ぼくのお名前はミータ
ぼくのお名前はミータ。
どこにでも売っているネコのぬいぐるみ。
クリスマスの日にサンタさんに連れられて、このお家にやってきた。
ご主人と始めて会ったとき、とびきりの笑顔でお名前を付けてくれたんだ。
「お母さん、サンタさんからプレゼントがとどいたよ!」
「良かったわね、きっと貴方がいい子にしてたからね!」
とっても優しい声が聞こえたら、暗い箱の中から出してもらって、ご主人がギュッとしてくれた。
「かわいい! そうだ! この子にお名前をつけてあげなきゃ!」
ベットにぼくを置いて、ご主人は色々考えてる。
「ネコさん、どんなお名前がいい?」
また抱っこされてギュッとしてくれた。
「そうだ、あなたのお名前はミータにしよう! これからよろしくね、ミータ!」
うれしいな! ぼくのお名前、ご主人がくれた宝物。
ずっといっしょにいたいな優しいご主人と。
「ひっく、ひっく」
ご主人が泣いている。
どうしたの?
声をかけても聞こえていない。
大丈夫?
そばに行きたいのに動かない。
ドンドンと音が聞こえると、ガチャてドアが開いて、サンタさんがご主人をギュッとしてあげた。
「どうしたの? 怖い夢を見たの?」
「うん、こわいユメみた」
サンタさんが部屋から出ていったらまた、ご主人が泣いている。
どうすれば、ぼくもご主人をギュッとしてあげられるのかな?
それから、いっぱい一緒に遊んで、たくさん同じベッドでおねんねしたら寒くなってきた。
窓からお外を見てたら、空からワタ菓子が降ってくる。
ご主人はやく帰ってこないかな。
ダンダンダンと階段を上がる音が聞こえる。
あ、ご主人が帰ってきた!
今日もいっぱい遊んでくれるかな?
「ふ、ふ。今日からあなたはリザちゃんね!」
あれ? ご主人が知らない子を抱っこしてる。
あの子は誰だろう?
あの子が来てからご主人は僕と一緒に遊んでくれなくなった。
いつも一緒にいたのに、遊んでくれたのに、どうしてだろう……。
雨がいっぱい降って、風が吹いて、朝と夜がたくさん、たくさん過ぎていく。
お部屋の中が騒がしい。
ご主人が箱の中にいろいろと入れている。
なにをしてるんだろう?
たなの上からながめていたら、ぼくも、おんなじ箱の中に入れられた。
真っ暗な中で思い出す。
ご主人との楽しかった思い出を……。
バリバリバリとテープをはがす音がする。
僕は優しく抱きかかえられた。
ご主人?
違う、ご主人じゃない。
「お母さん、ネコさんのぬいぐるみ見つけた!」
「それはね、昔お母さんがサンタさんからもらったプレゼントなの。その子はあなたにあげるわね」
え、僕をもらった?
あなたはサンタさんじゃないの?
あなたはだれ?
「わ~い、じゃあお名前つけてあげなきゃ!」
「ごめんね、その子のお名前は決まっているの」
「なんていうの?」
「その子のお名前はミータ」
僕の名前はミータ。
どこにでも売っていた、ネコのぬいぐるみ。