半ぶンの双子
なんでもはんぶんこ、何が何でもハンブンコ
ねぇお姉ちゃん
なぁに? お姉ちゃん
そこにりんごがあったよ
わぁ、美味しそうな林檎
食べようよお姉ちゃん
そうね、お姉ちゃん
割るね。 う〜ん……はっ!
パカン
はい、割れたよお姉ちゃん。はんぶんこ
ありがとう、お姉ちゃん
私たち、何でもはんぶんこだよね
そうだねお姉ちゃん、私達、何でもハンブンコよね
「何でも半分個にする双子?」
「うん」
「おいおい、いくら子供が欲しいからって拐って来るとはマズイんじゃないか?」
「違うよ?! さっき迷わせた人達の子供だと思うんだけどさ、なんというか…」
「あまりの可愛さについ、両親の居なくなった今、私が養うしかないから仕方ないよね〜」
「そうそう……って違うから!」
「じゃあ何だと言うんだい? 早く話したまえ」
「そっちが話させないんだけど…………なんというかね、私たちに似てるの」
「? ワタシ達は別に双子ではないぞ?」
「分かってるよ。そうじゃなくて、雰囲気が」
「ふむ、素質あり。ということかな?」
「簡単に言えばね。ただ、その前にかなり今迷ってるから、それが先」
「もしゴール出来なかったら?」
「そこまで。両親の所へ行けるかな♪」
「なら、ゴール出来たら?」
「それもそこまで。元いた所へ帰して……多分、生活は出来ないかな。だって、両親はいないし♪」
「鬼だな。では、第三の選択をした場合は?」
「そしたら、私達と一緒だよ。同じ仕事が出来る。あぁ、私としてはそれが良いな〜」
「前から妹が欲しかったんだ〜、か。やれやれ、こんなに良いお姉さんがいるのに贅沢だな」
「だから、妹が欲しいんじゃん♪……というか、何でそれ知ってるの? エスパー?」
「いいや、ただの絵描きだ。副業持ちのな。そしてお姉さんでもある」
「変わったお姉さん」
「何か言ったかな?」
「いいえ〜」
「ふむ、言い方が妙だな。ちょっと手を出せ、林檎をくれてやる」
「え? くれてやるってただ描くだけ……しかも手に持ってるの紫だし……ちょっ、やめてーー!」
ねぇお姉ちゃん
なぁに? お姉ちゃん
そこにお水があったよ
あ、本当ね
はんぶんこだよお姉ちゃん
そうねお姉ちゃん。お先にどうぞ
ありがとうお姉ちゃん……んく、んく…………ぷはぁ、はい、お姉ちゃん。はんぶんこ
ありがとうお姉ちゃん
私たち、何でもはんぶんこだよね?
うん、私達は何でもハンブンコよ
「まぁアレはそうするよね」
「あれが例の双子か……ふむ、なかなか似てないな」
「でも双子だよ」
「どこからその根拠が?」
「どっちもどっちを、『お姉ちゃん』って呼んでるでしょ? 多分決まった順番が無いんだよ」
「というか、彼女らに名前は無いのか?」
「両親が付けた名前ならあるだろうけど、もう居ないし。今からあの家行くのも問題起こるだろうし」
「そもそも呼び合わないのが問題だと思うが」
「何でだろうね? まぁいざとなったら、私たちでつけようよ」
「ワタシにネーミングを頼むのかい? 仕方ないな、最高の物を用意して…」
「うん、私一人でつけるね」
ねぇお姉ちゃん
なぁに? お姉ちゃん
そこに缶詰があったよ
あ、本当ね
はんぶんこだね
ハンブンコね
待ってて、すぐに…………うーん……!
ムリだよお姉ちゃん。さすがに手じゃ開かないって
くはぁー!
貸して、そこに缶切りもあったから
パッカン!
はい、開いたよお姉ちゃん
お〜、さすがお姉ちゃん
はい、ハンブンコ
うん、はんぶんこだね
「ま、そうなるわな」
「ふむぅ、次はどうしようかな」
「それにしてもあの2人、だいぶ性格が真逆だな」
「だね〜、どっちかと言えばあっちの方がお姉さんぽいね」
「体力系の妹と頭脳系の姉か。ワタシ達みたいだな」
「私体力系?」
「違う、とは言わせない」
「強制?!」
「考えてもみろ、ワタシのどこに体力がある」
「あ、それもそっか」
「よし、なら次に行こうか」
「おっけ〜♪」
ねぇお姉ちゃん
なぁに? お姉ちゃん
そこでこんな物拾ったよ
あら、コレはヘッドホンね
ヘッドホン?
