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アバロン島に住む大聖賢者  作者: カツヤマ403
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国の病は、国民が治すべし!

国の病は、国民が治すべし!



ブランダーク公爵と嫡男アンドリュー、シュミット侯爵と嫡男メッサー、カーチス子爵、ブリカン王国教会教皇プトレマイオス三世、ブリカン王国王都商会ギルド長バーナード・マドフなど王太子の側近や取り巻きがことごとく処刑された。


また、アバロン島奪還の失策と王太子の敵前逃亡や歴史の捏造に騎士団や軍から離反者が大量に続出し、有能な文官も次々に離れていき、王城は静まり反っていた。


「親父、厄災の魔女に出した賠償請求の返事が『バカめ』とか、今度こそ捻り潰してやる!」


「どうやってだ?」


「前回の3倍の兵力でもって叩き潰す。」


「ふっ・・・、前回は10万だから3倍と言うと30万か?

で、どこからそんな兵を集めてくるのだ!」


「何処からでも集められるだろう!」


「お前の側近と取り巻きのお陰で、国中大混乱のこの時期に集められる訳がなかろう!

そこまでバカなのか?

お前は暫くおとなしくしておれ」


「・・・」


側近の大聖賢者暗殺は、厄災の魔女と大聖賢者が同一人物であると言う情報を元に実行された。

暗殺は成功した、しかし、アバロン島に侵攻してみれば厄災の魔女は生きていた。


「まったく、無能な側近ばかり・・・」


部屋に向かって歩いていると、此方を視認して急ぎ足で向かって来る侍女が眼に入る。


「殿下、カーチス子爵令嬢メディナ様が面会を求めていらっしゃいます。

如何なさいますか?」


「メディナが? 直ぐに通せ!」


「了解しました。」




来客室に向かうとボロボロになったメディナが待っていた。


「チャーチル殿下、助けて下さい。」


「メディナ、その姿は・・・、何があった?」


「お父様が殺害され家督争いが起きて、私は領地に帰されていたのですが・・・、反乱に巻き込まれて・・・」


「わかった、直ぐにカーチス領の暴徒を鎮圧する。


直ぐに兵を集めろ!」


立ち上がると、現在王都にいる騎士団のほか、近衛騎士や警備兵の殆どを引き連れてカーチス領に向かって進軍していった。




チャーチル殿下がカーチス領に出立してから二日、ブランダーク領の暴徒が王都を襲う。


「陛下、ブランダーク領の暴徒が王都に向かっています。

その数20万!」


「全ての城壁を封鎖して騎士団と警備隊に対応させろ!」


伝令の騎士が言い淀み、何か戸惑っている。


「どうした? 早く行け!」


「恐れながら申し上げます。


先日、チャーチル殿下がカーチス領の鎮圧に殆どの兵を引き連れまして・・・、現在王都には、かき集めても500に満たない兵しかおりません。」


「なんだとぉ~、何時だ、何時のはなしだ!」


「二日前のはなしで御座います。」


「クソがぁ~!」


王都は即日陥落し、王族の首が城門にさらされた。


王太子はカーチス領を奪還したものの、殆どの領民を虐殺して逆に民衆の不満を煽った。


王都が陥落したのを知った王太子は、急いで王都に戻るが、途中、王都を陥落させた暴徒と遭遇し騎士団は壊滅、命からがら王都に帰還するも城門にさらされた王族の首を見て発狂して逃亡、その後、王都郊外の森にてのたれ死んだチャーチル王太子が発見された。




「マリ様、企みましたね?」


「あら、何の話ですか? ロールス陛下!」


ロールス元公爵はジト目で賢者マリを睨んでいる、マリはシレ~っと紅茶を飲んでいる。


「マリ様、チャーチル殿下の側近をたぶらかしたメディナを何故処刑しなかったのですか?」


「あら、リストから漏れていたのでしょうか?

処分したつもりでしたが・・・」


「ブランダーク公爵領に王族と公爵家の不正を暴露したのもマリ様では?」


「ブランダーク公爵の自業自得です、大聖賢者暗殺の冒険者をヨークの港に口封じに来ていたのはブランダーク公爵の騎士団ですから、そちらからのリークでしょう」


「それを助けたのもマリ様ですよね?」


「偶々です」


ロールス元公爵は息を吐き、問いただすのを諦めた。


「マリ様は今後どうする予定ですか?」


「私ですか? 私は勿論、アバロン島でスローライフです。」


「本気で言ってますか?」


「2000年前も現在も、本気でそう有りたいと願っています。

そもそも私は、異世界からの召還者でこの世界に深く関わってはいけない存在ですから・・・」


「それにチョッカイをかけるバカやクズがいるから厄介なのです。」


「元々私は異世界で医師でした。

人の病の治療には積極的に介入しますが、国の病はこの世界の人間でお願いします。」


ロールス元公爵は「マリ様が王位に就いてくれると楽なのですが」と呟き二枚の契約書を手渡す。


「こちらはブリカン王国と交わしていた内容と同じにしています、問題がなければサインをお願いします。」


二枚の契約書に目を通し、さらさらっとサインをして一枚を返す。


「ところで、ソフィアを何とかして貰えないでしょうか?」


「何も悪いことをしているわけではないのですから、飽きるまで遣らせて置けば宜しいのでは?」


「しかしですなぁ~・・・」


「そのお陰で陛下の株も上がっているのです、飽きて帰ってきてもロールス王国アサミ教会神殿長の席が用意されているのですから問題無いではないですか?」


「ソフィアがあれ程お転婆で有ったとは・・・」


「公爵令嬢の嗜とか王妃教育とか、女性に慎ましさを求めすぎると爆発するのです。

アサミさんもこの世界に来るまで病で似たような状況でした。」


「マリ様もそうなのですか?」


「・・・さぁ~? どうでしたかしら?」


ゆっくり立ち上がると「私はこの辺で」と声をかけ、転移でアバロン島に帰るのであった。



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