スライム、誕生する
いきなりだが、オレは今、逃げている。
か弱きスライムを捕食しようとする悪辣なモンスターから必死に逃げているのだ。
まさにモンスターとしか言いようがない。
大きな口と鋭い牙、ギョロリとした大きな眼、全身を覆う鱗。
その巨大な体躯と大きな翼を見れば、その正体は自ずとわかろうものだ。
所謂ドラゴンというものだろう。
いきなりドラゴンに追っかけられるとか超絶ツイてない。
そもそもなんでオレがスライムになっているかもわからん。
気がついたら洞窟にいて、何故かスライムになっていた。
そこで何故こうなったかを考えていたらドラゴンがやってきたのだ。
必死だったのでどうやって動いているのかもよくわからない。
びっくりして逃げようとしたら勝手に体が動いていた。
そしたら追われて今の状態に至るってわけだ。
お、隙間を発見っ!
これで逃げ延びられる。
狭い岩の隙間にスルリと滑りこむ。
ドゴォンッ
うおっ、ビックリした。
ドラゴンはそのまま岩壁にぶつかったようだ。
ってかドラゴンってスライム食べるの?
たべてもきっと美味しくないと思うぞ。
それとも水分補充的な何かだろうか。
我ながらよく逃げ切れたと思う。
スライムなんてネバネバでドロドロでゆっくり動くイメージがあったが、
実際は粘度も硬さも自在に変えられるようで、かなり早く動けるようだ。
やっといてなんだけど、オレ自身もビックリだよ。
あ、ちなみにドラゴンから逃げるときは、丸まって転がっていた。
ボールが自分で跳ねまくるイメージだ。
目が回らないのが不思議だった。
ってかどうやって見えているのだろうか。
360度全てを認識できているので、不思議な感じがする。
岩の隙間から外を伺うとドラゴンはいなくなっていた。
どうやらあきらめてくれたようだ。
生き延びられたのは良いのだが、さて、これからどうしよう。