こうして耳に当てて、音楽を聞くものよ
そっか、ならお姉ちゃん。はんぶんこだよ
パッキン!
はいお姉ちゃん、はんぶんこ
ありがとうお姉ちゃん。ハンブンコ
「うっわ〜……」
「まぁ予想通りだね、だいたいは長髪が真っ二つだ」
「なら、素手じゃ割れない物を置けばいいのか」
「だな、しかしアレではもう使い物にはならないだろう。そもそもヘッドホンだけでは音楽は聞けないのだが」
ねぇお姉ちゃん
なぁに? お姉ちゃん
そこに鳥かごがあったよ
鳥かご?
ほらコレ
あら、本当
はんぶんこだね。さっそく……
待ってお姉ちゃん、さすがに手を痛めるよ
でもはんぶんこしないと
任せてお姉ちゃん。ここにペンチとカッターがあるから
どこから持ってきたのお姉ちゃん?
バキ! ガキン! バキバキ!
はい、ハンブンコだよ
うわぁ、さすがお姉ちゃん、はんぶんこだね
「あんな物いつの間に渡したんだ?」
「覚えないよ、家から持ってきてたんじゃない? 実は缶切りも渡してないんだけど」
「危ない子だな、刃物持ち……はもちーは」
「まさかそれ、名前?」
「良いだろう? もう片方も特徴を見つけて付けるつもりだ」
「……まずい、なるべく早めに考えとかないと」
ねぇお姉ちゃん
なぁに? お姉ちゃん
そこにメガネがあったよ
あら、本当ね
はんぶんこだねお姉ちゃん
そうねお姉ちゃん
待ってて、すぐに割るから
危ないよお姉ちゃん。ちゃんと道具使った方がいいよ
じゃあはんぶんこにするのもはんぶんこにしよう
そうね、ハンブンコにするのもハンブンコね
パキ! バッキン! パキパキ! ガキン!
出来たねお姉ちゃん
そうねお姉ちゃん
はい、はんぶんこ
うん、ハンブンコ
「半分にすることを半分にし始めたな。コレは見てて飽きない、なぁ?」
「うん……そうだね」
「どうした? 顔色悪いならワタシがきれいにしてやるぞ。ちょうど深緑色がこんなところに」
「いやいらないから。そろそろね、最後の選択肢へ行かなくちゃいけないんだ」
「それにより、2人の運命が決まるのか」
「まぁね……」
「で? 次はなんだい」
「うん、コレなんだけど」
ねぇお姉ちゃん
なぁに? お姉ちゃん
そこでこんな物拾ったよ
コレは……コンタクトレンズね
コンタクトレンズって何?
目に直接入れるメガネみたいなものよ
へぇ〜
ちょうど両目分、2つあるね
はんぶんこ出来るね
そうね、ハンブンコ出来るわね
どうやって入れるの?
こうするの、少し動かないでね
分かったよお姉ちゃん
こうして……こう……んっ……よし、出来たよ
うわぁ……なんか、変な感じだよ、お姉ちゃん
そういうものだもん
じゃあ、私がお姉ちゃんにつけてあげるね
ありがとうお姉ちゃん
んっ……しょ……これで……とっ……出来た!
わぁ、確かに変な感じ
そういうものなんでしょ
そうだね
うわぁ…………あれ?
どうしたのお姉ちゃ…………あれ?
お姉ちゃん、目が痛いよ
そうね、目が痛いね、お姉ちゃん
うわ、痛いよ、痛いよお姉ちゃん!
痛い! すごい痛いよ! お姉ちゃん!
お姉ちゃん……!
痛いよ! お姉ちゃん!
「本来視力の良い者が入れてもおかしくなるだけだろうが、あんなに痛がるものか?」
「……」
「どうした?」
「……アレね、薬塗ってあったの。スッゴいの」
「あの時に使ったアレか? そんなもの目に入れたら激痛だけじゃすまないだろ」
「まぁね……」
「なぜそんなことを?」
「……そりゃあ、迷い道の選択肢だもん♪良い道ばかりじゃ、つまらないでしょ♪」
「やれやれ、そういえばそういう性格だったな」
「あは♪次が最後だよ♪」
痛いね、お姉ちゃん
そうね、お姉ちゃん
目、真っ赤だよ
お姉ちゃんこそ
でね、お姉ちゃん
なぁに? お姉ちゃん
そこに目が落ちてたの
え?
