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声をかけてきたのは、オウデン・デンだ。
彼は平民だが何かと話が合う。
黒色の髪の毛と瞳をしていて、どこかエキゾチックな雰囲気がある。
しかし、性格は人懐っこい犬のようだ。
「アバン様とメロディ嬢が別れたって話をしているの」
ルチェが簡単な説明をすると、オウデンは「ああ、なるほど」と呟いた。
「最近、確かにべったりではないんだよな。アバン様が距離取りたがってる感じだったんだけど、そういうことだったのか」
オウデンは二人の余所余所しさにどうやら気がついていたようだ。
自分よりもこういった細やかな事に気がつくオウデンに、なぜか負けたような気分になってくる。
知らない間にこんな事になっていたなんて、もう少し周囲に興味を持つべきだったかもしれない。
「へ、へぇ、そうなんだ」
全く気が付かなかった事に後ろめたさを感じていると、オウデンはクスリと笑った。
「まあ、アバン様と結婚する人は苦労するだろうな」
「ね、気の毒」
オウデンとルチェは他人事のようにくすくすと笑っている。
他人事だから仕方ないのかもしれないけれど、苦労するのが私なのでなんだか嫌な気分になってきた。
「笑いすぎじゃない?」
「泥沼が待ってそうで楽しみだろう?」
「そうね」
二人が考えている通り修羅場は確実にやってくるだろう。
もしも、私がアバンの婚約者だと知ったら二人は他人事だからと面白がるのだろうか。それとも、心から心配してくれるのだろうか。
想像ができない。
「最低ね。二人とも」
ようやくそれだけ言うと私は二人から目を逸らした。
「リイスは、いい加減そうに見えて真面目だからそういうの面白がらないもんね。ごめん」
オウデンは謝るけれど慰められた気分にはならなかった。
『いい加減そうに見えて』とは、どういう事なのだろうか、私は無意識にオウデンの胸ぐらを掴んでいた。
「いい加減そうに見えてってどういう事よ!」
「そういう所だよ!」
オウデンは呆れた様子でそう突っ込んできた。
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オウデン・デン
オデンデンデデンです