。
「……それは何なんですか?」
「"これ"?」
「はい。見たこともないものだったので」
「これはねぇ、冒険者の適性を調べる魔機よ。これから、貴方の血をこれに掛けて魔力を通すの。それで貴方の血に宿った記録を読み解いて、今の貴方の力を数値化するのよ。まあ、それ以上の詳しい説明はできないからそういうものだと思って。じゃあ、手を出してね」
魔機とやらの準備が終わったのか、フリーダ嬢が針を片手に、ジョンに手を出すように言う。
ジョンが手を出すと、指先にチクッと針を刺して出血させる。それを万年筆のように先が少し別れた細長い器に数滴垂らす。血を採集し終わると、布を当てて止血する。
「はい、もう大丈夫よ。戻っていいわ。あとはこの血を魔機に掛けるだけだから」
最初の部屋に戻される。
戻るとバンが話しかけてきた。
「なんかすごくなかったか!? あれ! なんかよくわかんなかったけど、かっけかったわ! ジョンもそう思うだろ!?」
魔機がどういうふうに強さを数値化するのかよくわからなかったが、なんとなくあの物々しい物の雰囲気に飲まれて、ジョンもすごいとは感じていた。
「確かに、あれは凄かったな」
それから直ぐに、フリーダ嬢が部屋に戻ってくる。隣の部屋で見たような砕けた印象はなく、鋭い印象に戻っている。
「これで皆様の適性検査は終了です。結果が出るまで時間が掛かりますので、その間に冒険者になった時の心構えとギルドの依頼の受け方、ギルドカードについて説明いたします。ご静聴を。まずは冒険者から……」
この世界での冒険者の定義は、『冒険者ギルドに所属し、依頼をこなして生活の糧を得ている者』である。反対に、冒険者ギルドに属さずに依頼をこなしている者は冒険者ではなく傭兵と呼ばれる。
依頼の中には危険と隣り合わせな事も多い。冒険者となったなら依頼に失敗するとしても『生きて帰る』を肝に銘じておかなければならないと説明していく。
「死んでしまっては元も子もありません。冒険者として大成したいのならまず、依頼を成功させること以上に死なないことを第一に考えてください。次に依頼の仕方ですが……」
ギルドに来る依頼は全て、ロビーの横の掲示板に掛けられる。冒険者は、その中から自分の実力に見合ったものを選んでカウンターへ持って行き、ギルドの方で依頼内容と実力が釣り合っていると確認できれば晴れて依頼を受けたと受理される。依頼には強さの目安となる数値が表記されていて、そこから大幅にズレのある者が依頼を受けようとしても受けられないのだ。ただ、その辺りはギルド職員の裁量の範囲である。
「弱かったり慣れていないうちに難しい仕事を受けて亡くなる冒険者は多いのです。ですので、極力そうならない様、取り計らっております。また、偶にですが依頼の中には虚偽のものもございます」
ギルドは、依頼内容には細心の注意を払っている。適当だと思っていた依頼で冒険者に死なれるような自体になったらギルドとしても不本意だ。だが、その裏をかくように嘘の依頼が紛れ込むことがある。
そういった依頼は表記された目安以上の危険を孕んでいる場合が多々だ。だから、ギルドとしてもそういったものを発見した際は、直ぐにギルドに知らせて欲しいと伝えてくる。
「その場合は、依頼の破棄及び依頼者から冒険者への補填をさせますので、どうぞお気軽にお申し付けください。依頼者の方へは、補填とは別にギルドの方から相応の対価を支払っていただきますので、ね?」
ニコッとフリーダ場が笑う。
その瞬間、その場の全員の背筋が凍った。ゾクッとするような寒気を感じた気がして、逃げ出したくなる。
ジョンも蛇に睨まれたカエルのような恐怖を感じて、その時点でフリーダ嬢には絶対逆らわないほうがいいだろうなと思ってしまう。
「さて、最後になりましたがギルドカードについて説明いたします。まずはこちらを」
また鞄から小さな板を纏めた物を取り出した。一枚ずつバラバラにして志望者達に配っていく。
それは掌程の薄い板だった。表面に光沢があり、ぱっと見、金属製かな? と思うような物だったが、受け取った志望者の中にカードを曲げようとする者がいたが、ピクリとも動かない。力自慢していたバルドフにも曲げられず、力の込め過ぎで顔を真っ赤にしていた。下手したら、これ単体でも武器にできるほどの硬度がありそうだ。
「それは冒険者として登録された者に配られるギルドカードの見本になります。ギルドカードには冒険者としての『レベル』。名前と年齢、職業の他に各々の強さを数値化した数字の欄。こちらを『ステータス』と言います。そして、『スキル』と『特殊スキル』の欄。最後に備考の欄がございます」
