表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/13

私を幸せにしてくれる王子様【ミハル①】

2023/02/23改稿しました。

後の展開に影響があるレベルです。


 ミハルという名前を私に付けた父は私が幼かった頃に母とは別の女性と関係を持って、私と母を捨てたのだと母から聞かされた。

 有鬼堂ミハル、それが今の私の名前。


「いい?男はみんな嘘吐きで簡単に裏切るんだから信用してはいけないわよ」

「男より強くなりなさい男より賢くなりなさい、その為には美貌を磨いて勉強も頑張らないといけないのよ」

「ミハルにはあいつの血が半分流れているけど、私の言う事だけを聞いて頑張れば幸せになれるわ、でも私の言う事を守らないと不幸になるのよ」


 在宅の仕事をしていて、いつも一緒にいてくれた母は私に色んな事を教えてくれた。

 異性との関わり方や、私が幸せに生きる為の方法。

 私達を裏切った父がどんなに悪い人だったのか。


「この傷は私の心の傷よ、ミハルがワガママを言って私を困らせたから傷ついたの、凄く痛いのよ、死んでしまうかもしれないわ」

「ママしんじゃやだー!!うわぁぁぁぁ〜ん!!」


 ハサミを私の手に持たせて、そのハサミで自分の手を傷付けた母はワガママを言って母を困らせる駄目な私を叱りつけてくれた。

 母が手から血を流しているのを見ると、本当に死んでしまうのかと思って恐怖に震えた。 


「有鬼堂さんのお母さんって、ちょっと変じゃない?」


「変なのかな?」


「束縛しすぎじゃない?学校であった事とかお小遣いの使い道とか、全部報告しないといけないなんて厳しすぎるわ、私だったら我慢できないし」


「厳しいとは私も思うけど、お父さんがいなくて母子家庭だから仕方ないかなって思うのよね、みんなを羨ましいって思う事もあるけど」


 誤魔化した返答をしつつも中学高校に進むにつれて私の母が変だと考えるようにはなってきた。

 その頃からだろうか、私が男子からラブレターをもらったり呼び出されて告白される事が増えたのは。


 そして高校の入学式で私は運命の出会いを果たした。

 母が好きだという女性だけで構成された劇団では、男性役も女性が男装をして演じるのだけど、その男性役の中でも1番人気のある人にそっくりで、王子様が物語の中から出てきたようで、一目で私は恋に落ちた。


 やはりと言うべきか同じ女子なのに女子からは強い人気があるようで、桃島夏樹さんという名前を知るのは簡単だったけど、中学3年の頃に何かあったのか告白した女子を避けるようになったらしく、仲良くなるまでには時間がかかってしまった。


「ミハルさんの家って、大きいんだ、驚いたよ」


「今は母との二人だけなので掃除が大変なだけなんですけどね、夏樹さんなら母も気に入ってくれると思うので自分の家だと思ってくつろいで下さい」


 夏樹さんを私の家に呼んで母に紹介すると、母は予想通り大喜びで歓迎してくれた。

 その日から夏樹さんの話をすると母の機嫌も良くなって、夏樹さんと遊ぶならと小遣いも増やしてもらえて使い道の報告も無くなった。


 夏樹さんは私を幸せにしてくれる王子様だ。

 恋人になってもらいたいけど、告白すると距離を取られるという噂もあって告白できない、告白しても振られるだろうし……。


「ミーちゃん、今日は二人でご飯食べない?」


 夏樹さんは普段は男性みたいな口調だけど、特に親しい相手、今のところ春斗くんと私だけだと思う、の前ではかわいい口調になる。

 男性みたいな口調の方が容姿にあっているけど、かわいい口調はギャップがあってたまらない。

 スマホで録音させてもらえないかな?寝る前に繰り返し再生したいし、朝は夏樹さんの声でおこしてもらえたらその1日は幸せに過ごせそう。


「ええ、もちろん良いわよ、どこで食べるの?」


「理科室の鍵を借りれるからそこで食べようね」


 嬉しい!夏樹さんが私を誘ってくれるなんて、しかも空き教室に二人きり。

 何か楽しいイベントが待ち構えている予感に私の期待は大きく膨らんだ。


「私ね春斗の事が好きなの、幼馴染でまだ告白出来ないでいるんだけどね、ミーちゃん上手くいくように協力してくれない?」


「っ……うん良いよ、私に出来る事なら協力するわ、どうすれば良い?」


 えっ……そんな……うっ……


 春斗くんの事は家が隣の幼馴染で一緒に登下校してるだけの関係だと思っていたのに。


 春斗くんは背も高い方では無く女子としては高い方の私やミハルと同じぐらい、顔は不細工ではないがモテるようなイメージは無いし夏樹さんと並んで歩く姿はいつも不釣り合いだ。


「私と春斗とミーちゃんの3人で下校するようにして、私と春斗はお似合いだとか付き合えば良いのにとか、そういう方向に話を流してほしいの」


「うん……分かった、頑張って協力するわ」


 あいつのどこが良いんだろう?

