2
美鷹と七海の二人が夏休みだというのに、白鳩高校にやってきた理由は部活動のためだった。
二人は白鳩高校の陸上部に所属している生徒だった。
美鷹は短距離の100メートルの、七海は高校陸上の競技としては最長になる、長距離の3000メートルの選手だった。
その陸上部の練習のために、高校までやってきたのだった。
校舎の周辺には人は誰もいなかったのだけど、校庭まで行くと、そこには十数人の生徒の姿が見えた。
そのほとんどは、美鷹と七海の知っている陸上部の部員たちの姿だった。
……でも、中には知らない顔も混ざっていた。
あれは、見学にきている他校の生徒の姿だろうか?
それから、学校の関係者ではないと思われる、スーツ姿のカメラを持った、数人の大人たちの姿があった。
それはどうやら週刊陸上の雑誌の取材の記者のようだった。
「あ、きたぞ。清宮選手。あのすみません。練習前に少し話を聞かせてください」
そう言って、そのカメラを持った、スーツの大人の人たちが七海のところにやってきた。
「はい。わかりました。じゃあ、少しだけ……」
と慣れた感じで、七海はその取材に対応する。
それから七海は、美鷹を見て、ごめんね、と口だけを動かして、両手を合わせて、美鷹に謝った。
美鷹は、別にいいよ、とやっぱり口だけを動かして、それから指をみんなの集まっているところに向けてから、先に行くね、と七海に言った。
わかった。と七海は声に出さずにそう言った。