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高嶺の花だったのは過去の話でしょ?  作者: 国見双葉
1章 高嶺の花、戦力外通告を受ける
14/35

13話

そ、それは一体どうしてですか?!!


と、テーブルから身を乗り出して興奮気味に問い詰めたりすることはなく、笹川さんはあくまで冷静に自分の指と指を絡ませながら、ゆっくりと口を開いた。


「理由を、お尋ねしてもよろしいでしょうか」


笹川さんの問いに、口を開かない南雲先生。


「南雲先生。見苦しい姿なのは承知の上でもう一度伝えますが、どうかお願いします。我々ぎんがの未来を、救ってはくださらないでしょうか。今のぎんがを廃刊から救えるのは、若き天才と謳われ、幅広い世代から絶大な支持を誇る先生しか居ないんです」


笹川さんは、土下座しそうな勢いでもう一度頭を下げた。


「私からもお願いします。私たちには松井くん・・・。いいえ。南雲先生のお力が必要なんです」


正直、私にぎんがへの思い入れはまだない。


だけど、どうも他人事とは思えないその境遇に親近感を抱き、少しでも貢献したいと思った。

それに、例え容姿が目的だったとしても、こんな私なんかを大事な場面で必要としてくれたその恩に見合うだけの仕事はしたい。


それらの想いから、私もかつての同級生に向かって深々と頭を下げた。


南雲先生はすぐに「頭を上げて下さい」と私たちの行動をやめさせようとしたが、ぎんがも私も、そんな生半端な覚悟でこんなことをしている訳じゃない。


その覚悟が伝わったのか、南雲先生は「はあ」と大きなため息をつき、ようやく重い口を開いた。


「書けないんです」


その声は、見ているこっちも気の毒に思えてしまうほどに酷く震えていた。


「すいません、言葉足らずでしたね。別に純文学を書けという要求をしている訳じゃありません。ただ、南雲先生が書きたいものを、自由にうちで書いて頂ければそれでいいんです。内容についても、先生であれば大幅に譲歩します。異世界ファンタジーを連載する文芸誌。いかにも新しくて良いじゃないですか!」


「違うんですよ」


説得する笹川さんに、反応を示さないどころか、ますます表情を曇らせる南雲先生。


笹川さんと私は、息を呑んで南雲先生の次の言葉を待った。


そして彼は、まるでピーク時のコンビニ店員の接客のような淡々とした口調で告げた。


「文章が、浮かばないんです。ストーリーも、キャラクターも、セリフも。この世の全ての時が止まってしまったかのように、もはや創作に対する情の何もかもが湧いてこないんです」





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