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1話


 これはある青年の物語である。

 

 語り部こと、この物語の主人公である───僕の名前は『模夢漢もぶお』だ。


 今から話す物語は、僕がそう、まだ大学生の時の事であり、いや大学生になったばかりの出来事である。僕がインダストリアル・ビジネス大学に入学して、最初の夏休みにとある女性と出会った、というより今思い返してみるとこの場合、不思議な女性に再開した(?)と言う方が正しいのかもしれない。


───────────────────


 ある日、あるところに模夢漢こと、当時高校3年生で、18歳の僕は漠然と将来について考えていた。


 具体的に何をやりたいかと聞かれると難しいのだが、幼少の頃から『社長』や『起業』などと言う肩書きに憧れを抱いていたのである。


 そんな夢見がちの僕は、いつもの習慣でNewTubeを見ていると、あるチャンネルに目が留まったのだ。


 それは今世界進出もしているというパチゼン宇宙。そのチャンネルの課長に位置するであろう人物、DJ課長に目が留まった。DJ課長は独特のトーク術で、ある事について話していた。そしてその話の中で彼は、こんなことを言っていた。「俺はやりたいことをやっていく」────「借金を45億しようと思いを貫いて見せる」そんな聞く人が聞けば、馬鹿にするような内容かも知れないが、僕はそんな言葉と行動に憧れを抱いたのである。かくして僕は高校を無事卒業し、インダストリアル・ビジネス大学のビジネス科に入学した。


 だがそれは僕が思っていたのとは全く違う現実が待ち受けていた。


「わからない……何を言っているのかわからない。(こいつらは本当に言葉の意味を分かっていってるのか?そもそも何でこんなに横文字ばかりなんだ。レスポンス?アサイン?プラットホーム?これは一体何語なんだ?そもそも普通の日本語でいいじゃないか!)」


 そう、大学に入り、僕が受ける授業は当たり前だけれども座学であり、簿記、マーケティング、経営学など色々なビジネスの基礎知識なのだろうか?そういうのを学んでいるのだが、はっきりと言って僕はどれもこれも全部苦手だ。


「はぁ……もういっそ大学なんてやめようかな」


 いいや、ここで弱気になってはダメだ。僕は起業をするために、ここに入ったんじゃないか。絶対に起業をするんだ!


 そんな事を言っている内に、入学してから約4カ月が経ち夏休みを迎えた。


「何もせずに、夏を迎えてしまった────いやいや待て待て、冷静になるんだ僕よ。今は俗にいう準備期間というやつで、決して僕の能力不足や行動不足でもなく、自堕落な生活を送っているからなどではない。決して家に帰ってゲームやNewTubeだけをやっているわけではない。そう、僕にはアイディアがある!沢山のアイディアがある!聞いて驚くな!そう───僕のアイディアは……!!!!」


 ────────なかった。


 8月1日の朝9時。現在の時刻である。僕は今ベッドの上に寝転がっている。


「そうか!アイディアがなければ考えればいいじゃないか。なんて僕は頭がいいんだ。何を隠そうこの僕はあのインダストリアル・ビジネス大学のビジネス科で4カ月も学んできたのだぜ?しかも周りも起業してるやつもいるっぽいし、こんな頭のいい僕にできないはずがない!てことで熟考(3分)した答えそれは───NewTuberになろう!これだ、これだぞ僕!なぜ気付かなかったんだ。僕は動画編集だって多少はできるし、企画構成だって出来るはずだ。そうと決まれば前々からやりたいと思っていたというより、温めていたというべか、そんなテーマはっ……!」


 ────────なかった。


「ふぅ、やれやれだぜ。さっき言ったばかりじゃないか、なければ作ればいいと。落ち着け、こんなことで慌てるんじゃない僕よ。物事には順序というものがある。もし仮にNewTuberを目指すとしても、どのようにやっていくか、何をやっていくか、これはとても重要なことだ。しかしながらこういうことに関してなら、僕の部屋は宝の宝庫じゃないか」


 僕の部屋には机の上にノートPCがあり、本棚には、いわゆる自己啓発本、マーケティンなどのビジネス本が沢山ある。なんなら、優に100冊は超えているであろうという立派な本の数、そしてそれに引けを取らない程の立派な本棚がある。だが、半分以上は読んでいない。読んでいる本と言えば───5冊───2冊くらいで、唯一の2冊の本は名言集である。


「ふっふっふ、こんなに勉強本があるんだ、これを読めば完璧じゃないか。これさえ読めば…………!!」


 ────────8月15日。


 結論を言おう。読まなかった。読めなかったのではない。読まなかったのだ。そしてやった事と言えば今流行りのBpexのランクを1つ上げたことくらいだ。これに関しては、僕はよく頑張ったと思う。


「───じゃねぇ!駄目だ駄目だ。こんなんじゃ───そうだ!何をやっているんだ僕は。こんな時こそ、人を頼るべきなんじゃないか?頼る人つまり───友人だ。友人でも、ただの友人じゃないぞ。同じ学び舎で学び、苦楽を共にした戦友と呼べる友!あまりしゃべったことはないけれど、話す時はいつだと言われたら今しかない!そうと決まれば─────」


 プルルルルルル。ガチャ。


「あ、もしもし僕だよ!模夢漢だよ。あの相談があって────NewTubeのことで────違う、僕は起業したいんだ───」


「────────────」


「───だから、そういう事じゃなくて!僕がやりたいのは────」


「────────────」


「だから、NewTuberじゃなくてもアドバイスくらいできるだろ?例えばそう、取り組み、方とか考え方とかさ───他にも────」


「────────────」


「あぁ…もういいよ。わかったらサンキューな」


 ────ガチャン。


 それからも数人も当たってみたが、似たりよったりの返答が返ってくるだけだった。

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