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私との婚姻でブルーノとメロディの仲は確実に引き裂かれることになる。
私は二人の関係に少なからず憧れていた。
憧れという感情を抜きにしても二人の仲に割って入る事に抵抗と罪悪感がある。
「嫌なのか?」
「嫌もなにも、彼には恋人がいるんですよ!それを引き裂いてまでする。この婚約に何のメリットがあるんですか!彼方は私の家と縁を結ぶ必要性はないはずです」
私にはこの婚姻をするほどのメリットなどないと思っていた。
ブルーノ家は私の家ほどではないにしても裕福だ。
豊かな海沿いの領地と運輸業を営んでいる。
過去に一度あったけれど、それをカバーして上手に立ち回ったのは記憶に新しかった。
「……ブルーノ家は、前に船で事故を起こしているな」
父は過去のことを持ち出してきた。
それは、一年前の事だ。突然の時化で船が転覆した。
保険が降りたのでそこまでの痛手にはならなかったらしいが、それなりに痛手にはなったかもしれない。
「ええ、そうですね。積み荷がダメになって、だけど乗組員は無事だったそうですね」
「借金ではないが少し経営が大変らしい。大きな船を失ったからな。資金援助をしてほしいと頼まれた」
「だったらすればいいじゃないですか。結婚とは関係なしに」
ブルーノ家は誠実で有名だ。資金援助をしたとしてもお金の返済は何があってもきっちりとするように私には思えた。
「資金援助の時に、お前との婚約を持ち出してきた」
「なぜ?ブルーノ家は誠実ですし踏み倒す事はしないでしょう?」
「まあ、強いて言うなら誠実すぎるからお前との婚約が決まったんだ」
「意味がわかりません」
「この婚約でコーラル家も上位貴族との繋がりも持てるしメリットがあるんだ」
「なるほど、そのための政略結婚ですか」
それを言われると確かに私の家にもメリットはあるように思えた。
しかし、二人の仲を引き裂いた。と、上位貴族から白い目で見られることだって十分にあるのだ。
「お断りします!」
私の断りの言葉に父は悪いことを今にも言い出し方な、嫌な笑みを浮かべる。
「無理なのはわかっているだろう。嫌なら白い結婚で戻って来ればいい」
「出戻りすすめてくる親がどこにいるっていうんですか!」
さらっととんでもないことを言い出す父に私は思わず叫んでいた。
先の事は不安しかなかった。
さらに、父は爆弾を落としてきた。
「あ、今から、アバン君がやってくるからそのように」
「はぁあ!?」
やはり淑女にはなれない。そう思いながら大慌てで私は逃げる方法を考え始めた。