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第六十二話 生まれて初めてのソロ活動




 NORUKA(ノルカ)――交通系電子マネーカード――を買ってチャージ。電車に乗るのは生まれて初めてだが、自動改札については第一沖縄都市モノレールと第二沖縄都市モノレールで慣れているので、困るようなことはなかった。


(前回来たときにさ、スマホを買ってもらっておいて良かったよ。これがなけりゃ、どこに行ったらいいかわかんないもんね)


 一八の言うように、千鶴が『そろそろスマホを持たせてあげてほしい』と母、日登美にお願いをした。結果、持たせても大丈夫だろうと許可をもらう。東京観光初日に、スマホを入手できた理由がこうだったのである。


(おー。山手線だ。かっこいいなー)


 乗ったことがなければ、基本、電車は男の子にはかっこよくみえるものである。


 品川を出て、大崎、五反田、目黒、恵比寿。次が渋谷という段階で、運転席の真後ろにいた一八は、運転手の一挙手一投足が面白くて興味深い。


(車と全然違う。ロボット操縦してるみたい)


 夢中になっていたところで、


『次は渋谷、渋谷。お出口は左側です――』


『一八さん、一八さん』

(ん?)

『渋谷で降りるのではありませんか?』


 出口の上を見ると、『次は渋谷』と書いてある。アナウンスも同じであった。


(あぁあああ。危なかった。吽形さん、ありがとう)

『どんなに賢くて、大人びていても、男の子なのですね』

(あはは……)


 山手線を降りて、ホームから改札へ。駅ビルを出てすぐに、


(『隠形の術』、できるかな? 前はできたんだけど)


 そう思ってあれこれ試すと、歩いているうちに足下からすぅっと消えていく。


『実にお見事ですね。『隠形の術』に関してだけ言えば、免許皆伝です。……が、次からはカメラのない場所路地などで利用されるのがよいかと思います』

(あ、はい。すみませんでした。……吽形さん。えっと、スマホを――おぉおお。これ便利ですね。消えてる僕なら、一緒に消えてるスマホの画面を見られるんだ)


 すいすいとスワイプ、タップして、地図を表示させる。メモからコピペして該当の住所を検索する。


(んー、ここからじゃよくわかんないな。吽形さんさ、一人でね、右側と左側に腕出せるかな?)

『できますよ』


 ガラス窓に映しても見えないから、身体の左右を見て確認する。確かに吽形ひとりで腕を二本出せているようだ。


(ありがとう。そのままこのビル、登ってくれる?)

『いいですよ』


 つるつるしたタイルに似た建材を使ってある壁。それに吸盤を吸い付かせて、ぺたり、またぺたりと器用に登っていく。ほんの数十秒で屋上に達していた。


 周りを見て、一番高そうなビルだと判断。屋上への出口があるが、人は出てきていない。というより、防護柵がないから危険なので人が出てこない。それだけだと思った。


「さて、と。この住所は、と――ぐるぐるぴたっ。こっちの方角だね」


 センター街と書いてある場所の更に奥。スマホの地図にピンが刺してある場所は、それほど近くはない。


「時間はあるけど、歩いたら迷子になりそうだから」

『飛びましょうか?』

「ひとりで大丈夫?」

『えぇ。その代わり、一八さんから魔力をいただきますよ? 減った分だけ。魔力はエビマヨからは吸収できませんので』

「いいですよ。放っておけば回復するでしょ」

『そうですね。そういう意味で、一八さんは人間離れしてしまいました。ほんとうに申し訳ありません』

「いいんです。その分こうして、普通じゃ体験できないことができるんです」

『それでいいのであれば、存分に。好きなだけつきあって差し上げますので』

「ありがとう。吽形さん」


 風はそこそこある。吽形の水ジェット噴射も、音は大きくない。ドローンのように風力だけでは推進力に乏しい。そこに水を加えて推進力を増している。それがこの飛行方法なのだろう。


「おぉおおお。これ、本当にヒーローだってばさ」

『お褒めにあずかり光栄です』

「うん。いくらでも褒めちゃう。お父さんから料理もっと教わって、美味しい料理作るからね」

『楽しみに待っていますね』



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