カーテン、ゆらり
※この作品は投稿するの躊躇っていた程サラっと書いたので暇つぶしにして頂ければ幸いです。一部、暴力的表現あり(軽め)
一一一一一一一一一一
ぼくを……
ぼくを悩ませるきみは、とても聡明で美しい。
一日一日の時間を惜しまず、きみを見続けることこそが、ぼくの快楽への懸け橋になる。
これは、清く正しい事なんかじゃない。
きみの存在を草むらの中から見つけたとき、ぼくは沸き上がるドキドキを押さえる事が出来ず、きみの後を付けた。
そう、その時から三年。三年も経ったんだ。
その三年間の成果は計り知れない。
まずは、きみの下着。それと声の採取は、外壁用の盗聴で録音した。けど不本意に張りつけた為、何故か壊れてしまい一度だけ。部屋への侵入はしない。それは、ぼくのルールだ。
早朝、ゴミの山からおぞましいカラスの群れを追い払った末に、やっと手にした髪の毛と何を拭いたか分からない丸められたティッシュ。これはとても不思議な薫がする。それから、割り箸。これは恥ずかしいが、何度も舐めたよ。生理用品は、ぼくの好みじゃないから、コレクションにはない。
あっ、そうだ! 先週、コンドームが立て続けに見つけた時は、腹立たしさと興奮を覚えたよ……
その他、あげれば限りがない。でも、一番は写真。笑顔の写真だ。
前髪を揃えてカットし、長く伸びた髪をむらなく栗色に染めている。ふくよかな唇に、世界の女性が憧れるアーモンドアイを細めて笑う、そんな写真。
この写真は、何度も摩擦する右手の原動力にもなったんだよ……おかげで、想像力が豊かになった。
あっ、そう言えば、先週きみの部屋のカーテンが、水色から赤いカーテンに変わっていたね。いくら紅葉の秋とはいえ、きみの部屋の赤いカーテンは刺激が強すぎるんじゃない。
赤は、人を興奮させる効果があるらしいし……なんとなく想像がつくのが、きみの好いところなんだよね!
もう……
もう、たまらない。
好きだ!好きだ!好きだ!好きだ!好きだ!好きだ!好きだ!好きだ!好きだ!好きだ!好きだ!好きだ!好きだ!好きだ!好きだ!好きだ!好きだ!好きだ!好きだ!好きだ!
でも……
でも、もうきみから卒業しなくちゃならないんだ。
こんなぼくもきみを断ち切る為に、彼女を見つけたんだ。ぼくは彼女と結婚して、これからの人生をきみを忘れるために生きてゆく。
その為に彼女を犠牲にするんだ!
そうでもしなくては、ぼくはきみを殺しかねない。
こうして、夜な夜なきみのアパートをカーテン越しに覗きにくるのも、今日で最後にするよ!
さようなら
一一一一一一一一一一
と書いた手紙を片手に、ぼくは今日の夜を最後に、きみの前から消える覚悟で立っている。
二階建のアパート。その一階部分の一番端。
アパートは管理人が、ヘタに一階部分を隠す囲いを立ててあるので隠れやすく、さらに人通りが少ないため、覗きが容易い。さらにベストスポットがある。
時には勇気を出して、きみの部屋の窓越しまで行くと、中から物音や会話が聞こえてくることもある。
そんな時は、時間を忘れて聞き入っていたこともあったな。ラッキーだったよ。
……フフフッ
「さて、手紙をポストに入れて立ち去るかな」
ぼくは、右手に持つ出刃包丁を左手に持ちかえて、ケツポケットに入れておいた手紙をポストに入れて、後ろを振り向いたんだ。
ゴツッ!
ぼ、ぼくの頭に鈍い音が響いた。
一瞬だったが分かる。
まさか、きみがバットを振りかざすなんて……
*
「まったくよ、ふざけんなよ。オマエ等だけが見てたと思うなよ!こっちは、何度も何度もオマエ等みたいなゲスにつきまとわれてんだよ……」
ああ、頭が朦朧とする
きみは、何かブツブツ言っている
あっカーテン。上の部分に水色が見える
ん!? ぼ、ぼくの隣に裸の男? 血だらけ
ああ、頭が……
「そんなにあたしとヤリてえのか!ヤリてえなら、ヤラせてやるよ」
き、きみは、何をやってるんだ……ぼくの上で揺れて……
あれ、床がガサガサ音がして、ツルツルつかめない……
ああ、ビニールシートか……
一一一一ッザク
「うっ!」
何か、ぼ、ぼくが変だ
一一一一ッザク
「うっ」
何か……食道から生暖かいものが……く、口の中に流れ込んでくる……
「ああ、いい!この血の匂い。最ぃぃっ高!この血飛沫を浴びる快楽は、セックスを上回るのよ」
一一一一ゴリッ、パキ!
ああ、き、きみは……ぼくに全体重を掛けて、刃物を突き刺しているのか
「あ〜あ。刃が折れちゃった。先週の男刺しちゃってボロボロだったし」
一一一一メリメリッ
きみの顔が、ち、近い……
カリッ、カリカリ、カリッ
ど、どうやら……あ、頭の皮を剥いで……いるようだ……し、神経質な目が……いい……いい
「えっ!?ま、まだ生きてる!変態はしぶといんだ〜」
もう……ぼくの……い、意識は遠い……何も感じない……
でも、 ぼくは……その中で分かったことは……
分かったことは……
END
○本作品『カーテン、ゆらり』を最後まで読んで頂き有難うございました。