ご褒美【ミハル②】
告白しあい3人で恋人になる事が決まりキスをして、その余韻が薄れた頃合いに
「この後はどうしよっか?私の家に集まる?春斗の家に行く?ミハルの家に寄る?」
「ごめんなさい、私の家厳しくて寄り道とかできないの。ナッちゃん、もし良かったら私の母を説得するのを手伝ってもらえないかしら」
母を説得して門限を緩くしてもらうか無くしてもらわないと学校以外で一緒にいる事は出来ない、でも夏樹さんの手助けがあれば上手く説得出来る確信があった。
私と同じく母もまた夏樹さんに夢中だ。
以前、家に招いた日はずっと母の機嫌が良くお小遣いを増やしてもらえて使い道の報告も無しになった。
「えーっと……春斗、どうしよう?」
夏樹さんは少し考える素振りを見せてから春斗くんに尋ねた。
今は春斗くんと一緒にいたいわよね、私も夏樹さんと一緒にいたいからよく分かるわ。
「僕も手伝うよ、って言いたいとこだけど夏樹だけの方が良いみたいだね?」
「ええ……母は男の人が嫌いで、出来れば春斗くんともお付き合いしてる事は秘密にしておきたいの、夏樹さんの事は母も気に入ってるし一緒に説得して貰えたら上手くいくと思うわ」
「分かった、行って来なよ」
あれ?思っていたよりあっさり受け入れられてしまった。夏樹さんや私と一緒にいたくないの?分からない。
☆
電車に乗り私の家の最寄り駅に着いたところで下車する。
「結果は連絡するね」
ミハルさんが春斗くんに手を振っていたから、私も真似をするように手を振っておいた。
私の家へ向う途中、先程の疑問を夏樹さんに聞いてもらう。
「春斗くんはあっさりと受け入れてくれましたけど、私達ともっと一緒にいたいと思わないんでしょうか?」
キスの後は舞い上がってしまって春斗くんがとても良い人のように思えたけど、やっぱり少し冷たい人なのかな?
「春斗はね、優しい人なんだ、自分の気持ちより私や周りの人の気持ちや都合を優先してくれるの、それですれ違ったり失敗しちゃったりする事もあるけどね」
私が愛する人の信頼と愛情を独占してしまっている春斗くんが羨ましい。
夏樹さんの寵愛を手に入れているという点で私は春斗くんに完膚無きまでに負けてしまっている。
私は負けヒロイン。
でも何の因果か負けを知った直後に逆転して最愛の人と恋人になる事ができてしまった。
夏樹さんの事だけでは無く春斗くんの事ももっと知りたい。
「さっきはありがとうね」
「えっ?」
「私を悲しませないであげて、って春斗に言ってくれた事、本当に感謝してるの」
「そ、それは当然の事だから」
「ミハルは私に何かしてほしい事はある?私のお願いを聞いてくれたし助けてくれたからご褒美あげる」
「でも、母の説得を手伝ってほしいという私のお願いを聞いてもらってますし」
「それは3人で一緒にいる為に必要な事でしょ?ご褒美に含めなくていいわ、それともご褒美いらない?」
夏樹さんにしてほしい事……いっぱいあるけど……
「ハグしたいです、ギュッと抱きしめてほしい」
ずっとそうしたいと思って何度も夢見た事の一つ。
「良いよ、おいで」
誰かに見られていないかとも気にせず、腕を広げた夏樹さんに飛び込む。
「ミハルは欲が無いね、春斗がご褒美をくれるってなったら私は……」
何だろう?でも今は良いや。
ああ幸せ、胸の鼓動が心地良い、こんな幸せな1日を超える幸せな1日は私のこれからにあるのだろうか?
夏樹さんが隣にいればそれも叶うはず。
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