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第六幕 嵐前静穏 話の真偽は?

龍清のように日常 学校編 part2です。

ですが後の話への一幕も含まれてます。

伏線じゃないよ、奏で伏線じゃないのよ、大事なことなので二度言いました。(白々しい)

「うぅ、まだ顔がひりひりする……」


 支度を整えて登校しても、まだ今朝の仕掛けの痛みが仄かに残る龍清は、顔を手で覆う。

 とはいえ、今朝に比べればだいぶ痛みも引いてきている。鏡を見た時等、命中した部分がくっきりと真っ赤になっていたのだから。


「…………」


 とはいえ、龍清はその元凶たる祖父に怒りを覚えるでも、諦めを抱く余裕もない。今朝の夢が頭から離れないのだ。


(何だったんだろう……あの夢。一体、何が起こるっていうの)


 今までとは何かが違う不気味な夢。思い出すだけでも、不安と恐怖が全身を包むように感じられる。

 加えて数日前からたびたび感じる悪寒。まるで獲物として付け狙われる草食動物に似た寒気を感じずにはいられず。それが不安を煽り立てる。

 嫌な事、考えたくない事が頭に浮かび、消しても消しても却って悪い事ばかり考える、そんな悪循環に半ば陥り始めていると。


「……龍清君?」


 名前を呼ばれて振り向くと、そこには心配そうに見つめる小雪の姿があった。


「どうしたの龍清君? 何だか顔色悪いけど……」


「えっ、そう……?」


 首肯する彼女に思わず顔を触って確かめようとするが、当然手鏡の類などあるはずもないので解ろう筈もない。

 とはいえこのまま心配してもらうのも申し訳ないので、向き直って弁解する。


「だ、大丈夫だよ。ちょっと占いで悪い結果がでちゃって、気にしてただけだから。本当、それだけ」


「そう? それならいいんだけど……」


 それでも訝しげにこっちを見てくる。龍清本人は気づいていないが、顔はいつもより引き攣ってる感じだ。

 すると今度は、潤と霜谷が二人のもとにやってきた。


「どうしたんですか?」


「なんだなんだ? 遂に龍清の頭になんか生えたか?」


「僕の頭はキノコ栽培用の木の幹じゃないんだからね?」


 ジト目で睨む龍清など気にも留めず、相変わらずカラカラと笑う潤に、霜谷と小雪は苦笑、龍清はため息を吐きたくなる思いだった。


「あのね、龍清君が何だかいつもより元気ないみたいで」


「いや、そんなに心配しなくても大丈夫だからさ」


 龍清はあくまで心配掛けまいとするが、三人からの視線は、やや彼に不利な感じであった。


「……まあ、何があったのか詳しくは聞きませんが。あまり思いつめない方が良いと思いますよ?」


「そうそう。大体お前はネガティブ過ぎんだよ! 人間前向きに考えないと、本当に悪い事ばっかりになっちまうぜ」


「潤君のは前向きって言うより、楽天的って気がするけどね……」


 苦笑しながらつぶやく小雪に「同感です」と頷く霜谷、そしてそれに反論する潤。

 そんな友達の様子を見ていると、さっきまで悪い事考えてた自分が恥ずかしくなってくる思いだった。


「……ありがとう」


 聞こえてるかどうかわからないが、龍清は気が楽になった思いだった。

 が、すぐに潤が別の話を切り出してくると、その思いもまた霧散してしまう。


「おっ! そういえば龍清。お前に聞きたいことがあるんだけど……」


 その瞬間、潤以外の三人の顔は一転、苦笑と呆れの表情に変わった。


「今度は何を探すつもりですか? それとも、この間の幽霊をまだ探そうっていう気じゃ……」


「ちょっ!? ちげえって! 今度は本当に聞きたいことがあるから聞くだけだっつの!! ったく、そんなに俺信用無いのか? 悲しくなってくるぜ……」


「「「散々僕(私)達を振り回しておいて、それは無いんじゃないかな?」」」


「ひでえ!!?」


 異口同音の三人に『ガーン!』って擬音が付きそうな反応をするが、思い当たる節もありまくりなので、潤もそれ以上は何も言えない。


「……で、僕に聞きたいことって何?」


「ああ、これなんだけど……」


 携帯の画面に映し出されたのは、潤がよく見る心霊現象に関連したこの町の掲示板サイトだ。

 その中に、「真夜中の突然死! 犯人は人か、物の怪か!?」と書かれた題名のスレッドがあった。

 それによると、ここ数日の間に、真夜中を歩いている人が突然その場に倒れ、死んでしまう出来事があったというのだ。

 その中で目撃情報に関連した書き込みを読んでみると、「人の影が近づいたら突然倒れた」だの、「後ろから不気味な何かが襲った」だの、いまいち要領を得ない物ばかりだった。

 その為か、やはり否定する意見も多いようだ。


「なあなあ、専門家として、こんなことってあるのか?」


「だから、その専門家っていうのやめてよ……」


 ここにいる三人は、龍清が陰陽師の家の者だという事は知っている。

 無論、夜の調伏の御勤めの事は秘匿しているが、それでも、この手の話では三人(特に潤)に聞かれる事は多いのだ。


「前にも言ったけど、陰陽師が妖怪とか悪霊を祓うのはフィクションの話。本来は占いとか祭祀とか、そういう事を司る物なんだからね」


「でもさ、この手の事に関して一番詳しいのはお前しかいないじゃん?」


「それは、そうだけど……」


 陰陽師の家の蔵書の中には、妖怪の類を記した古文書や書物は少なくない。

 龍清もそういった物に目を通してるので、潤の言葉もあながち間違いではない。実際に目にしたことはないが。


「潤君。あんまり龍清君を困らせたら駄目だよ」


「大体、それを聞いてどうするつもりです? やっぱり、探しに行く気ですか?」


 やがてしつこい彼を見かねて、小雪と霜谷が割って入る。

 霜谷の「やっぱり」って言葉に、少し心外だという顔をしながら、潤は話を続ける。


「さすがに俺だって、自分の命に関わるようなのに首を突っ込まねえよ。でもよ、お前らもニュースで見ただろ? 致命傷になるような傷も持病もないのに、夜中にぽっくり死ぬなんてよお」


「過労死とかじゃないんですか? 確かに不審な点もいくつかありますけど、外傷も持病もないのなら、それが一番現実的だと思うんですけど」


「そうだよねえ……龍清君?」


 ここで小雪は再び龍清の様子がおかしい事に気づくが、龍清本人はその事に気づかない。


(悪霊の仕業……じゃないよね。いくらなんでも急すぎるし……)


 未練などを残して現世に残り、彷徨い続ける霊魂は、次第に「澱み」と呼ばれる滞った気を溜めていき、やがて自我を失って悪霊へと変異するのである。

 悪霊は人に害を為す様になり、所謂ポルターガイストや、憑りついて人を衰弱させていき、憑り殺してしまうようになってしまう。

 だが、その場合は溜め込んだ澱みの量等にも比例するが、長くてひと月近く、短くても2週間程の時間を掛けて相手を憑り殺すもので、目についた相手を突然死に至らしめるという事はまずない。


(もしかして……いや、でもまさか……)


 此の時、龍清にはどことなく心当たりに近い物を感じ、ついさっきまで消えていた不安が、再び彼の中で燻り始めたのを自覚せずにはいられなかった。

次回からはいよいよ物語が進みます。

そして次回は……どーしてこーなったんたろー(怪しい)

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