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飲み食いと詰問と 第七十話



「モグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグ」


「相変わらずの食べっぷりね」


 ある程度料理の数に気を使いつつ、すべての料理をまんべんなくほおばり続ける。お腹が空いていたというのもあるが、一番は用意されていた料理が美味しすぎるというのが原因だろう。

 食べた次からあれもこれもとなってしまい、腕と口が止まることを知らない。


「ふふふ、やっぱり多めに作っておいて正解だったわねテトちゃん」


「えぇ。ただこのペースですとこれでも足りるかどうか……」


 やばい、本当に止まらない。みんなの分を残さなければという考えがなければ、一皿一皿タレの一滴すら残さず平らげてしまいそうなほどに。これは、食後のナツメ特製のケーキにも期待が膨らむというもの。

 ガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツ……ん?


「どうしたの? ナツメ」


「少し、ほんの少しだけ驚きました。この量の食事がいったい体のどこに入っているのか……」


「ナツメは、ココの大食いを見るのは初めて?」


「え、えぇ」


「凄いでしょー? これでもお腹一杯になってくれるかはわからないのよね~」


「私はココさんがお腹いっぱいになったところは見たことありませんね。どうですかココさん? 足りそうですか?」


「モグモグモグモグ、ングッ! だ、大丈夫でふ! 結構満たされたので」


 テトさんの一言でようやく正気に戻ることができ、一度食事の手を止めることにする。

 ふぅ……それにしても美味しかった。いつもなら数口食事を運んだあとに間を置くことでお腹を満たすのに、それすらももったいなく感じるほどだった。次に食事をはじめるのは落ち着きを取り戻した後にしよう。


「ならよかったです」


「あはは……ごめんなさい」


「ちゃんと一日三食食べてる? ココのことだから何食か抜いてそう」


「そ、そんなことはないよ? 満腹になるまで買うとお金がかかるから、パン一つ二つ程度だけど」


「それでも結構お腹満たされませんか……?」


「ココちゃんのお腹は異次元なのよね~。じゃあココちゃんがいったん満足したところで、はいは~い! 私、みんなの近況が聞きたいわ~!」


「なんだかテンション高いですねシルク様」


「こういうパーティーの時にはパーッと盛り上がるべきなのよっ! ではではまずはココちゃん!! ……と言いたいところだけど、嫌な予感がするからキリエちゃんからお願いね~?」


「なんでですかっ!?」


 酷いっ!! 私の名前が挙がったから何を話そうか必死に考えていたのに!!


「いやー、多分ココちゃんは話題に事欠かないだろうな~……って」


「異議なし」


「あはは~……確かに」


「納得です」


「あんまりだぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 なんだよなんだよみなして好き勝手に!! 工業区で不良に絡まれたこととか、大食い勝負で友達が一人増えたとか、生き別れの妹がいたとかいっぱい話すことが!!

 ……うん、全部地雷だった。ちくせう、おとなしく他の人の聞き手に専念しますよ。


「それでそれで、どうなのキリエ最近は? お店のほうは順調?」


「おかげさまでかなり順調よ。二人が制服として宣伝してくれたおかげね」


「デザインと着心地がとても素晴らしいですからね。なるべくしてなったというべきでしょう」


「特にココ達の服と同じ技術で作った服が売れ行きいいわ。傷に強くて破れにくいということで、最近は作業服の依頼が多いかしら」


「確かにこの服、丈夫で着心地良くて作業にはもってこいだよね。いつも助けられてるよ、ありがとうキリエ」


「……もうすでにココの話が平穏に終わることはないと理解したわ」


「あっ」


 聞き手に専念するとは……。始まってすぐ墓穴を掘ってしまいキリエからの冷たい視線が突き刺さる。


「(じとー)」


 やめて、そのジト目をやめてキリエ。


「なるほどね~、順調ならなによりよ。じゃあ次はナツメちゃんね」


「あむっ! ん!? あ、はい!」


 食事中に名前を呼ばれて急いで口の中のものを飲み込み姿勢を正すナツメ。そんなに急がなくてもいくらでも待つのに、ナツメはまじめだなぁ。テトさんと違って器用ではないのがかわいいところよな。


