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第十幕 起死回生 希望は光と共に


 ありきたり? マンネリ? それがどうした!(某そばかす提督風に)


 と言うわけで、絵にかいたような王道ですが、拙い技量でどこまでいけるか、でも楽しんでもらえたら幸いです。

「……あれっ?」


 一瞬、何が起こったのか解らなかった。だが、違和感を感じた。

 自分は既に怪物の爪が突き刺さり、死んだはずだ。いや、既にこう考えてる時点で、その答えに矛盾ができているのだが。

 ともあれ、自分はまだ生きている。ぼやけているが視界もしっかり確認できるし、苦しみも、痛みも感じている。

 そしてその視界のなかで、怪物は何か驚愕してるような顔をしている。彼には見えていないが、怪物に踏みつぶされている少女もそれは同じだった。


「あれっ、何……?」


 そして龍清は、もう一つの物を視界に入れていた。

 それは光球。何か光輝くものが、彼と怪物の間に存在しており、それは怪物の鋭い爪を、その場に留めていたのだ。


『グゥ……グオッ!?』


 そしてその光球が突然強い光を放ったかと思うと、怪物はまるで強い衝撃でも受けたように後ろに吹き飛んだ。

 同時に、二人は怪物の拘束から解き放たれるのであった。


「ゲホッ! ゲホッ!」


「ちょっ、大丈夫あんた!?」


「な、何とか……」


 正直言って、まだ背中に痛みが残ってるが、既に窒息寸前の所だった事もあって、今は息を吸い直す事で一杯一杯だった。

 呼吸と共に視界ももとに戻ると、改めて自分を助けた光球にめを向ける。


「これは、一体……っ!」


 その時、龍清はある事を思い出した。今朝の夢の事だ。

 あの時自分は、光に向かって手を伸ばした。だが、それを掴む直前に後ろを向き、そのまま黒い何かに飲み込まれかけた。


(もしかして……)