 夏樹さんが悲しむのは嫌だから協力はするけど、断ってくれないかな?

 私と恋人になってもらえなくても良いから友人としてもっと一緒にいてもらえないかな?


「良かったありがとう、じゃあさ今日から春斗と私とミーちゃんの3人で下校しよ、他の人はテキトーに理由つけて振り払ってね、それと3人でいる時は私の事をナッちゃんて呼んでね、その方が仲良さそうでしょ?」


 ナッちゃんか……私としては夏樹と呼び捨てにしたいしミハルと呼び捨てにして貰いたいけど、嬉しいのは嬉しい。



「有鬼堂さん!好きだ!俺と付き合ってほしい!」

「ごめんなさい、好きな人がいるのであなたとは付き合えません」


 クラスメイトでも無い知らない男子、いえ名前は覚えてるから知らないわけでもないか、が私を呼び出して告白してきた。

 夏樹さんを待たせてしまうのは申し訳ないので迷惑でしかないのだけど、母の言い付けどおり学校の生徒は敵に回さないよう味方につけておきたいから邪険にもできない。


「ごめん!待たせちゃったね、じゃあ帰ろっか」


 待ってもらっていた夏樹さんに謝罪しながら駆け寄る。


「ミーちゃん、凄くモテるよね、告白してきた人ってサッカー部の次期エースとか言われてて人気のある人でしょ?」


「えっ、そうなの?サッカーに興味あまりないから知らなかったわ」


「好きな人に告白しないの?ミハルなら多少無理めな相手でも可能性ありそうだけど……先生の誰かだったり?」


「ふふっ、先生じゃないわよ、でも可能性はほとんど無いかな、その人には好きな人がいるし、いなくても私と恋人にはなってくれそうにないもの」


 春斗くんには私が先生と付き合うようなふしだらな女性に見えているのかしら?

 夏樹さんの前で私を悪く言うのはやめてほしい。

 ミハルと呼び捨てにするのも夏樹さんがそう呼ぶように言っていたから受け入れているけど、少しイラッっとする。


「ミーちゃん、その人が誰かは教えてくれないんだよね、私の好きな人は教えたのに」


「ナッちゃんには話せないわ、それにナッちゃんも好きな人に告白してないじゃない」


「えへへ、それが上手くいきまして、私達付き合う事になりました」


「あ……そ……そう、上手くいったのね、おめでとう……」


 夏樹さんの表情は本当に幸せそうで、春斗くんが好きなのは本当だと嫌でも伝わってくる。


 ああ……私の幸せな時間が離れてしまう、終わってしまう。

 そう思いながら必死に笑顔を崩さないように堪えたけど、涙は溢れ出て止めようが無かった。


「どうしたの?ミハル」「ミーちゃん大丈夫?何で泣いてるの?」


「私……私が好きなのはナッちゃんなの!気付いたらどうしようも無く好きになってて無理だって分かってるのに……うう……」


 ついに告白してしまった、今更告白しても困らせるだけなのに……


「ミハルがそんなに辛いなら僕は夏樹と付き合うのはやめても……」


「そんなの駄目よ!」「それは絶対駄目、ナッちゃんを悲しませないであげて」


 春斗くんがとんでもない事を言う、こいつも女性の気持ちを考えられないのか?あっさり女性を裏切るような男なのか?

 夏樹さんが駄目だと叫んだから話を合わせて別れるのを止めたけど、別れてもらった方が良いのでは?

 でも別れた方が良いと言ったら夏樹さんに嫌われてしまいそう、どうすれば良いの?


「僕はどうすれば……ミハルもそう言うなら別れたりしないけど」


「春斗はまだミーちゃんの事が好きなんだよね?」


「うん……ごめん、付き合っといて不誠実だとは思うけどまだ僕はミハルが好き、夏樹は幼馴染だし一緒にいて楽しいから恋人になれるのは嬉しいと思ったけど」


「私は春斗が好きよ、大好き、小学生の頃からずっと好きで今はもっと好きなの、私を好きになって貰いたい、その為なら何でもするから……」


 春斗くんのどこが良いんだろう?私の好きな人はこの男のどこが好きなんだろう?分からない。


「ねぇ、ミーちゃんは私の事どれだけ好きなの?」


「夏樹の事は大好き、ここまで誰かを好きになったのは初めて、夏樹の為だったら私だって何でも出来る!……夏樹が春斗くんと恋人になって、私が夏樹と一緒の時間が無くなっていくのは辛いけど我慢も出来る……」


