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完結です!
最後までお付き合いくださりありがとうございました!
『うわぁ!!』
殴った瞬間、メロディは一際大きな悲鳴をあげた。
「やめて!メロディを離して!なぜ、二人を引き裂こうとするの!」
アバンの母が私を止めようと腕を掴んだ。
「知らんがな!」
私がアバンの母を勢いよく振り払うとその場で尻餅をついた。
アバンはよほどメロディが恐ろしいのかカタカタと震えていた。
「高速ヘッド殴り!」
『ぎゃぁあぁあぁ!!』
私が技名を叫びながら頭をひたすら叩き続けると、髪の毛がポロポロと落ちていく。
「毛が!どんどん抜けていくみたいね!さあ、さあ、進化しろ!」
猿は体毛と引き換えに人へと進化した。
メロディもきっと、頭髪と引き換えに人としてさらに進化するはずだ。
私は確信をもってメロディの頭を殴り続けた。
その瞬間、ぐにゃりと空間が歪んだ感触がした。
「っ、なんだこれ!?」
思わず手を引っ込めると、今度はアバンの母が悲鳴をあげた。
私はその光景に思わず目を見開いた。
「ひっ、きゃぁ!」
アバンの母の腕がメロディの顔に吸い込まれているのだ。
「ぶ、ブラックホール……」
「リイスが、光速でメロディの顔を殴ったからきっとブラックホールができたんだ」
「いやぁぁ!」
アバンの母は恐ろしいのか床に水溜りを残して、そのままメロディのブラックホールに吸い込まれてしまった。
「嘘だ」
私は目の前の光景が信じられずにポカンと口を開いた。
『お、あぁヴァアお!!』
メロディがこの世のものとは思えないような雄叫びをあげると、空間の歪みは消えた。
『あ、あぁうぉぉぉぉ!!』
メロディは二日酔いのおっさんのようなうめき声をあげると、その場に座り込んだ。
ボロッと、厚塗りの化粧が剥がれ落ちるように、腕の一部が剥がれ落ちた。
そして、みるみるうちにアーマーのような筋肉が剥がれ落ちていく。
その場に残されたのは、ハゲ散らかしたメロディとアバンの母が残した水たまりだ。
「……漏らしちゃったのね」
私の呟きが虚しく倉庫内に響く。
「漏らしちゃった。漏らしちゃ……イナ……」
その瞬間、あの日の記憶が蘇る。
『結婚してやる!二言はない!』
あの時、酔った勢いでアバンに絡み私はプロポーズしたのだ。
「うわぁあ!」
次に悲鳴をあげたのは私だった。
に、逃げよう。
反射的にそう思い逃げようとするが、それはできなかった。
「逃げちゃヤダ」
アバンが信じられない腕力で私の腕を掴んだからだ。
あ、何こいつ、こんなに強いならオメーがメロディボコせよ。
「ど、ヒィぃい!」
そう思いながらアバンの頬を叩くがびくともしない。
「愛してるよ。リイス」
「だから!呼び捨てにすんなって言ってんだろ!」
反射的にアバンを殴ると奴は吹っ飛んだ。
しかし、全く痛くなさそうな素振りを見せて立ち上がる。
「さあ、行こう」
アバンは、ハゲ散らかしたメロディと水たまりを放置して、私を連れて倉庫から出た。
私は本能的に、コイツに逆らったらダメだと悟る。
塩をふられた青菜のような気分だった。
それからすぐにアバンと私は結婚した。
結婚式にはメロディが参列してくれた。
彼女には毛がちゃんと生えていて「長年の悩みだった癖毛が治って嬉しい」とほざいていた。
アバンの母は、どこにいるのかわからない。
たぶん、実家にいるんだと思う。




