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顔合わせをサクッと終わらせた数日後、私は学園でアバンとメロディの事について探りを入れる事にした。
探りといっても聞ける相手は、数人しかいないけれど。
私はとりあえず一番仲のいい友人のルチェ・フルに手っ取り早く話を聞く事にした。
「おはよう」
「おはよう」
「ねえ、アバン様とメロディ嬢のこ……」
前振りも面倒だったので、ズバッと本題を出すとルチェは大慌てで私の口を塞いだ。
「しーっ!それ口に出したらダメなやつ!」
ルチェの勢いは鬼気迫っていて、絶対に言ってはいけない事を私が言い出した時のような勢いだ。
まるで、私がハゲの教諭に面と向かって「ハゲ野郎」と言う寸前で止められた時と同じだ。
その様子から、この二人の関係が微妙なものになっていた事を知る。
「後から言うわ」
「う、うん」
知りたくない事を知るような、そんな微妙な気分で私は昼食の時間まで授業を受けた。
そして、昼食の時間になった。
私とルチェは人気のない裏庭で食事をとる事にした。
ルチェは、周囲をかなりくまなく見回すとようやく口を開いた。
「アバン様とメロディ嬢が別れたみたい。人前で話す内容じゃなかったからここで話すけど。学園では禁句だからね」
「へっ?」
「全然気が付かなかったの?空気読んでよ」
ルチェの口調から相当な事があったのだろうと察する。
「メロディ嬢がアバン様の屋敷から追い出されたみたいで今は寮にいるみたいよ」
「へーっ、そうなんだ」
私は若干だが棒読みになりながらも適当に相槌を打った。
アバンの言う通りちゃんとしたけじめはつけたようだ。
追い出した。とは、穏やかなものではないけれど、本当の意味でそれをしたらメロディはこの学園から去らないといけなくなるので良心的な対応だと私は思った。
王立学園というだけあってこの学園の学費は高い。
没落した平民のメロディにそれを支払うことはできない。
おそらくアバンの両親がそれをしているのだろう。
まあ、私には関係のないことではあるけれど。
「アバン様が心変わりしたみたいよ」
「へぇ」
私と結婚する気になったのだから、心変わりしたといえばその通りかもしれない。
「だからね、二人の親衛隊がピリピリしてるの」
二人の親衛隊という言葉に背筋がぞくりとした。
アバンとメロディの事を応援している人はかなりいる。
それで、トラブルになった話をたまに聞く事もあった。
「なんで?」
「推しのカップル以外認められないんじゃないの?身勝手よね。二人とも感情があるんだから。好きじゃなくなったとしても仕方なくない?永遠なんて言葉はないのよ」
ルチェの言葉に少しだけ胸が痛む。私も親衛隊と同じような考えをアバンに押し付けていたからだ。
「辛辣ね」
「まあ、あまりいい印象がないからね」
二人のためと言ってトラブルを起こすのは良くない事だ。ルチェが悪感情を持つ気持ちもわかった。
アバンもこの空気がもしかしたら苦手だったのかもしれない。
「そっか」
「それにしてもアバン様と結婚する人はとても苦労するでしょうね」
「同感」
苦笑い混じりにそう話すルチェに、実はそれが私です。とは言えなかった。
隠すことはできないから、いつか自分から伝えないといけないと考えながらアバンに対して少しだけ申し訳なくなっていた。
「なんの話してるの?」
突然、頭上から声をかけられて私は見上げた。
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ルチェ・フル
フ○ーチェです