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昼食と終わり 第二十二話



「もうこんな時間ですか。ココさん、お昼休憩に入ってください」


「わかりました! テトさんはまだここに?」


「えぇ。誰か一人は残らないとお客様がお困りになるので、私のことはお気になさらず」


「了解です!」


 昼休憩に入ってもいいとテトさんから許可が降りた。私は残った仕事を片付けた後で三階に戻り、キッチンのある部屋に入る。


「自由に使っていい……とはいうものの、何にしようか」


 野菜、肉、パンその他諸々。食べるものには困らない分の食材が保管庫の中に入っていた。


「テトさんのためにも、早めに仕事に戻った方がいいだろうし。……うん、サンドイッチにしよう!」


 ついでに、お仕事を頑張っているテトさんとシルクさんの分も作っていこう。片手で食べられるサンドイッチなら、それほど邪魔にならずに受け取ってもらえるはず。


「あっ、そういえば好き嫌いとか聞いてなかった」


 食材がこうしてあるってことは、多分体質的にダメなものはないはず。でも食べられるのと好き嫌いは別の問題なのだ。

 私は野菜メインで仕上げていたサンドイッチに付け加えて、お肉と卵のサンドイッチを追加で作りそれぞれ三つずつに分けた。

 最後にカップをお借りして、コーヒーを入れる。味は当たり障りのない砂糖一つにミルクを少々。


「完成っ♪ 先にテトさんに持っていって、シルクさんの部屋はその時に聞こうっと」


 自分の昼食を手早く済ませ、お腹を落ち着かせる。その後にサンドイッチの皿とカップを盆に乗せ、私は一階のテトさんのもとへ向かった。

 お昼時になりご飯を食べにいっているのか、お客様の数はやや少なめ。受付で貸し出しをしているようにも見えないので、そのまま彼女の側に向かう。


「テトさん、お疲れ様です。コーヒーとサンドイッチを作ったので、よかったらどうぞ」


「これは……わざわざすいません」


「中身はそれぞれ違うので、もし苦手なものがあったら教えてください。それとコーヒーの好みも」


「食べ物の好き嫌いはないので、問題ありません。コーヒーもこれで大丈夫ですよ、ありがとうございます」


「よかったです! あ、それとテトさん。シルクさんの分も一緒に作ったのですが」


「そちらは私がお届けしましょう。料理はキッチンの方に?」


「はい! 作り置きしてます」


「わかりました」


 昼食に関する報告が済み、テトさんはゆっくりと私の作ったサンドイッチに手をつける。威圧する意図はこれっぽっちもないけれど、自分の料理が口にあったかどうか、凄く気になる。

 果たして、テトさんの感想は……


「! 美味しい」


 よしっ! 思わず彼女には見えない位置で拳を握る。味の感想からくる"美味しい"というよりは、つい溢れてしまったような"美味しい"に、私の料理が成功したことを確信する。


「テトさんのお口にあってよかったです」


「私も驚いています。それぞれのサンドイッチの味もさることながら、コーヒーの温度も飲みやすい温度に調節されてます。一体、この腕をどこで?」


「いろんな国で、お金のためにいろんな仕事をしてましたから。料理関係のスキルは、その時に身につけたものです」


「なるほど、いろんな国を。ならばこの腕前にも納得です」


「よかったぁ。テトさんに満足していただけて嬉しいです!」


「……っ」


 テトさんが完食してくれたことが嬉しくて、私は満面の笑みをテトさんに向ける。

 すると彼女は、突然私の顔に向けていた目線を素早く外した。


「? テトさん?」


「い、いえ。なんでもありません。ところで、貴女の分はどちらに?」


「私はもう済ませました。今は空いた食器の回収とお仕事の交代のために待機中です」


「なるほど。しかし休憩時間はまだ終わってませんが?」


「お仕事が楽しいので大丈夫です。あ、それと午前中の間に新本はすべて並べ終わりました」


「そ、そうですか」


「本の確認は、今のところページが一部破れているものが二つほどです」


「えっ、早」


 午前中の仕事内容をテトさんに報告すると、彼女は信じられないものを見る目でこちらを見ていた。

 もしや、嘘をついていないか心配されたのだろうか?