 ナッちゃんと呼んでほしいとお願いされていたけど、夏樹と呼び捨てにする、その方が気持ちが伝わりそうな気がした。

 我慢出来ると言ったけど、本音を言えば我慢出来そうに無い、そんな男とは別れて私と付き合ってほしいと叫びたい。

 でもそれ以上に夏樹さんに嫌われたくなかった。


「じゃあさ、私がミーちゃんの恋人になったらミーちゃんは春斗と恋人になってくれる?」


「えっ?それってどういう事?」


「3人で恋人になるの、私は春斗の恋人だけど、ミーちゃんとも恋人になって、ミーちゃんは春斗とも恋人になるの」


「それは……嫌では無いけど……いえ夏樹と付き合えるなら春斗と付き合っても……夏樹がそれで良いなら喜んでくれるなら夏樹の次ぐらいには春斗くんを好きになれると思う」


 悪くない……むしろさっきまでの最悪な状況からすれば夏樹さんと恋人になれるのは幸せだと思える。

 たとえこの身を好きでもない男に差し出す事になっても。


「ちょっと待って!?それっておかしくない?3人で恋人なんて」


「春斗は嫌なの」


「嫌では無いと思う……むしろ嬉しいけど、おかしいと思う」


「嬉しいならおかしくても良いでしょ?」


「良いのかな?」


「良いんだよ、3人で幸せになろうよ!」


「そこまで言うなら分かった、3人で恋人になろっか」


「ねえ、3人で恋人になった記念にキスしよっか」


「キスしたい!夏樹とキスしたいとずっと思ってた、夏樹と春斗がキスした後なら春斗ともキスしたい、夏樹との間接キスなら嬉しい」


 良いの!?夏樹さんとのキスは何度も妄想して、でも叶わないだろうと諦めていた夢のような話だ。

 でも男性とキスするのは絶対に嫌だ、だけど正直に言ったら夏樹さんに嫌われそうだから嫌われないようにその部分は嘘を吐く。


「ごめん、正直頭の中がぐちゃぐちゃで話についていけてないけど、僕もミハルとキスしたいと思った事はあるし、夏樹とキスするのも嬉しいかもしれない」


 キスの順番はすぐ決まった。

 春斗と夏樹さんがキスして、私と夏樹さんがキスして、私と春斗くんがキスして。


 どうせなら夏樹さんのファーストキスは私が貰いたかったけど、夏樹さんの気持ちが優先だから仕方ない。


 夏樹さんと春斗くんの顔が重なり唇が触れ、そして離れると夏樹さんの表情に私の視線は吸い込まれる。

 頬をほんのりと赤らめ目尻に僅かに涙を浮かばせて、これまで見た誰の表情より幸せそうな、喜びを溢れさせた表情をしていた。


 しばらく見とれていたがいつの間にか目の前に夏樹さんがいた、時間の感覚がおかしい。


 夏樹さんの顔を近くで見ると凄くドキドキして、唇を触れ合わせるともっとドキドキして顔がにやけないようにするのが大変だった、いや絶対にやけてる、どうしようもないぐらい崩れてるに違いない。


 夏樹さんがどんな表情をしているのか気になって仕方ないけど、私の恥ずかしい顔を見られたくない想いで顔が上げられない。


 その後は春斗くんとキスをしなければならない、男性とキスするのは嫌だけど断れない。

 これは夏樹さんとの間接キス、これは夏樹さんとの間接キス、と何度も頭の中で繰り返して気持ちを落ち着ける。


 でも本当に嫌なんだろうか?夏樹さんの幸せな表情を思い浮かべると期待と憧れが存在する事に気付く。


 春斗くんの顔が近くにくると良い匂いがして……あれ?嫌じゃない。

 優しくキスされる。

 私の男性のイメージでは舌を無理矢理入れられたりもっと強引に貪られるようなキスをされると思っていたのに。


 夏樹さんと春斗くんのキスも優しいもので、それを見ていたのに何で私は強引なキスをされると思ったんだろう?


 胸がトクントクンと心地良い振動を鳴り響かせる。

 それは夏樹さんとのキスで感じたドキドキとは違うけど、決して嫌なものでは無く……心地良いもので……


 胸の鼓動が落ち着くと、私にかかっていた悪い魔法が解けたような、そんな不思議な気持ちになっていて、3人で恋人になる事が決まった時の期待と不安の、不安だけが消えていた。


 夏樹さん、私の王子様が私を不幸にするはずが無かったんだ。

 男性は私を不幸にする存在だと思っていたけど、夏樹さんが選んだ彼だけは違うんだろう。

 そう考えると春斗くんへの興味が良い意味へのものへと変わっていく気がした。

 

 私は夏樹さんが好き、大好き。

 きっとこれからも私の地獄を甘い薔薇色に塗り替えてくれるはず。

 私は更に深く恋に落ちた。

(・ω・)良かったらブックマーク、評価くだちぃ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