ジョンが見本のカードを見ると、上段左に大きく正方形の空間があり、そこに『レベル』と書いてあった。その横に名前と年齢、職業の欄があり、『レベル』の下に八項目の数字が書かれた欄がある。これが『ステータス』なのだろう。
「まず『ステータス』には、以下の八項目がございます。各項目の説明はこちら。
『筋力』……身体能力の高さ
『体力』……持久力や回復力の高さ
『器用』……細かい作業や動作の正確性
『敏捷』……素早さ(正確性は含まれない)
『知力』……判断力や計算能力、物覚えの速さ(知識量等ではない)
『魔力』……目に見えない力の量
『精神』……集中力、物事に対する対応力
『魅力』……容姿や言動等の人を引き付ける力
『ステータス』は各個人の強さなので、皆様ごとに数値はバラバラになります。また、表記される数字は『現在の』皆様の強さです。冒険や鍛錬を続ける事で数値が上昇したり、逆に怠けることで数値が下がったりすることもございます。その事をしっかり覚えておいてくださいませ。
それから『レベル』。これが、冒険者としての強さの目安となります。
『レベル』は皆様の『ステータス』の合計から算出され、純粋に高ければ強く、低ければ弱いことを示しています。また、先程も申し上げた通り『ステータス』の上下で『レベル』も上下いたしますので、『レベル』が高くなったからと怠けていますと、気づいたときにはかなりの『レベル』低下が起こっていた……なんてことも実際にありますので、お気をつけください」
それから、『スキル』と『特殊スキル』。
これらは、魔力を使う技能を表記するものだ。
例えば、魔術師が使う『ファイヤーボール』や治癒術師が使う『ヒール』などで、魔力を使わないあるいは自動で使っている類の技能は表記されない。俗に言う『パッシブスキル』は書き込まれない。
「最後に、『ステータス』の更新について。
『ステータス』は数値を測った時の数字です。それから先、冒険や鍛錬、逆に怠けて数値が上下していても更新しない限り、数字は変わりません。
ですので、依頼を受ける際、もしくは依頼達成の報告時などに冒険者ギルドにて数値を更新することができます。それに伴い、『レベル』も上下しますので、今まで受けられなかった依頼が受けられるようになったりすることもございますので、こまめな更新を心がけてくださいませ。逆に、『レベル』低下を起こしているのに更新を怠り、危険にさらされるような者はその時点で冒険者失格だと思ってください。
以上を以てギルドカードの説明は終わらせていただきます」
深々とお辞儀する。
その時、一通りの説明が終わるのを待っていた他のギルド職員が部屋に入ってきて、フリーダ嬢に耳打ちをする。こちらも濃い青の衣装を着ていたので、やはりあの衣装は制服なのだろう、と場違いな感想を抱いてしまう。
フリーダ嬢は頷いて、部屋にいる全員の顔を見渡した。
「皆様の適性検査の結果が出たようです。これから、別室にて個別に『ステータス』の確認とギルドカードに記載する職業を決めますので、呼ばれた方は別室に移動してください」
今度は一人ずつではなく、複数人で同時に行うようだった。数人が呼ばれ、纏めて別室に移動していく。
そのうちジョンも呼ばれ、別室に移動する。そこは、魔機があった部屋より狭いが、あんな物々しい物が置いてない分広く感じる部屋だった。部屋の真ん中にフリーダ嬢が座り、その前にまた丸椅子が置いてある。
だが、それだけではなかった。
ジョンが入った部屋にはもう一人見知らぬ男が立っていた。壁際に寄りかかり、じっとしている。
「さあ、ジョン君。ここに座ってね」
フリーダ嬢が椅子に座る様に促す。
促されるままに椅子に座ったジョンだったが、やはり壁際の男が気になった。だが、あの人のことは気にしないで、とフリーダ嬢に言われたので、男がなんなのかよくわからないジョンは言われた通りにすることにした。
「それじゃあ、君の『ステータス』を確認していくわね。
まずは総合的な『レベル』からね。すごいわねぇ。冒険者になったばっかりなのに、もう十一もあるわ。普通の一般の男性ならだいたい五~六ぐらい、女性なら三~四くらいが平均なんだけど、本当に十三歳なのか疑いたくなる強さね」
そう言われてもジョンにはピンと来ない。
「そうなん……ですか? 自分のことを言われてるのはわかりますけど、なんだか実感のわかない話ですね」
「まあ、最初からこう強い子は少ないわね。なにか昔から鍛錬してきたんじゃない? 兵士だったり傭兵だったり戦うために鍛えている人ならそれなりに高い『レベル』だったりするから」