「大丈夫? 落ち着いてからで大丈夫よ?」


「ご、ごめんなさい! んぐんぐっ! っぷはぁ」


「ほらっ、口周りも拭いて」


「すみません、ありがとうございます」


 ナツメとキリエの中も良好、と。私が仲を取り持たなくても仲良くできているようでよかったよかった。ナツメが変わろうと頑張ったのもあるだろうけど、キリエが自分の感情と物事を切り離して接することができる人なのも大きいか。友達同士が仲良くしているのを見ると、嬉しい反面、仲間外れ感があって少し寂しい。


「んんっ、では」


「ナツメちゃんはお花屋さん、だったかしら? よく考えたら私たち全員お店の経営者なのね~」


「私のお店は家族から引き継いだだけですので、一からお店を立てたお二人に比べたら全然……」


「経営は発足よりも維持が大変なのよ。経営できているのなら貴女はすごいわ」


「そうよ~? 私なんてココちゃんとテトちゃんがいなくちゃどうにもならないんだから」


「ど、どうもです」


 これが、経営者同士の会話! 特にお店を経営したり定職についてもいない私にはいささか肩身の狭い会話だぁ。


「それでどうなの? 何か大変なこととかあった?」


「そうですね……いえ、特には。特別お客さんが増減したりはありませんし、常連の方をはじめいつもと変わらない販売を心がけています」


「安定しているのはいいことよ。明日から私たちもお店を開けるけど、頑張ってお客さんに気に入ってもらわなくちゃね! テトちゃん、ココちゃん!」


「そうですね、精進しなければ」


「頑張ります!」


 ナツメの花屋さんはお客さんは増えてないのか。彼女の対応はとても丁寧で分かりやすかったし、花屋という需要が安定しないお店であることを考えてももう少し増えてもいいと思うんだけど。お店の経営のことはよくわからないけど、店主の人柄がいいだけでは商売として伸びないということだろうか? 難しい。


「んーと、次は私かな? といっても図書館が営業再開しますぐらいしか言うことはないし、テトちゃんはなにかある?」


「そうですね、私も特にありません」


「そう。じゃあ皆さんお待ちかねのココちゃんのお話にいきましょうか!」


「あ、一応私にも回してくれるんですね」


 シルクさんとテトさんの番が残っていると楽観的に考えていたところに、突然飛んで私に話を振られてしまう。

 えーどうしよう、どの話も場の雰囲気を凍り付かせる話題にしかならないのだが……


「ココ、話す前にいくつか確認したいのだけれど」


「ん? なに?」


「あなたが話そうとしている内容は、一つ?」


「えっ、あー……二つ以上?」


「その話、私たちが聞いても大丈夫なお話?」


「(タラタラ……)」


 うっ……キリエ鋭い。私のこと限定ならエリといい勝負するんじゃなかろうか。どう言い訳しよう、何を話そう。などと考えてキリエから視線をずらし無言を貫く私。

 ただ黙ったままなら当然キリエも私の事情をある程度把握できるわけで、はぁ~っと深いため息の後に口を開く。


「ナツメ、シルク、テトラ、覚悟を決めなさい。これ予想以上に重たい話よ」


「「「知ってた」」」


「満場一致なの!?」


「あの優しいシルクが最後に持ってきただけである程度笑いでは終わらないことくらい察してるわ」


「キリエ、最近私に遠慮なくなってきたよね? むー! もういいもん、遠慮なく一番重い話をしてやる!」


「だ、大丈夫ですよ! キリエさんが話しているのはおそらく私のことでしょうし、あの事件以上のことなんてそんなに多くは ――――」



「この国の王女様と友達になりたいんだけど、どうしたらいいと思う?」



「グハッ!!」


「ナツメーーーー!!」

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