オタクに優しいギャルがオタクに優しいのは理由がある
本日2話目
「ねーねー、はるっちはるっち、いーよねー、羽ばたいてるよねー、ドラマみたいってゆーかー映画みたいってゆーかー、サイッコーじゃん!キャハハ」
近くから声が聞こえたのでふりむくと、その先には頭のてっぺんからつま先までギャル属性に全振りしてる女子、立川さんがいた。
隣の席の立川さんは陽キャだけでなく陰キャにも分け隔てなく話し掛けてくれるし、漫画アニメゲームの話題も流行ってるものならそこそこ話せる。
立川さんはいわゆるオタクに優しいギャルってやつだった。
「見てるだけで幸せになれるよね、立川さんは混ざらないの?」
うん、見てるだけで幸せになれる。
1つ欠点を挙げれば、パシャパシャ写メ撮ってるノッポ眼鏡と目隠れ前髪がウザい。
至近距離じゃないとはいえ無許可で写メ撮ったりして後で怒られても知らんからな、僕に泣きつくなよ。
「いーのいーの、今からじゃ無理っしょ、それよりさー、はるっちはなっちん寝取られたわけだけど、どーなん?どーなん?そっちも気になんだけど?」
「へっ?寝取られたって何それ?」
「幼馴染でそこそこイイ感じでやってたじゃん、なっちんの方がはるっちスキスキーって迫ってなかった?ミハルに寝取られてんじゃん」
ん?学校でスキスキーなんて迫られた事は無かったと思うんだが?
立川さんだし表現が大げさなだけだろう。
「寝取られとらんわ、幼馴染としての付き合いが長いからそう見えたのかもね」
寝取られてない、むしろ増えた。
「ふーん、解釈違いとかゆーやつ?まーいーや、はるっちはカノジョほしーとか思わない系?誰か好きな人おらんの?」
ウリウリと肘で肩を突きながら聞いてくる立川さん。
距離感近い。
女子ってみんな良い匂いするよなー、電車でたまに香水かけ過ぎだろって人もいるけど、立川さんは強めではあっても過ぎてはいない。
ミハルの匂いは良い匂いだったと思うけど頭がボーッとし過ぎてよく分からなかった。
夏樹は夏樹の匂いだな、うん。
「まあ、いるよ」
好きな人も彼女もいる。
立川さんと恋バナとか初めてだな、この空気のせいだろうけど。
「だれだれ?おねーさんに教えてみ」
「ミハル」
好きな人、だけなら嘘を吐く必要性を感じなかったので正直に答えてみた。
「うえっ!?……あっ……あーー……あちゃー……ってはるっちもそっちだったかー、うーん、えっと……複雑よねー、次いこーとか思わんの?カップルなっても同性だからワンチャンあるかもとか考えてる?追いかけるのキツいんじゃね?いや、カップルなる前から無理筋じゃね?」
いつもテンションが高い立川さんが珍しく暗い表情をしたけどすぐに戻った。
しかし下がったテンションを無理矢理上げようとしているのか、立川さんの話すスピードが早い、超特急、普段から早いけど。
ミハルの名前を出したのは失敗だったかな?
立川さん限定だけどせっかくの空気に水を差してしまった感がある。
「次とかはまだいいかな、そういう立川さんはどうなの?」
「あっし!?あっし今は家の手伝いがたのしーからカレシとかまだいーかなって、好きな人からコクられたら即オッケーするんだけどねー、はるっちはミハルとまだワンチャンあるかもとか考えてるん?ここらでイメチェンとかどーよ?はるっち素材は良いんだからもったいないってー」
イメチェンか……夏樹と付き合う事になっても考えなかったけど、ミハルとデートとかする事を想像したら……今のままじゃ釣り合わないよなぁ、イメチェンしても釣り合える気がしないけどさ。
「イメチェン、してみようかな?」
「おっ!乗り気じゃん!いーね、なっちんも誘えたりする?もう難しかったり?」
同性愛的な意味じゃないだろうけど立川さんも夏樹が好なんだろうな。
夏樹ファンクラブのカードとか見せてもらった事あるし。
「良いよ、誘ってみる」
「絶対!絶対だよ!約束だかんね!」
「夏樹も来るかどうかは絶対じゃないからね?」
「ガンバレ!チョーガンバレ!」
「いや、頑張らないから、一言聞いて駄目だったら僕だけで行くから」
「むー、カップルじゃなくてもペアで来てくれた方が楽なんよね」
一人客よりはカップルの方が売れそうだわな、単純に客数2倍だし、財布の紐とか緩くなるだろうし。
「それ、客に言わない方が良いやつじゃ?」
「はるっちには言った方が良い、ってあっしのシックスセンスが絶叫してるんよ」
「立川さんのシックスセンス賑やかだな、チョーウケルンダケドー」
立川さんの決めゼリフ?を真似てみた。
「プッ!何その宇宙人みたいな喋り方、チョーウケルンダケドー」
確かに宇宙人みたいだった、笑う。
立川さんがオタクに優しいギャルなのには理由がある。
家が美容院とアパレルショップをやってるからオタクに営業をかけているのだ。
陽キャ連中にも営業かけてるからオタクだけに優しいってわけじゃないけど、誤解してるやついるだろうな。
席が隣、夏樹の幼馴染、家業の営業、これだけの条件が揃っていなかったらこれほど仲良くなれる事は無かっただろう。
と、そこへ
「春斗、写メ撮ってよ」
「……あっ、うん」
夏樹とミハルがいつの間にか近くにいた。
カッコイイとカワイイが横に並んでいて最強に見える。
視線が痛いんですけど?
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