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海岸でタコ助けたらスーパーヒーローになっていた。 ~正義の味方活動日記~  作者: はらくろ
第一章

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第十四話 ごはん、どうしよう?




 材料を手際よくどんぶりの中に入れていく隆二。どんぶりが被さる、シリコンの蓋を乗せる。


「これで五分、加熱してみて」

「うん。ありがと、お父さん」

「まだまだ、それは出来てからのお楽しみ、だね?」


 電子レンジを五分にセットしてスタートを押す。それほど待たずにチン、と鳴る。


「そのまま冷ますものなんだけど、これはザルにとってそれで大丈夫かな?」


 隆二は、ザルにとって水気を切る。届く範囲に置かれていた、うちわで扇いで気持ち冷ましてくれた。


「ほら、これで大丈夫だと思うよ。薄味だけど、俺たちも食べられるくらいにはなっているからね」


 下ごしらえとはいえ、油を使ったわけではない。だから水槽に入れても問題はないだろう。


「そうなの? ありがとう、お父さん」

「いえいえ、どういたしまして。それにしても、案外いい匂いになるんだね」

「うん。これだけでも美味しそう。それじゃ、晩ごはんにね」

「はいよ」


 一八はむき海老の入ったどんぶりを持って部屋へ戻っていく。この家は一階が店舗になっていることもあり、二階もそれなり以上に余裕のあるつくりになっていた。


 リビングと日登美の書斎、日登美と隆二の寝室。千鶴の部屋と一八の部屋。お風呂にトイレ。こんな感じになっていた。三階は基本、夏場の水不足時に起きる可能性がある断水に備えて、大きめのタンクが備え付けられている。


 あとは、表と裏合わせて十台分の駐車スペースがある。庭はないが、何か必要になれば日登美の実家、八重寺本家に行けばいいだろう。


 一八は部屋へ戻ってきた。ドアは閉めるが鍵は閉めない。別に見られて恥ずかしいものがあるわけではないからである。


「タコさん、こっちのタコさん。そろそろうちも晩ごはんだからさ、ごはん持ってきたよ。何がいいか考えたんだけど、海老にしたんだ。生じゃないからそんなに食べにくくはないと思うよ」


 ガラスケースに何もいないような状態から、こちらのガラスに張り付くようにして、黒いタコと白いタコが近寄って姿を現していた。


 一八はむき海老をひとつつまんで、水槽の水面に近づける。するとややあって、白い触手の先が彼の手の甲をつんつんとつつく。


『ワタシ、食べてもよいのですか?』


 一八にその触手から、という気持ちが流れてくるような気がした。彼にとってそれは別に不思議な感じも思えなかったのだろう。


「うん。食べていいんだよ」


 そう一八が言うと、遠慮しない感じで受け取ってくれた。覆いかぶさるようにして、おそらく食べているのだろう。その間、白いはずの色味がむき海老の色に近く変化していたのである。


 むき海老をあたらしく持って、水面に寄せてみた。


「はい。黒いタコさんもどうぞ」


 黒いタコは自分の触手で頭の辺りをつんつん。


『オレの分でいいのかい?』


 そういう感じに尋ねてくるような気がした。


「そうだよ。食べていいんだよ」


 すると黒い触手が伸びてきて、手の甲をたたくとむき海老を受け取ってくれる。


 黒いタコは同じようにしてむき海老を食べているのだろう。黒いはずの色がむき海老の色に変化している。


「食べ終わったら教えてね? まだまだあるから」


 白いタコが触手を一本だけ上に持ち上げた。黒いタコも同じように、触手を持ち上げて返事のようなもので応じてくれる。


(美味しかったんだろうね。これ、マヨネーズつけただけでも美味しそうだもん。刺身醤油でもいいよねきっと。……でもさっきのあれ? なんだったんだろう?)


 一八自身が美味しそうと思えるくらいに、ぷりぷりとしたむき海老だった。


 入れ替わり立ち替わり、むき海老を食べていたタコたち。二十個ずつくらい用意してあったが、あっという間に食べきってしまった。


「まだおかわり持ってくる?」


 すると白いタコも黒いタコも、海面上に上がってこない。触手を少し上げて、ふらふらと振っているようにも見える。おそらくお腹いっぱいということなんだろう。


 タコは頭のよい生きものだと何かでみた覚えがある。もしかしたら犬のように、一八の言葉をある程度理解してくれていたら、嬉しいなと思っただろう。


「まだまだあるけど、明日の朝ごはんも、むき海老でいいかな?」


 するとタコたちは一度だけ、触手を上に持ち上げて返事のようなものをみせてくれた。


 でもこれではっきりした。もしかしたら、まだ発見されていない深海にいた、新種のタコかもしれない。なぜならそう思った理由は、この八重寺島にはブルーホールがあるからである。


 でもまだこの時点での一八は、タコたちが気持ちを伝えていたことに気づいていないのであった。



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