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トラウマ

「おい、聞いたか?国分が佐々木さんを放課後体育館裏に呼び出したって」

「また告白か?多いよな最近、なんで?」


「いや多いのは当たり前だろ、桃島さんと有鬼堂さんが良い雰囲気になってるってんで昨日までは焦って桃島さんと有鬼堂にアタックするヤツが増えてたし、今日からはどっちか狙ってた男子も女子も桃島さんと有鬼堂さんは諦めて別な相手狙って動き出してるよ」

「へー、そんな事になってんだ」


「それに今日告白したら上手く行きそうな雰囲気あるじゃん?ビッグカップル誕生、じゃあ俺も私もみたいな」

「ああ、なるほど」

「なるほどってお前はどうなんだよ」


 帰りのホームルーム待ちの時間、今日はいつもより賑やかだなーとか思いながら教室内を見渡す。


 2−Cが僕のクラスだ。

 何故か、というか理由は分かってるけど陽キャが多く陰キャは少ない。

 まあ、陽キャと陰キャの違いだとか境界線だとかは曖昧な物で、コミュ力だとか見た目だとか雰囲気だとかでしかないのだけど、僕の認識としてはそんな感じ。


 陽キャが多い理由は夏樹とミハルが同じクラスなのがまず原因だろう。

 夏樹とミハルが同じクラスになれたからと気を引きたい一心でイメチェンするクラスメイトが続出。


 それに加えてオタクに優しいギャルこと、陰キャを陽キャに転生させちゃうマシーンな立川さんがいた。


 陰キャ大虐殺(誰もしんでない)それがこの1ヶ月ほどで発生した事件だ。


 だがしかし、昨日まで友人が自分と同じ陰キャだと思って安心していたら、次の日からイメチェンして陽キャに様変わりしていてどう接すれば良いか分からなくなる絶望の時代を生き抜いた陰キャはいた。


 僕を含めて3人……いや、女子にもう一人いたから4人か。

 僕も近々立川さんに処理されてしまうかもしれないが許してほしい。


 ノッポ眼鏡こと新見、こいつは単純に家が貧乏で下手に金がかかる陽キャになる気はないらしい。


 9人家族の長男で親は町工場を経営しているらしいがあまり上手くいってないそうだ。

 借金もあって返す為に町工場以外の副業やアルバイトもしてるがカツカツの生活。


 散髪とか家族同士でやってるぐらいだし、染めたりとかしないだろうし、学校外で金のかかる付き合いも難しいし、バイトで時間も無い。


 お金無いって辛いよなー、と今でこそ高校生としては破格に余裕のある身だが、僕も小学生の頃2年間ほど貧乏生活をした事があった。


 ITバブル崩壊。

 煽りを受けた両親の会社の資金繰りが一気に悪化してその影響は生活にまで及んだ。


 仲の良い夫婦だがこの頃初めて喧嘩をする様子を見た事がある。

 見てないところで喧嘩ぐらいしてるとは思うが、直接見たのは後にも先にもその一回だけだった。


 まあ、それぐらいお金が無いってのはキツい、その経験以来、無駄遣いというか散財するのに極端に臆病になってしまった自覚はある。


 僕が陰キャ寄り、ガチガチの陰キャだと認めたくないが、なのは新見と同じではないがお金を無駄に使いたくないという点では同じだろう。


 そしてもう一人、前髪で目を隠した荒里はトラウマを抱えている。


 僕と荒里は1年の時も同クラスだった、そんなある日の事。

 僕は、高校1年の時も同じクラスだった荒里から秘密を打ち明けられた。



「その前髪邪魔じゃない?前見えるの?」


 荒里の前髪は両目が完全に隠れるぐらい伸びてる。


「邪魔だし、前は見えるけど視界は悪いよ」

「切らないの?」


「切らない、これで良いんだ」

「ふーん、自分がそれで良いんなら良いんだろうな」


「何でこうしてるか理由聞きたい?」

「したいから、って以外にも理由あるの?話してくれるなら聞きたいかな」


 興味はある、無理に聞こうとは思わないが。


「女子には絶対に秘密にしておきたいんだけど、王様の耳はロバの耳みたいな、誰かに聞いてほしいというのもあってさ、春斗くんなら秘密守ってくれるよね」


 ああ、分かる。

 秘密を誰かに打ち明けたいって誘惑は誰もが持ってるんだろうな。


「うん、僕は可能な限り秘密は守るよ」


 秘密バラしたら友達減るぞ、バラされた方が。

 何故かバラした方は減った分増えたりしてトータルではプラマイゼロみたいな事になるのよね、世の中理不尽。


「可能な限りなんだ?」

「銃とか突きつけられて脅されたりしたら守れない」


「あはは、その時は良いよ、じゃあとりあえずこれ見てよ」


 と言って前髪を右手ですき上げる荒里。

 その下から現れた素顔はかわいい寄りのイケメンフェイス。


「はぁっ!?」


「自意識過剰って思われるかもしれないけど、中学生の時はモテたんだ」

「自意識過剰じゃないと思う」


「モテたのは嬉しかったんだけどね、調子に乗っちゃっててさ」

「イジメられたとか?」


「イジメとはちょっと違うかな、女子複数人に空き教室に呼び出されて、無警戒で何も考えずに行っちゃったんだ」

「ほうほう」


「そこで見せられたんだ」

「何を?」


「僕と同じ名前のキャラが掘られてるBL同人誌」

「ホワッツ?」


 ふぁっ?


「僕と同じ名前で僕と似た特徴のキャラが男に掘られてるBL同人誌を見せられながら、ここはどうだとか解説されたり、これと同じポーズとってとかお願いされたりしてたと思う、記憶がちょっとあやふやだけど」


「……エグい……女子ってこわいな……」


 悪意は無かったんだろうな……。


 普通にしてる分にはかわいいとか仲良くしたいとかしか思わないけど、怒りや欲望といった感情を剥き出しにしてる女子に取り囲まれるのはこわい。


 女子とトラブったらたいてい男子の方が悪者にされるから、囲まれたりなんかしたら身をすくめて耐えるしかないんだ、控えめに言ってしねる。


 コミュ力の高い陽キャとかならまた別の対応方法とかあるんだろうけど。


「うん……こわいんだ……」


 この日から僕と荒里は友人から親友になった。

 高校2年で夏樹と同じクラスになってから荒里は新見と一緒にいる事が増えたけど、今でも親友なのは変わってないと思ってる。

(・ω・)ポイントが作者の餌になります。


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