17
屋敷に帰るとアバンから手紙が届いていた。
「アバンからの手紙?仕方ないからもらっておく」
アバンからの返事は何と記されているのだろう?
軽くスルーしているのか、それとも禿げ上がるほど悩んで駄洒落を考えたのか。
とりあえず私は手紙に目を通すことにした。
『ハゲ同士が喧嘩をしたが、怪我(毛が)なくてよかった』
と、返事には記されていた。
「なんだこれ!?ぷっ、ふふふふ!」
私は笑い続けた。
「コイツのギャグセンス最高じゃないか!」
今世紀史上最高に私はときめいていた。
きっと、彼は物凄く悩んでこんなダジャレを考えたのだろう。
私の無茶ぶりに悩みながら考えている姿を想像するだけで、今まであった事を全て帳消しにしてもいい気分になっていた。
「この先、あの男が悩んでひりだした。くだらないダジャレを聞くのは楽しいかもしれないわね」
私が冷めた目で見たらアバンはどんな顔をするのだろう。想像するだけで笑える。
「絶交宣言はとりあえずおしまいね」
私はペンを取り出してアバンに「仕方ないから仲直りしてやる」と手紙に書いた。
それから、アバンからの手紙は来なかった。絶交を解除してやった。それなのにだ。
自分から手紙を出したら負けになる気がして、私はアバンが会いに来るまでずっと待っていた。
返事が来なくなって三日後。
学園に行くとルチェがあることを私に教えてくれた。
「アバン様、どうやら学園を休んでいるようなのよね」
「え、そうなの?」
私はアバンが学園に来ていないことすら気が付かずにいた。
気にかけることが負けのような気がして、だから、知らんぷりしていたのだ。
「婚約者なのに、なぜ、気がつかない!?」
オウデンがドン引きした様子で私のことを責める。
「だって、興味ないんだもん」
興味がないといいつつも、アバンがどこに逃げたのだろうと逡巡する。
しかし、思いつかない。
「まさか、家出!?」
「まあ、気持ちはわからなくもない」
オウデンがジト目で私を見ている。
「何ですって!?私のどこが狂犬病なのよ!」
私は叫びながらオウデンの首を絞める。
「そういう所だよ!」
責められても私のどこが悪いのかわからなかった。
「それにしても、アバン様はどこに行ったのかしら」
その質問に答えてくれる人はいない。
けれど、なぜだろう。とても、嫌な予感がした。
それは、まるで何日も続く便秘が解消されたと思ったら、今度は下痢が何日も続き、ただ、腹と尻が痛い。
そんな腸内嵐が起きた時と同じだった。
その予感を的中させるように、屋敷に帰ると私宛に奇妙な手紙が届いていた。
『アバンを返して欲しければ、指定した場所に来い』
と、記されていた。
どうやら、アバンは間抜けなことに誘拐されたようだ。
無関係だと思うし、別にアバンを返して欲しい。とか、そんな気持ちは何一つないけれど。
なぜだろう、アバンを奪ってやった。という、犯人の考え方に私は腹が立っていた。
お気に入りのおもちゃを奪われた子供のような気分だった。
「毛が、生えなくなるまで殴ってやる……」
私は手紙を握りつぶして指定の場所に向かった。