ほらコレ
あ、本当だ
ちょうど二個あるよ
そうね、ハンブンコね
でもさ、この目、どこかで見たことあるんだよね
お姉ちゃんも? 私もだよ
どこだろうね?
どこだろうね?
…………あ、分かったよ
私もだよお姉ちゃん
目の前でだよ
うん、目の前だよ
この目、お姉ちゃんに似てるんだよ
この目、お姉ちゃんに似てるよ
なら…………はんぶんこだね
そうね…………ハンブンコね
ちょうど片方目が痛いしね
片方ずつ目が痛いからね
はんぶんこだね
ハンブンコね
グチュ グチ グチャ
グチャ グチ グチュ
はい、取れたよお姉ちゃん
こっちも取れたよ、お姉ちゃん
後は、入れ直すだけだよ
そうね、入れ直すだけだね
やるよ、お姉ちゃ……
うん、お姉ちゃ……
……はん……ぶん……
……ハン……ブン……
……………………
「まさか、手で目を入れ替えようとはな」
「ムリに決まってるのに♪」
「やけに上機嫌だな」
「あは♪そりゃそうだよ♪何せ迷い道の行き止まりについたんだか…」
……あれ?
……あれ?
「!?」
「ついてないようだね」
……あなた達、ダレ?
……あなた達は、誰?
「どうするんだい? どうやら2人共にこちら側へ来たみたいだ」
「……あは♪はじめまして、で良いのかな? 私達は迷い道案内人だよ」
……迷い道?
……案内人?
「とりあえず、ようこそ♪歓迎するよ♪やる事は徐々に覚えればいいよ」
……何かやるんだ?
……何かするんだ?
「そうだよ、2人でね♪」
……2人でだって、お姉ちゃん
そうだって、お姉ちゃん
「よーし♪そうと決まったらさっそく…」
「待てい」
「はぅ!? いきなりチョップ?!」
「よく見たまえ、あの状態で人前へ出させる気か?」
「おぉう、確かに血だばだはのあの状態はマズイね」
「まずはマスターに言って止血、その後は、これでもつけておけ」
「コレは、眼帯?」
「一応用意しといた。ムダにならなくて良かったよ」
「わぁ、ありがとう。という訳ではい♪コレつけて」
つけてだって、お姉ちゃん
そうね、お姉ちゃん
はんぶんこだね
ハンブンコね
「わざわざ半分じゃなくても2つあるからさ♪」
でも、はんぶんこだよ
うん、ハンブンコよ
「あーもー! かわいいな2人共!」
うわぁ、抱きつかれたよお姉ちゃん
ひゃあ、私もだよお姉ちゃん
「かーわーいーいーなーもぉ〜〜!」
「ワタシは見てて暑苦しいけどな」
「コレからよろしくね♪ミイちゃん。ヒイちゃん」
ミイちゃん?
ヒイちゃん?
「何だ? 名前つけたのかい?」
「うん♪どうかな?」
「良いんじゃないか?」
私、ミイちゃん?
私、ヒイちゃん?
「……ん? 右目に眼帯と、左目に眼帯……?」
「よ〜し、さっそくマスターのところに行こうね♪」
行こうか、ヒイお姉ちゃん
そうだね、ミイお姉ちゃん
「れっつご〜♪」
「……やれやれ、メイコも人のこと言えないネーミングセンスじゃないか」
「彩菜〜早く行くよ〜♪」
「はいはい……にひひひ」
私の名前はミイ
私の名前はヒイ
いつもお姉ちゃんと一緒
いつもお姉ちゃんと一緒
いつでもお姉ちゃんとはんぶんこ
なんでもお姉ちゃんとハンブンコ
これからヒイお姉ちゃんと一緒によろしくね
これからミイお姉ちゃんと一緒によろしくね
ヒイお姉ちゃんと一緒にはんぶんこだからね
ミイお姉ちゃんと一緒にハンブンコだからね
何がなんでも、ね
迷い路に、新たなメンバーの加入です。
なにがなんでもはんぶんこ、どんなものでもハンブンコ、互いに片眼の眼帯双子。
あるとき、これを半分にできたらな、という思いがありました。
一つはいらない、この半分でいい、仮にできたとして、もう半分はどうしたらいいだろう、もう一人に分けることができれば……という気持ちがこの物語を生みました。
彼女たちも、これから人を迷い路に差し込むのでしょう……
それでは、
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