「あの、嘘ではないですよ? 不安なら、後で確認してもらえれば」


「あ……こほん、失礼しました。疑っているわけではないのです。では、ココさんは受付をお願いしますね。使った食器はこのまま持っていきますので」


「わかりました」


 盆を持ち階段を上がる彼女を見送って、私は代わりに受付に立つ。

 そこから私は、午後の仕事を着々とこなしていった。テトさんが戻ってくるまでの間は受付をこなし、場所が変われば今度は本の確認と場所の案内をする。暇な時に埃を取り除きつつ。


 三階から降りてきたテトさんが真っ先に私が担当した棚に行ってるのを見て、やっぱり不安だったのか……と思ったのはここだけの秘密。


 そんなこんなで、あっという間に一日が過ぎていき外は空は赤くなっている。


「ありがとうございましたー」


「では、店終いをしましょう。ココさん、看板を立て掛けてもらえますか?」


「はい!」


 綺麗に書かれた"本日の営業は終了しました"の文字と、隅に何やら可愛らしいキャラクターの絵。

 十中八九、テトさんの書いた文字に横からシルクさんが付け足したのだろう。わちゃわちゃしている所が目に浮かぶ。


「お疲れ様でした。どうです? 初日を終えての感想は」


「楽しかったです! テトさんも色々教えてくださってありがとうございます」


「私は、本音を言えば予想外でした。初日にしてここまで完璧に近い仕事ができるとは」


「ふふっ。テトさん、私の仕事場の確認してましたもんね?」


「すいません、細事を気にしてしまう性格なもので。では、使用されたテーブルと椅子の拭きあげと館内の清掃を済ませて、終わりにしましょう」


「はい!」


 布で汚れを拭き取り、溜まった埃をはたき落とす。お客様を相手にするより、こっちの方が何倍も大変だったように思う。これを毎日一人でこなしてたテトさんは、控えめに言って超人だった。


「お、終わったぁ」


「大丈夫ですかココさん、ぐったりしてますけど」


「最後の最後に、こんな伏兵が潜んでいたなんて。……テトさん、なんでそんなにこやかなんですか」


「ふふっ、ごめんなさい。先輩として、プライドを守れたことが嬉しくて」


「テトさんが悪い顔してるぅ〜……」


 綺麗になったテーブルに突っ伏している私の隣で、悪い笑みを浮かべるテトさんにいじられる。仕事が終わってプライベートになったテトさんは、親しくなったこともありシルクさんみたいになってしまった。


「ココちゃぁぁぁん!」


 そんな叫び声と同時に、背中に感じるプリンとした感触。噂をすれば、


「シルクさん?」


「初めてのお仕事はどうだった!? 大変だった!? 怪我はない!? テトちゃんにいじめられたりしてない!? あいてッ!」


「失礼なことをココさんに教えないでください。私はココさんの先輩なのです」


「うぅ、テトちゃんが叩いたぁ」


 頭を押さえて蹲るシルクさんと、右手を手刀のように構えるテトさん。

 よーくみると、シルクさんの服の一部が破れている。結構容赦なくいったんだ。


 ……あれ。でもシルクさんの服、少しずつ直って……?


「うぅっ。それで、どう? ココちゃん、やっていけそう?」


「まだ初日ですし、なんとも。ただ、とても楽しかったです!」


「大丈夫ですよ。彼女の仕事ぶりは完璧でしたし、私と比べても遜色ないほどかと」


「なるほど〜? それでテトちゃんはココちゃんに嫉妬してるんだぁ〜?♪」


\スパンッ!!/


「いったぁぁぁぁい!」


 また、シルクさんは痛みに叫んだ

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