第二幕 疾風迅雷 少年と少女の出会い(1)
四神伝奇、第二話、今回は主役その2が登場します。
さあて、今宵、龍清にどんな受難が待ち受けているのか?(えっ?
「さーてと、どうしてくれるんだ。あっ?」
(どうして、こうなるんだろう……)
人気の少ない場所で三人の男に詰め寄られてる今の状況に、龍清は混乱や恐怖より、寧ろ諦めの感が強かった。
昼休みも午後の授業も何事もなく終わり、潤が諦めつかないように誘ってたものの、やんわりと断って帰宅の途についたのだが、歩いていると、目の前からこの三人が来たので避けようとした。
すると突然、一人がわざとらしくぶつかってきて、しかもこれまたわざとらしく痛がった。その後はあらかじめ打合せしていたのだろう、軽く頭を下げて去ろうとした龍清の腕を掴み、そのまま人気の無い路地裏に連れ込み、今の状況の完成である。
「おい、聞いてんのか小僧!」
「聞いていますよ」
「てめえ、自分の立場が解ってんのか、ああ!?」
抑揚の無い受け答えが逆なでしたのか。いや、この手の相手はどんな態度でもこうだろう。
普通の人なら怯えるか反発するかするだろう。しかし、この手の事に巻き込まれることも少なくない龍清にとっては、割とよくある事なのだ。
あまり嬉しくはないが、こういう時にどうするかは既に見当がついている。
「ほら見ろ! お前がぶつかった所為で連れが痛がってるじゃねえか!!」
「お~、いてて。骨折れた! これ絶対折れてるって!!」
「解りましたから。どうしろっていうんですか?」
あからさますぎるオーバーリアクション。しかし下手に反論してもどうせ力づくで来るのに決まってる。
相手の狙いも決まってる。そう思って龍清が制服のポケットに手を突っ込み、中の物を取り出そうとした。その時だった。
「そりゃあお前……げふっ!?」
『……えっ?』
その場にいた全員が突然の事に異口同音となる。
突然リーダーと思われる男が真横に吹っ飛び、とんだ方向と逆の方向に向くとそこには、宙を一回転しながら着地する人影があった。
「ったく。どこにいてもいるもんねえ。こういう連中」
どこか呆れるような口調のその人物は、腰に握りこぶしを当ててカツアゲの三人を見据る。
その声音からしておそらく女性だろう。しかも背丈から言って、小雪と同年代か、プラスマイナス一つと言った感じの少女と言う印象だ。
ただ、着ている衣装は酷く簡素で、袖や裾はもとより、いたるところが破けているようだった。
「てめえ、何しやがる!」
リーダー格の男が怒号を上げながら起き上る。しかも漫画さながらに近くのポリバケツに顔を突っ込んだらしく、頭から生ごみを被っていた。
突然吹っ飛ばされれば誰だって怒るだろう。だが目の前の少女は悪びれる様子もなく、目の前の三人に反論する。
「それはこっちの台詞よ! よってたかって弱いもの虐めなんて、恥ずかしくないわけ?」
「はぁ? 何言ってんだてめえ? それより人を蹴っておいてごめんの一言も言えねえのかよ?」
「それこそ何でよ? 第一、あんた達みたいに自分より弱そうな奴しか相手に小悪党に下げる頭なんて持って無いの!」
「何だと、この女!」
三人のうちの一人が少女に向かって殴りかかる。
見るからに自分より体格が良いであろうその男の拳は、しかし少女は苦も無くそれをかわし続ける。
「こんなもん? やっぱ弱い者いじめしかできないわけね。全然へなちょこだ」
「こいつ、言わせておけば……」
再び男の一人が殴りかかろうとするより早く、少女は身を屈めたかと思うと、相手の腹部に拳を打ち込んだ。
見るからに少女の腕は細く、殴っても然程ダメージなど入らないように思える。
しかし、予想とは裏腹に、男は前のめりに倒れた。
「うっわ、弱すぎ。見かけ倒しもここまで来ると呆れを通り越して感心するわ」
「この野郎!」
二人目が遅いかかってきても少女は全く動じない。
即座にまた身を屈めたかと思うと、今度は相手の足を払った。
それにより体勢を崩して倒れ込んだ男がちょうど仰向けの体勢になったそこへ、容赦なく鳩尾に自分の肘を叩き込んだ。
「がっ……!?」
その瞬間、相手の気を失ったのを確認した少女は、最後に残ったリーダー格に向き直る。
「さて、残ったのはあんただけだけど。大人しくあたしの説教受けるなら……」
「調子のってんじゃねえぞこのやろう!!」
怖気づくどころか逆上したように遅いくる男の手にはカッターが握られていた。
「あっ、危な……」
「往生際わる……」
龍清が注意するより早く、突きつけてきたカッターをあっさり避けると、少女は思いっきり足を蹴りあげる。
その足先が捉えたのは、男の股間部分。
「〇☓△!☆?#$@」
「う、うわぁ……」
男性の象徴を蹴りあげられた相手はカッターをあっさり落とし、股間部分を押えて蹲るのを見て、龍清も思わず眉を顰め、同情の視線を向ける。
そして男の勲章を蹴りあげるという暴挙を犯した張本人はと言えば、さっき使ってもいなかった手をパンパンと叩いている。漫画などでよく見る、一段落した時の仕草だ。
「さあてと、こういう奴らにはびしっと言ってやらなきゃって爺ちゃんが言ってたしね。徹底的に……」
「く、くそ……覚えてやがれ!」
少女が何かするより早く、片や股間を押えた情けない姿で、肩や未だ気絶中の仲間を担いで、相手は逃げ去って行ってしまった。
「あっ、待ちなさいって! ……ま、別にいっか」
「あっ、えっと……」
目の前で起こってた事態が収束したので、若干戸惑いながらも目の前の少女にお礼を言う為近づこうとした。その時……
バタッ!
「……えっ!?」
突然、少女がその場に倒れてしまい、またしても突然の展開に困惑を隠せない龍清。
「えっ! ちょっ……だ、大丈……」
グゥウウウウウッ!!
「…………」
しかし直後、彼女の腹の辺りから聞こえてきた虫の音に、一気に脱力感が龍清の双肩に襲い掛かるのであった。
はい、この時点で正体わかった人もいるでしょうが、ネタバレを防ぐため、名前は決して出さないでくださいね?
・荒らし、罵詈雑言厳禁!
・表現に気を付けてね。
・ご指摘、御意見は出来れば具体例を
以上を最低限守って、楽しい感想をお待ち申し上げます。
なんかテレビでは、モラハラなどと言うのが流行ってる(違)ようですが、お互いに不快な思いをしない為に、なにとぞ、よろしくお願いします。
さて、次回は龍清とこの少女の出会いの話、もうちょっと続きます。