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エイリアンズ

作者: yoichi

最近日課になってる夜のドライブ


この男に俺のハンドルを任せて走るのもだんだん飽きてきた


いつも一人で、陰気な音楽かけて、だらだらと街を流してる


俺はそういう車じゃないんだがなぁ


気が進まないドライブだけど、今夜はいつもと様子が違う


珍しく助手席に人が乗ってる


それも女だ


よく乗ってくれたもんだ


「タバコ、吸っていい?」


「うん、全然吸っていいよ」


おいおい、禁煙車じゃなかったのか?


いい女には寛容なんだな


しかし、無理めな女だ


香水とタバコの匂いが良くも悪くも似合ってる


お前みたいなガキがどうにかできる女じゃないぜ?


「珍しい車ね。こんな感じの車が好きなの?」


「まあね。古い車だけど、なんか雰囲気あるでしょ?」


「確かに古そう。カーナビ付いてないし」


「カーナビは付けてないなぁ、……ごめんね」


なんで謝るんだ?


カーナビなんて無粋な物、こっちから願い下げだ


……まあ、俺の良さがこんな女にわかる訳ないか


今はオープンカー流行らないみたいだし


チヤホヤされたのは、はるか昔か


「知ってる? 昔の映画で『卒業』ってのがあってさ、主人公がこれに乗ってたんだよ」


「……ふ〜ん、そうなんだ。あたし映画見ないからよくわからないけど」


「そっか。……ハハ」


ハハ、じゃないだろ


この手の女には、うんちく語ったところでたいした効果はない


だめだな、これは


………


ん?


こっち方面はホテル密集地帯だぞ?


なんだよ、やる時はやるなぁ


これが本来の俺の役割だよ


「この時間だときっと空いてるかな」


「早く着きそう?」


「たぶん」


そうそう、きっと空いてるよ


でも焦りは禁物だぜ


って、あれ?


結局ホテル街を通り過ぎて高速に上がるのか……


確かにこの時間の高速は空いてるだろうよ


こいつは一生、足として扱われるんだろうなぁ


実際に走るのは俺だけど


いっそのこと、エンストかましてストライキしてやろうか


「霧が濃くなってきた。少しスピード落とさないと……」


「あ、ちょっと停めて!」


「え? 今、高速の上だよ?」


「早く!」


なんなんだこの女は


それに本当に停まるか?


こんな視界悪い時に高速の路肩に停まって、どうなっても知らんぞ!


「ほら見て! あれ」


「ああ、今日は満月だったね。雲から出てきたんだ」


「不思議な色〜。でもなんかきれいね」


月だったら停まらんでも見れただろうに……


うわ! 外に出やがった


人間、アルコール入ると性能が落ちるって本当なんだな


「ひんやりして気持ちいい〜!」


「やっぱり危ないよ。車の中に戻ろう」


「……ねえ、なんかここ地球じゃないような感じしない?」


「え?」


「どこか知らない星に二人だけで降りたみたい」


唐突だなぁ


でもまあ、確かにそんな感じがしないでもない


深夜の高速道路は、ただただ無機質でひどく静かだ


周りはいつのまにか濃い霧につつまれて、俺のライトとハザードを反射させている


少し目線を上げると、オレンジ色の月がぼんやりと浮かんでいる


言われてみれば、まるで異世界に紛れ込んだようだ


面白いこと考え付くなぁ、この女


「そうすると、この車は宇宙船ってわけだ」


「アハハ。丸いライトのかわいい宇宙船ね」


「結構かわいいでしょ? 幌を降ろすともっとかっこよくなるんだけど……」


「ほんとだ! でもかっこいいっていうか、なんかエッチっぽいね」


「ハハ。こいつにしてみればきっとほめ言葉だよ。」


エッチではなくてスタイリッシュと言ってほしい


でも悪い気はしないな


いつのまにか良い雰囲気になってるのは俺のおかげか?


「寒くない?」


「ちょっとね。でももう少しだけこうしてたいな」


「俺のジャケットぐらいしかないけど、これで我慢してね」


「ありがとう」


いつもは全然さえないのに、今夜は気が利いてるな


この二人、案外お似合いなのかもしれない


「霧が晴れるまでここにいようか。きっと誰も通らないと思うし」


「うん。ずっとこのままでもいいかなぁ」


ボンネットに二人、肩を寄せ合って座ってる


さっき知り合ったはずの二人なのに、恋人同士に見えてくるから不思議だ


お尻を温めなきゃいけないからエンストできなくなったな


まったく世話が焼けるよ


(……ガチャ)


小さな音がした


オートリバースの音だ


カセットテープは何周しただろう


陰気だと思っていたこの音楽も、こうして聴いてるとやけに沁みるじゃないか


「ねえ、これってなんていう曲?」


「そういえば今の雰囲気にぴったりだ。この曲はね………」


霧はまだまだ晴れそうにないか……


不思議な夜を、この不釣合いな二人と過ごすのも悪くないな



ずいぶん前に書いたショートショートです。タイトルの「エイリアンズ」は、好きなアーティストのキリンジの同タイトルを使わせていただきました。内容も、微妙になぞらえてます。エイリアンズで検索すれば、youtubeでPVが見れますから、是非本家の楽曲と照らし合わせてみてください。

最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。

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