19
「リイス、僕の事はいいから逃げるんだ」
アバンは弱々しく私に逃げるように声をかける。
その様子は本気で私のことを心配しているように見えた。
しかし、私はあることにイラッとしていた。
「アバン……、ちゃっかり呼び捨てにすんじゃねぇよ!」
「ご、ごめんなさい」
突然の呼び捨てに私が怒ると、アバンはプルプルと震えて謝る。
その怯えきった様子にメロディよりも私の方が怖いと思っているのでは、という考えにいたる。
まだ何もしてないし私は怖くないはずだ。
それよりも、サクッとアバンを助けてその流れでしれっと家出しよう。
そんなことを考えているとメロディが、重低音ヴォイスで私に声をかけてきた。
『私がなぜこんな姿になったのか知りたくないの?』
「多少、興味がある」
顔以外原型を留めていないメロディは何故そうなったのか、別に興味はなかったけれど、どうしても言いたそうな雰囲気があったので私はとりあえず聞くことにした。
『宇宙と交信したのよ!そして、肉体改造をしたの、前の身体ではダメだと思ったから』
「なるほど、よくわからん!」
メロディの説明はよくわからなかった。しかし、人間を辞めるほど彼女がアバンの事を愛している事だけは私でもわかった。
『これが、私の真実の愛よ!』
メロディの言葉が、乾燥した毛穴に化粧水が浸透するように私の心にしみわたるのがわかった。
真実の愛。それは、まるで乳酸菌のようだ。
人には人の愛の形がある。
メロディの愛の形は……。
私はグッと手を握り締める。
愛ってなんなのか私にはわからないけれど、だけど、思うのだ。
こんなの間違っている。
アバンの気持ちを無視して自分の思いを押し付ける。それは、愛じゃない。
だけど、愛の力だけは信じたいと思ったのだ。
私はメロディを倒してアバンを救う。
理由はシンプルだ。メロディとアバンの母を絶望させたいから。
人が悲しんだり苦しんだりする顔を見るのが私は大好きだからだ。
「真実の愛!それは、遠近法を克服する!」
私はメロディから教えられた愛の形を叫びながら、彼女の頬を力一杯叩いた。
遠目からアバンの母がまた転ぶ姿が見えた。
「何言ってるの?」
「いや、だって、身体に対して顔の大きさおかしいでしょ。モデル通りこして化け物体型してるし、バランスおかしいし、遠近法おかしいだろ!愛の力か宇宙パワーでもない限りこんな事にならないし!」
『私の真実の愛パワーくらえ!』
メロディは私に向かって頭を振り下ろす。
物理的に頭を使ったようだ。
「アバンは私が助ける!これでもくらえ!」
私はメロディの腕にフリッカージャブを食らわせる。
殴った腕から「ボキボキ」と小気味いい音が聞こえた。
どうやら、筋肉はメロディを裏切らなかったけれど、骨はメロディを裏切ったようだ。
力が抜けたところで私はアバンを救出した。
『ぐ、うわぁあ!!』
メロディは盛大な悲鳴をあげて、へし折られた腕を押さえてその場でのたうち回る。
「メロディ、貴様を進化させてやろう!」
私は構わずメロディの髪の毛を掴み、頭を勢いよく殴った。
「毛が失くなるまで!殴るのをやめない!」
~~~~~
あと二話で終わらせたい