 もし、あの時自分が振り向かず、あの光を掴んでいたら……

 そう思った龍清は、夢の光景と同じように、その手を光球へと伸ばしていき、それを掴んだ瞬間、光球は放つ光を徐々に強め、大きくなっていった。


「ちょっ、何々! どうなってるの!!?」


 少女の困惑も、今の龍清には耳に入らない。

 ゆっくりと目を閉じた龍清は、そのまま光の輝きが終わるを待ち続けた。

 1秒か、5秒か、或いは10秒、それ以上かもしれない時を待ち、やがて龍清は、収束した光を掴んだ自分の手を見据える。


「これは……」


 彼が握っていたのは、一本の刀剣だった。

 刀身は刃の部分が湾曲し、刀でいう峰に当たる部分も緩やかに反っている。

 鍔の部分には外側に鋭い爪のような装飾が施されている。さっきの怪物のそれとは違い、まるで絵の中の龍の爪の様で、小さくもどこか鋭さを感じさせる。

 そして刀の持ち手、柄の頭部分には、その龍の手に掴まれてるかのように蒼色のガラスの玉が付いていた。

 それはまるで柳葉刀、日本人が一般的に、青龍刀と呼ぶ刀に龍を連想させる装飾が施されたようなその刀を見た龍清は……


「何これーーーーー!?」


 その言葉に、思わず彼の隣で事の成り行きを見ていた少女は盛大にずっこける。


「何これじゃないわよ! あんた解っててやってたんじゃないの!?」


「いや、僕だって先が見えてたからやったわけじゃ……」


『グァアアアアアッ!!』


 再び聞こえてきた声、振り向けばさっき吹き飛ばされた怪物が、体勢を立て直して再び迫ってきていた。


「うわっと!?」


 振り下ろしてきた腕の爪を刃で防ぐも、次々と繰り出される爪の攻撃に防戦一方であった。


「ちょっと! 受けてばっかじゃなくて反撃しなさいよ!」


「無理だって! 刀どころか木刀も竹刀も持ったことないのに!」


 龍清は運動が苦手と言う程ではないが不得意で、夜の御勤めの事もあって部活動にも入ってない。

 悪霊と対峙する際も、基本呪符で事足りるので、接近戦などまずない。まして剣の技術の類など、修めてるはずもないのだ。


「武器が剣なんだから一発スパッと斬っちゃえばいいでしょ!」


「簡単に言ってくれるけど、できたらこんな苦労は……」


 口論の合間に、怪物が腕を大きく振り下ろそうとしてるのが見えた。それをくらったら、果たして防ぎきれるだろうか? それほどに感じられた。


「ひ、ひぃいっ!!」


 振り下ろされる腕に無我夢中で手に持つ刀を振り下ろす。

 しばらくして何も起こらないので目を開けてみると、そこにはさっきまで振り下ろそうとしていた怪物の掌が転がっていた。


『ギャオオオオオっ!?!?』


 斬られた腕を押えながら悲鳴を上げる怪物だったが、龍清と西麗はそれより、気になる事があった。


「再生……しない?」


 龍清が呪符を使って尻尾を切断した時は再生してしまっていったが、刀で斬り落とした怪物の掌はその場に転がったままだ。

 やがてそれは黒い霧状になって消えたが、それだけだった。怪物の腕は元に戻っていない。

 それだけで二人は確信する。どういう理由かはわからないが、この武器は怪物への有効打になると。


「とはいえなぁ……」


 だが、龍清は曇ったような表情を浮かべる。

 いくら武器が強力でも、使い手が使いこなせなければ意味はない。

 自分がこんな刀を持ってても、どの位通じるかという問題が、彼の頭に浮かぶ。

 だが、目の前の怪物は掌を斬り落とされて、尚もこちらに敵意を向けている。


(何とか相手にそれなりにダメージを与えて、相手が逃げるようにできないかなぁ……)


 そう考えてた直後、手にもつ刀の宝珠部分が光を放ちだす。

 その瞬間、龍清の頭の中に変化が訪れる。


(えっ……なにこれ? これって一体……)


「ちょっ! 何ぼーっとしてんの!? 前、前!」


 少女が指差す先には、怪物が再び襲い掛かってきたのだ。

 しかも今度は、片腕だけでなく翼腕まで前に向けている。もしこれを防ぎ損ねたら、一溜りもないだろう。と言うか、防ぐのは最早難しいだろう。


(それなら……!)


 一か八か、龍清は再び目を閉じ、精神を集中させる。

 すると、刀の刀身に何かが走り出した。


「ちょっ……これって……」


 それは稲妻、刀の刀身部分を青白い光を放つ電撃が走り、次第にその刃を包み込んでいくのである。

 迫る怪物を前に、電撃の刃を持つ刀となったそれを、龍清は眼を見開くなり大きく振り上げ……


「いっけーーーーー!!」


 思いっきり叫び声と共に振り下ろす。

 自分を倒さんとする怪物を、刃はまるで紙をまっすぐに切り裂くカッターのように怪物を真っ二つにしてしまった。

 そして怪物は声を上げる間もなく、綺麗にわかれた半身がそのまま床に倒れるのだった。


「す、凄い……」


 思わず声を漏らす少女の声を聞こえたのかそうでないのか、龍清は緊張が解け、その場に尻もちをついてしまう。


「な、何とかなった~……」


「あんたってすごいのかそうでないのか、解らないわねぇ……」


 龍清の今の姿をみれば、少女ならずともそう思えてしまうだろう。

 やがて怪物の亡骸が霧散するのを見届けるが、その直後、二人は良く知っている。そして今この場で聞きたくない音が外から聞こえるのが解ってしまった。


「この音って、もしかして……」


「まあ、案だけ派手にドンパチやってたからねぇ……」


 既に壊れた窓からのぞいてみれば、そこに見えるのは赤いランプを乗せた車両が止まり始めたのが見えた。


「えっと……あの人たちは見られると色々面倒な訳で……」


「あたしも見つかるのはやばいかな、だったらこういう時は……」


 二人の考えは一致した。その間にも車両から制服に身を包んだ人たちが現れ始めるのを見て……


「「逃げる!!」」


 気づかれないように、それでいて素早く逃げる為、二人は部屋の反対側の窓を開け、外へと飛び出すのであった。



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