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僕のタンジーは賢いので  作者: アロエ
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僕は何よりも婚約者優先なので



僕の前に立ち塞がって、ずらり並ぶ面々とわざとらしく涙を浮かべて訴えかける……誰だろう?知らない女の子は僕に如何に僕の婚約者が悪しき真似をしたかとその悪事の内容や、それによって負った怪我とやらをこれ見よがしに見せつけてきた。


素人が巻いたと見て直ぐにわかるような適当な巻き方をされた包帯。階段ですれ違い様に突き落とされて足をくじき、手も痛めたって。君、さっき僕を呼び止める時その手で触れようとしてきたよね?


僕の護衛に止められて阻まれたけど痛がる反応より先に驚きと怒りが出てたし。僕の護衛の数名は平民出身者がいるからって馬鹿にしてるのかな。僕も国王陛下も実力を兼ね揃えてる者を重用している。だって国を守るのに身分は関係ないし。民や僕たちを守らず自分の身可愛さに逃げてくような者は必要ないし。それなら貴賤の垣根なく主に命懸けで仕える覚悟と実力のある者を起用しないと。


まぁそれは今は置いとこうか。


で……?僕の愛しのタンジーがなんだっけ?


男爵家に養子に入った令嬢を気に食わなくていじめて、取り巻きに悪い噂流させて?物を壊して、挙げ句が傷害事件?ふーん。



「僕たちの事馬鹿にしてるの?タンジーって思慮深くて、頭もとっても良いし、人心掌握なんかも上手いんだよ。だから外の国からの接待も王妃様と一緒について回って勉強と外交を早くから行ってもらってるんだけど」



それ以外にも僕のお嫁さんになるにあたって諸々必要な事を学ぶ為に寝る間も惜しんで日々休む暇もないくらい過密なスケジュールでいるのに、どうしてそんな下らない真似が出来ると言うのか。全くもって理解に苦しむよ。


そう言ってやればあいつらは不満たらたらな顔をしたけど、じゃあ答えてよと女の子に視線を向けて物をどうにかされた日と失くした日はと問う。



「一月程前の兎の刻と(はやぶさ)の刻です!その直前まではなんともなかったのに、タンジー様が教室に入られた後にこんな……」


「ふーん。ルパネト、タンジーのその日のスケジュールは?」


「兎の刻は王妃様とビヒネ王国よりお越し頂いておりましたカン王子とそのご婚約者様と歓談の予定がございまして、学園も当然欠席の扱いでございます。隼の刻も同じく教育を一日お受けになられております。いずれも王宮での事ですので記録、証言者共に不足はないかと」


「……だそうだけど?嘘ついて僕の婚約者に有りもしない濡れ衣を被そうとするの止めてくれない?そういうのあんまり酷いと本格的に調べなくちゃならないし」



これでも僕、第二王子だし。厳格な兄上と違って口調も緩いし見た目もそこまで怖く見えないからちょろいと思ったのかもしれないけど僕だってあの兄上の弟で、国王陛下の息子だ。



「王族、それに侯爵家への謂れなき侮辱だもの。君たちだって頭は残念でも年齢的に見れば大人なんだから、責任の所在は何処にあるか。こういう事を起こしたらどうなるのか。わからない訳じゃないでしょう?廃嫡、家名から名を削られ放逐、病死に療養。そんなものがお好み?」



口にすれば何人かは青褪めた。まさか本当に考えがそこまで至らなかったの?愚か者以外の何者でもないよ。そんなの。だってどう考えたって破綻しているじゃない。寧ろ何でそれで僕が納得してタンジーを見限るのさ。訳が分からないよ、本当に。



「あとね。タンジーは僕のお嫁さんにならなくとも自分の家の跡取りにもなれるからそんなに固執してないよ。何てったってタンジーは男も女も性別を選べる特別な家の生まれだからね」



妖精に愛されたか神のイタズラだとか。どっちなのかは本当は誰にもわからないけれど、ある年までどちらの性別にもならず過ごし、その後自分で性別を決めるんだそうな。


タンジーに声をかけてお嫁さんになって欲しいって僕が猛アプローチと外堀を埋めるところから始めて漸くタンジーも折れて僕のお嫁さんとしての性別を選択してくれたのだ。


そういう理由でタンジーが地位や名声が欲しくて僕を篭絡したとか言う噂は間違っている。それにタンジーが僕を見限り本当に拒もうとするならば彼女は彼となっているし、頭もいい彼女が周囲の人々を扇動し僕を悪しきと印象付けるくらいはするだろう。


その場合は勿論、婚約も僕が有責で彼に慰謝料や諸々を支払い謝罪し王家からも追放されるに違いない。


もしかしたら処刑もあり得るかな。タンジーはそこまで僕に嫌悪や憎悪を向けてくれるだろうか。


そんな事を思いウキウキとしてしまう僕はやはりどこかのネジが飛んでしまっているんだろうとも我ながら思う。



「頭も良くて見た目も優雅で麗しくて性別の垣根を越えて僕を魅了するし、狡猾で口がちょっと悪いのも、猫かぶった姿も振る舞いも完璧で隙がないのに僕の言葉に驚いたり居心地が悪そうに目を逸らしたり、喜んだり笑ったりする彼女を僕は気に入ってるし愛してるんだ。……もし彼女と僕の邪魔をするなら、知っておいてね」



僕はほんわか王子でも出涸らしでも下半身男でもないよ。兄上と同じ。国王陛下と同じ血の流れた王家の男。


国や恋し愛した者に害を与える害悪に刃を向ける事に躊躇いを持たないし、両手が真紅に染まろうともどれだけの返り血を浴びて穢れ果てようとも。正しき正義の旗を掲げ続ける。その意志に従い最後の最後まであると決めて生きてる。そういう類いの生き物だよ。


君たちみたいに甘っちょろい考えも行動も、虫酸が走るくらい嫌いなんだよね。わかったら僕の目の前からとっとと消えてくれる?


もう君たちのした事や発言も取り消せないし国と家への報告する為の者もさっき出したから、逃げ場はないよ。大人しく各家や国からの沙汰を待つようにね。



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