それでようやくピンとくる。
「そうですね。昔、冒険者に助けられてからずっと冒険者になるために鍛錬してきましたから」
「やっぱりね。それで、肝心の『ステータス』なんだけど……」
ジョンの『ステータス』
『筋力』……平均的
『体力』……平均的
『器用』……高い
『敏捷』……高め
『知力』……高め
『魔力』……平均的
『精神』……高い
『魅力』……高い
※ここの大きさは冒険者になったばかりの者の強さの平均値に対して、である。
「『筋力』『体力』ともに冒険者としては平均的ってところね。戦士系を名乗るには弱いと言わざるを得ないわ。前衛職には向いてないわね。
逆に『器用』や『精神』、『敏捷』が高いわ。手先が器用で集中力もあり、素早くもある。この辺りは、パーティーには必須と言える盗賊系の職業を名乗っても問題ないわね。
『知力』は高めだけど『魔力』はそこまで高くないから魔術師系を名乗るには弱いかもねぇ。まあ、鍛えてモノにできないってほど低くはないけれど。全体的には、後衛職や支援職が向いていると言えるわ。
……今の話を聞いて、何か思いつく職業はあるかしら?」
そう言われて考えてみる。
今まで、剣の鍛錬はずっと続けてきた。だが、今回の適性検査で向いていないと簡単にはっきりと言われてしまった。
だったら、自分は何に向いているのだろうと改めて考えてしまうが、よく考えなくても一つだけ思いつくものがジョンの中にはあった。
「……狩人……なんて、アリですか?」
村にいた時、マクシーにずっとマリーとくっついて自分の跡を継がないかと言われていた。両親の手前頷けなかったが、狩人として森に入っている時はすごく開放的な気分になった。気持ちが大きくなり、森の隅々まで感じ取れる気さえした。現に、目に見えなくても何がどこにいるのか感じ取れていた。
「狩人? ああ、狩人ね。確かにこの『ステータス』なら名乗るにも十分な強さがあるわ。そういえば、君は『木の神の加護』持ちだったわね」
「『木の神の加護』?」
「そうよ。人には珍しいんだけどね。例えば森の中とか、植物の多いところでは普段と違う感覚になったりしない?」
思い当たることしかない。
ついさっきも森に入った時に開放的な気分になるとか思ったばかりだ。今まで何故そういう風に感じるのが不思議だったのだが、そうか、俺がそうなるのは『木の神の加護』があったからなのか、と妙に納得してしまう。
「後、加護持ちは教会で『祈祷』を習えば、治癒系の『ヒール』なんかも使えるようになったりするから、機会があったら習いに行くといいわ。
それはそうと、この『ステータス』なら狩人を名乗っても何の問題もないけど、職業はそれでいい?」
「お願いします」
なんとなく、早く帰ってマクシーに自慢したくなった。何度も跡を継がないかと言われていたが、今回の件で後に続くのではなく、マクシーと肩を並べられたような気がした。
「それじゃあ、これで職業決めは終了。ジョン、あなたは冒険者になれるだけの実力があると認められたわ。おめでとう」
「ありがとうございます!!」
「……話し合いは終わったな?」
フリーダ嬢の言葉にジョンが感動を覚えて嬉しさを爆発させようとした瞬間、冷や水を浴びせるように唐突に、壁際にいた男がしゃべりだした。今までの話し合いの間ずっと黙ってなんの反応も示さなかったので、途中から男の存在を忘れていたというのに。
「ええ、もう十分よ」
「ならよかった。ジョンといったな。普通ならここで終わりなんだが、君に関してはある意味ここからが本題だ」
男の言葉にだんだん不穏な空気を感じてしまう。眉をひそめて、訝しげに男を見る。
「……なんですか?」
ジョンの問いかけに答えず、フリーダ嬢と交代してジョンの前に座る。
ジョンと正面から向き合うと、男は言った。
「ジョン、うちのギルド職員にならないか?」
「………………………はい?」
現実に、自身の能力を測ることができるならどういう風になるか、を考えた結果がああいうものになりました。
項目は自分の知っているゲームの中から、現実的な分類を選んだつもりです。
そして、数値は努力すれば上がり、怠ければ下がる。現実ならこうなるだろうなっと。
ただ、これが受け入れられるものなのかははっきり言ってわかりません。
読んでくださった人で、疑問や違和感などを持った方がいましたら、感想をください。(評価とかしなくてもいいので)
客観的に、多角的に見ることができたなら、もっといい形に出来るかもしれませんので。
お願いします。<(_ _)>
あと、細かい数値は考えるのが大変なので、出ません。